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10月23日、都内四谷小学校の5年生を対象に「味覚の授業」が開催されました。講師は「オテル・ド・ミクニ」の三國清三シェフと料理研究家の内坂芳美さん。
三國シェフはKIDS-シェフを、内坂さんは「日本味覚教育協会」を発足させるなど、日本の「味覚の一週間」が始まる以前から独自に味覚食育活動をされているベテラン講師。そんなお二人の息のあった授業に子供たちの眼差しは真剣、いっぱい刺激を受けたようでした。

内坂芳美さん(左)と三國清三シェフ(右)。ゆっくりわかりやすい言葉で授業は進められる


「好きなものだけ食べている子はいないね?」三國シェフの迫力ある声で授業は始まりました。

まず「4つの味覚にはどんなものがありますか?」
という質問にたくさんの手が挙がります。
「あまい」
「しょっぱい」
「すっぱい」
「からい!」
ぴりっと辛いという発言があったところで、内坂さんが説明をしました。
「辛いというのは味ではなくて刺激、舌がぴりぴりする感覚なのですよ」

「どんな味がありますか?」


苦味を含め、すべてが出たところで、それぞれの味覚にどんな例があるか、「塩」「酢」「チョコレート」「砂糖」の順に味体験をしました。
まずは、日本の海の塩を舐めて、しょっぱいを確認。
「酸っぱいには何がありますか?」
「レモン」「梅干し」「かぼす」「ピクルス」「酢飯」・・・etc.
子供たちからたくさんの例が挙げられたところで、酢飯にも使う日本のお米から作った米酢のテイスティング。嗅いで味を見て、酢の刺激に隣同士、顔を見合わせ苦笑い。

テイスティングの後、隣同士で顔を見合わせ、反応を確かめ合う子供たち


「酸味には、食べ物を腐りにくくしたり、食欲が出たり、疲れが取れたりする働きがあります」
ジェスチャーを交えてゆっくりやさしく語りかける内坂さんの授業は、子供たちだけでなく、大人にもすっと入ってきます。
次は苦味。子供たちからは、コーヒー、ゴーヤ、抹茶、ピーマンなどが挙げられた後、テイスティング用にはビターチョコレートが配られました。そのとたん子供たちからは歓声が!
「今までは粉状だったり液体でしたが、チョコレートは固体だから噛んで食べますね。噛んだときにする音も聞いて感じてくださいね」
しかし大好きなはずのチョコレートなのに、いつもの甘いミルクチョコとは違ってかなり苦く感じたのか、口をへの字にする子がいたり、ざわめきも・・・。
「チョコレートは昔、お薬だったのですよ。苦味は毒を察知する働きもあるのです」
「三國シェフは北海道育ちなので、魚の内臓や焦げ目で苦味を知ったのですよ」
チョコレートと毒と苦味、魚の内臓、想像力を働かせる授業はどんどん盛り上がります。
さあ、4つの味覚レクチャーが終わったところで、三國シェフからフランス料理のご褒美プレートが配られました。


手前右が「たまねぎのタルト」(塩味)、左は「レモンのタルト」(酸味、甘味、苦味)、奥が「チョコレートのタルト」(苦味、甘味)。味覚が二つ、三つと合わさることで美味しさが生まれる

オテル・ド・ミクニ特製、直径3cmほどの3種類のタルトには、「しょっぱい」「すぱっぱい」「にがい」「あまい」が含まれています。
「さあ、何が入っているかわかるか当ててください」
シェフの声に元気よくたくさんの手があがります。まずは黄色く平たいタルトは?
「シチュー」「コーン」・・・
予想していなかった答えに「えっ、味覚、大丈夫か?」とシェフ。
でも最後は正解の「たまねぎ」が出て一安心。
黄色いタルトは「酸っぱい」「甘い」「苦い」を含むレモンのタルト。
最後はチョコレートのタルト。
「食べる前に良く見てください。半分にココアパウダーがまぶしてあり、上にちょこんと細かい飾りがしてあります。台は丸いけれどチョコレートは四角ですね。職人さんが、ひとつひとつ考えながら、目でも楽しませる工夫がされています。食べ物はすぐ口に入れて飲み込むのではなく、見て感じて楽しんで、作った人に感謝する気持ちを大切にしてくださいね」
チョコレートのタルトは小学生には大人の味だったようですが、内坂さんの言葉を素直に受け、じっくりタルトを味わう子供たちが印象的でした。

小さなチョコレートのタルトをじっくり味わって

体全体で子供たちに語る三國シェフ


「お店はすぐそばだからいつでも来ていいよ。皿洗いやるか?」
冗談を言って笑いをとる三國シェフ。こんなにすごいシェフのお店が家の近くにあると知っただけでもうれしいですよね。

ゆたかなこころはゆたかな味覚から・・・
「いろいろなものを食べて、心も身体も大きくなってくださいね」
わずか45分の授業でしたが終わった後の子供たちは溌剌としていました。きっとお家に帰ってご家族にこの日のことをたくさんお話ししたことと思います。家庭に味覚の授業が伝わり続くこと、これこそ願ってやまないことなのですから。


味覚の一週間 公式サイト
http://www.legout.jp/




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