取材・文 佐々木 千恵美  



フランス発祥の味覚教育、「味覚の一週間」® が今年も10月2日(月)〜12月29日(金)の間、日本全国で開催されます。

それに先立ち、8月31日(木)、服部栄養専門学校にて行われた記者発表会の様子をお伝えします。

記者発表会にて。お話されている「味覚の一週間」® 実行委員会(実行委員長:瀬古 篤子氏)と、「味覚の一週間」® 呼びかけ人。左から柳原 尚之氏(江戸懐石 近茶流宗家 「柳原料理教室」主宰)、藤野 真紀子氏(料理研究家)、三國 清三氏(「オテル・ドゥ・ミクニ」オーナーシェフ)、服部 幸應氏(学校法人服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長、医学博士)、磯村 尚徳氏(日仏メディア交流協会会長、パリ日本文化会館初代館長、元NHK報道局長)は事情により欠席。


1990 年にフランスで始まった「味覚の一週間」® は、味覚体験を通して子どもたちに食べる大切さに気づいてもらう食育運動で、日本では2011年にスタートし、今年で13回目を迎えます。

新型コロナウイルス禍の制限があった期間も、学校関係者やボランティア講師の方々の熱意と努力によって活動が続けられており、昨年2022年度にはコロナ前に迫る参加校数となったそうです。その数は210校 490クラス 12,257名。2011年から延べ118,372名の児童が「味覚の授業」® を受けました。

パナデリアでも、2019年までいくつか「味覚の授業」® を取材させていただいていますが、料理人や菓子職人からのお話に、子供たちが生き生きとした感性で受け答えする姿がとても微笑ましいものでした

過去の記事

 https://www.panaderia.co.jp/event_report/mikaku-2020shimada/index.html
 https://www.panaderia.co.jp/event_report/mikaku-2018guy/index.html
 https://www.panaderia.co.jp/event_report/mikaku-2018catherine/index.html
 https://www.panaderia.co.jp/event_report/mikaku1week2015/index.html


困難を乗り越えて見えてきたのは、この成果をこれからさらに未来へとつなぐステージへと来た事。それが2023年度のテーマを「子どもの食の未来」とした理由だそうです。子どもたちの食の行方を見据えて、参加した人が近い将来の食を考えるきっかけとなるよう、ボランティア講師は、このテーマを頭に描きながら「味覚の授業」® をすすめていきます。


フランスは4味を教えるが日本は5味。参加校をもっと増やしたいと服部氏。


AIが味を作るなど世の中13年前とすごく変化したが、作った人の心がわかるように五感をフルに使うことが大事と語る藤野氏。


プロが教えることが大事なので、教えられるプロも増やしていかなければと柳原氏。


今年度の参加校、講師などの募集は締め切られましたが、大人も加えた幅広い年齢層に向けた食の体験プログラムについて、例えば「味覚のアトリエ」では、東京大学駒場友の会主催、フランス農事功労章協会(MONAJ)協力によるアトリエが、2023年11月2日に行われます。
今回のテーマは「チーズを知ってみよう 味わってみよう」で、ルヴェソンヴェール駒場を会場に、本間 るみ子氏(チーズプロフェッショナル協会名誉会長)と伊藤 文彰氏(ルヴェソンヴェール オーナーシェフ)を講師に迎え、欧州を中心としたチーズを取り上げながら、その特徴や成り立ちを学び、学生でも自炊できるチーズを使った料理のデモンストレーションと、その料理を含めたコースを味わいます。

また、日本サステイナブル・レストラン協会とのコラボレーションとして、食の未来を考える同協会のメンバーレストランを会場に、5味が織り込まれた一品を紹介する「味覚の食卓」を計画中とのこと。これは大人にとっても興味深いですね。
日本サステイナブル・レストラン協会 https://foodmadegood.jp/


この他、「味覚の授業」® @エスコンフィールド HOKKAIDO(仮称)と題し、今年オープンした新球場エスコンフィールド HOKKAIDO(北海道・北広島市)内のタワー・イレブン フードホール バイ ニッポンハムに近隣小学校の児童を招き、北海道出身の三國 清三シェフによる特別「味覚の授業」® が開催される予定です。(2023年12月予定)。

最近ではユーチューバーとしても知られる三國シェフのリアルなレッスンが話題の会場を舞台に、児童たちにどんな化学反応を起こすのでしょうか。
エスコンフィールド HOKKAIDO  www.hkdballpark.com

2014年度「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國 清三シェフによる「味覚の授業」® レポート。
 https://www.panaderia.co.jp/event_report/mikaku-mikuni2014/index.html


「味覚の一週間」® 呼びかけ人のひとりである三國シェフは、日本の「味覚の一週間」® 実行委員会が発足する前、すでにフランスでは活動が始まっていた2000年から、ギイ・マルタン氏、ジョルジュ・ブラン氏といったフランスのスターシェフと一緒に日本で味覚の授業の活動をしていたため、今では当時の子供たちが料理人を目指して門を叩くようにまでなった、だから継続してやっていくことが大事だと語ります。


20年以上継続して味覚を教える活動をしてきた三國氏。


その「オテル・ドゥ・ミクニ」で2000年からパティシエとしてのキャリアをスタートさせ、国内外の数々のコンクールで輝かしい実績を重ね、現在は名古屋のパティスリー カルチェ・ラタンのオーナーシェフである冨田 大介氏は、火を消さないよう、つなげたい思いを込め、母校で「味覚の授業」® をされているそうです。冨田シェフの教え子も、何年後かに授業を継いでいってほしいですね。


ゲスト登壇者の冨田氏。2024年にはクープ・デュ・モンドの日本代表監督に選任され、世界の頂点を目指すチームを率いる。三國シェフの元で最初に任されたのは配達の仕事だったそう。


さらに、著名シェフが地方を訪ねる企画として、ドミニク・コルビシェフ(フレンチ割烹ドミニク・コルビ)が徳島県を訪れ、地元の食材も取り入れた「味覚の授業」® 授業を行う予定です。こちらは双方が刺激を受けることでしょう。


ゲスト登壇者の上田 まり子氏(株式会社 Food Marico 代表取締役社長)
調理師免許を取得後、保育園でアレルギー対応食を担当。それぞれに食物アレルギーを持つ3児の母である上田氏は、楽しんで食べることの価値を子どもに伝えるために2017年に起業し、アレルギーに対応する食品の製造販売やコンサルティングなどを手がける。2022年よりホテルグランヴィア広島で開催しているアレルギーフリーのビュッフェは毎回大好評。みな同じものを食べられる成功体験をしてほしいと島根県の参加校を増やしている。
https://foodmarico.com


ゲスト登壇者の境 智子氏(エコール・ヴァローナ 東京 シェフ・パティシエール)は、年間最大500名のグルメクラス、セミ・プロフェッショナル向けの講習会を担当し、ヴァローナの技術ノウハウの伝播に努める。
チョコレートは「甘い」「苦い」で終わってしまうので、もっと掘り下げてチョコレートがもつフレーバーを感じ取れるようにする機会を作りたいと語る。


東京ガス株式会社から 清田 修氏は、子供からシニアまで多様な層に向けたエコクッキングやSDGs提案など、日々のくらしに役立てる料理教室の活動で「味覚の一週間」® に携わっていると語る。



最後に新組織「特定非営利活動法人 子どものための味覚の伝承」の設立について発表がありました。

2011年の開始時より、延べ10万人以上の受講児童を数えて全国に定着した「味覚の授業」® は、さらに幅を広げて、未来の食や子供たちの暮らしのために価値のある活動を継続していくために、2023年8月15日付けで、「特定非営利活動法人 子どものための味覚の伝承」を発足、「味覚の一週間」® 実行委員会を含めて活動を続けます。
小学校の教室だけでなく、フィールドを広げ、「味」や「食育」を取り巻く様々な事情から、未来につながることを拾い上げ、ワークショップ、教育・セミナー、情報伝播(DX)などを通して行動していくとのこと。

フランス発の試みが日本に定着し、地域に根付き、多様化する世の中にあわせた活動ができる場になりますよう、これからも応援していきたいですね。

貴重なお話をありがとうございました。



2023年度「味覚の一週間」®
開催日程:2023年10月2日(月)〜12月29日(金)
フランスの開催は 2023年10月16日(月)〜10月22日(日)
開催場所:全国
主催: 「味覚の一週間」® 実行委員会
後援:農林水産省、文部科学省、厚生労働省、在日フランス大使館
三省は「味覚の授業」® に対する後援
協賛: 東京ガス株式会社
「味覚の一週間」®  HP https://legout.jp/




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