取材・文 佐々木 千恵美  



味覚が一番発達する小学3年生を主な対象にしたフランス発祥の「味覚の一週間」®。9年目を迎えた2019年の開催期間は10月15日(火)〜21日(月)。全国約260校600クラスで、320名の講師によって、基本の5味(甘・酸・苦・塩・うまみ)と、五感を使って味わうことの楽しさを教える「味覚の授業」®が行われました。

今回見学させていただいたのは千代田区立富士見小学校。飯田橋駅や九段下駅から徒歩数分のところに位置する歴史ある公立の学校です。教壇に立ったのはパティシエ・シマの島田進オーナーシェフ。同じ千代田区にお店を構えていることもあり、ここ数年毎年授業をされているそうです。

富士見小学校の3年生は2クラス。廊下との壁のないオープンな雰囲気の教室で、一クラスずつ時間を分けて同じ内容を行いました。

「ボンジュール。コマンタレヴ?」 (こんにちは。お元気ですか?)
島田シェフのフランス語の挨拶で授業ははじまりました。

「私の仕事はパティシエ。お菓子を作る人のことをいいます。いろんな材料を使ってお菓子を作ります。その材料を使ってみなさんに授業をします。」

自己紹介はイラストも交えて。麹町にあるパティシエ・シマの島田進オーナーシェフが講師。


自己紹介の後、島田シェフはお菓子を楽しむために必要な五感について、塩、酢、チョコレート、砂糖、クッキーの5つを児童たちと試食しながら会話するようにレクチャーをすすめていきました。

「塩っぱいのは何があるかな?」 児童の声:「せんべい」「ポテチ」「塩あめ」「コンビニのおにぎり」「胡椒」「レモン」…。
「えっ、胡椒は塩味じゃないよね。レモンは塩っぱいじゃないよね。」

実際に塩を舐めてもらいながら塩がどんな風にできるかを問いかけました。
「海の塩水から作られることが多いけれど、大昔海だったアルプスの山でとれる岩塩もある。みんなが舐めたお塩はブルターニュの海の塩だけれど、日本でも海塩は作られていてそれぞれ味が違う。塩はお菓子にも使います。美味しくなるからね。お醤油も塩味だね。」

塩もいろいろな場所で取れ、それぞれ味が違う。実物を見せて説明する島田シェフ。


二つ目は「酸っぱい」。
児童の声:「レモン」「梅干し」「お酢」「酢飯」「カボス」「梅」「海の水」…。
今度は塩っぱいと取り違えたものもありました。言葉を逆に覚えてしまっているのかな。
お酢を舐めた児童たちはあまりの刺激に目をくしゃくしゃにして大盛り上がり。
「お酢は米、フルーツ、りんごからも出来るよ。みんなが大好きなお寿司にもお酢が使われているよ。」
島田シェフがやさしく話すそばで、身体にはいいじゃんと大人びた発言も飛び出しました。

試食用の5味は基本の塩、米酢、チョコレート、砂糖。そしてうま味は別皿に。

次は「苦い」です。
児童の声:「チョコ」「青汁」「ワサビ」「コーヒー」「野菜ジュース」…。
試食にチョコレートが出たとたんに盛り上がる児童たち。中には変わった意見も出たけれど、そう感じる要素はあるのかもしれません。
「チョコは苦いってわかった? チョコレートって何からできているの?」
「カカオ!!」
島田シェフの問いかけに多くの子供たちが元気に答えたのにはびっくり。
乾燥したカカオポッドを見せ、中の豆をすり潰すとできると説明すると「お砂糖入れるんでしょ?」と返す子もいました。


乾燥したカカオポッドを見せると、それ本物?と尋ねる子供が何人もいた。子供たちはカカオへの関心が強い!?

チョコレートはお菓子屋さんにとっては大切な素材。白いチョコレートもあるしミルクチョコレートもある。今日食べてもらったチョコレートはお砂糖入りだけど苦いチョコレートです。

その後「甘い」お砂糖についてお話しているときです。
「沢山食べると糖尿病になっちゃう」と一人の子供が発言。きっと家族とそんな会話をしているのでしょうね。
シェフは「その通り。でも少し食べると頭がよくなるよ。」と別の効果を伝えました。

そして大事な5つ目。
「身体にいいものを少しずつとるといいことがあります。次は「うま味」のことを教えるよ。うま味って何だと思う?」
児童の声:「出汁」「うま味成分」「うまい棒」「味噌」…。


「ではみなさんにうま味のご褒美をあげます。」
そう言って配られたのはパティシエ・シマのチョコレートとヴァニラのクッキー2種類。 中身を覆っていた紙ナプキンをとると子供たちは大興奮。でもみんな教わったばかりの5味を感じるため真剣に味わっています。


ご褒美は島田シェフのお店「パティシエ・シマ」のチョコレートとヴァニラのクッキー2種類。

うま味を感じながら真剣に味わった。


「みんなおいしかったかな。塩も使っているしカカオも砂糖も。いろんなものを混ぜているからうま味が感じられるのです。おうちに帰ってトック(帽子)を被ってお父さんお母さんに今日習ったことを教えてあげてくださいね。」
思い思いの感想、ひらめきを口にしながら、楽しい授業時間を過ごした子供たち。最後に島田シェフにあいさつをして終了です。
「ありがとうございました。」


「味覚の一週間」®の味覚の授業を受けた子供たちが被るトック(帽子)。


今回同じ内容を続けて2クラス見学して驚いたことがあります。メディアの影響やお家の方の嗜好や健康ブームで、カカオにとても詳しい子供が多数いたこと。もう一つのクラスではカカオ分のパーセントをシェフに質問する子たちがいました。家庭での食と会話はこんなにも影響力があるのだなと実感。子供たちの感受性の豊かさに刺激を受け、私達大人ももっと五感を研ぎ澄まさなければと考えさせられた一日でした。ありがとうございました。


「味覚の一週間」®の公式サイト
 http://www.legout.jp/



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