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フランスで毎年10月の第3週に開催されている味覚教育イベント「味覚の一週間」。始まりは1990年10月15日に、フランスの料理評論家、ジャン=リュック・プティルノー氏とパリのシェフたちが開催した「味覚の一日」というイベントからでした。食を文化として子供たちに伝えていくというこのイベントは、大事な食育イベントとして定着し、今では20年以上も続く国を挙げての「食育」行事へと成長しました。
そんな食育イベントを日本でも継承し、2011年、日本における「味覚の一週間」が本格的にスタートしました。そして、今年は3回目を迎えることとなりました。

「味覚の一週間」は大きな3本柱から成り立っています。

ひとつめは、
食のプロフェッショナルから、味の基本と味わうことの大切さを学ぶ「味覚の授業」。
これは、全国の小学校へシェフやパティシエ、生産者が出かけていき、子供たちに味の基本や五感を使って食べる大切さを教えていくというもの。
「塩味」「酸味」「苦味」「甘味」そして、日本ならではの「うまみ」の、味の基本となる5味。これを、味蕾が発達段階にある小学校3,4年生を対象に教えていきます。
この段階で正しい味覚を植え付けていくことで、その子たちのこれから先の人生は、きっと実り豊かなものになっていくことでしょう。

そして、
家族や友人とコミュニケーションを通じて、味わう楽しさを見つける「味覚の食卓」。 これは、「味覚の一週間」参加レストランにおいて、12歳以下の子供たちと一緒に食事を楽しめるテーブルを用意。普段は子供連れだと躊躇してしまうようなレストランでの食事を通して、子供たちに「新しい味覚の発見」「食事の喜び」を体験してもらおうというもの。
誰かと一緒に食卓を囲み、会話を楽しみながら、人とのつながりを感じ、おいしいものを共有する。それこそが、喜びなのです。
もちろん、それは高級なレストランでなくてもできることだけれど、でも普段行けないようなレストランでの食事って、それだけで子供はワクワクするもの。ちょっとおしゃれをして、そして、ちょっとしたマナーも身に着けて・・・。
経験こそ、何よりもの教育だと思いませんか?

そして、3本柱、最後の1本は
さまざまな味覚体験イベントに参加して、食の楽しみを広げる「味覚のアトリエ」。
こちらは、協賛企業や協力組織による味覚体験イベントが各地で開催されるというもの。
味覚や食に関するワークショップや、セミナー、講習会、「インターナショナルBENTOコンクール」など、さまざまなイベントを通して、食を体験できます。
次の世代を担う若者たちに、有名なシェフや料理人たちが、自らの経験や知識を伝えてくれるワークショップなどは、本当に貴重な時間となるでしょう。

その中で今回、パナデリアが取材に伺ったのは、「味覚の授業」。
10月21日に東京・品川区御殿山小学校で開催された「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」のシェフ・パティシエ・ショコラティエのニコラ・クロワゾー氏の授業と、「マキコフーズ・スタジオ」の藤野真紀子氏の授業でした。

3年1組は藤野真紀子氏の授業

3年2組はニコラ・クロワゾー氏の授業

まず、3年1組で行われた藤野氏の授業は、果物など身近なものを例にとって、わかりやすく4つの味わいを説明。たとえば、みかんは酸っぱい、リンゴは甘酸っぱい、桃は甘くてやわらかい、子供たちに「ゴーヤは?」と尋ねると、みんなが一斉に「にがーい」。
そして、黒板にかわいいイラストを描いて、美味しさは味覚だけでなく、五感を使って楽しむものだというお話も。「味覚」以外の「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」についての説明は、大人が聞いていても納得。確かに美味しさは、「見た目」や「香り」「音」などあらゆる感性を使って感じるもの。そして、「とろける」とか「ふわふわ」とか、「冷たい」とか、感覚的なものも大事な要素です。
そうそう、子供たちに鼻をつまんでパートドフリュイを食べさせてみるという場面も。確かに鼻がつまっていると味ってわからないですよね? 子供たちもそれを実感したみたいでした。

身近な素材やイラストを使った授業に、子供たちも楽しそうに味覚を学んでいました



その日、藤野氏が子供たちのために用意してくれたのは、お花がのったタルトタタンとかぼちゃのクッキー。その他にもハロウィン間近ということで、ハロウィンのかわいらしいクッキーが並べられていました。



さて、今度は3年2組で行われたニコラ氏の授業。
まず、映像を見ながらチョコレートについての説明から。ニコラ氏が、子供たちにチョコレートの産地について聞いてみると、「ニッポン!」「フランス!」と、なんともかわいらしい答えが。もちろん、それには先生から「赤道の近くで採れます」という正解が。
その後は、贅沢にも「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」の4種類のボンボンショコラを食べながら、みんなでチョコレートの味わいについて勉強しました。

ビデオを見ながらチョコレートについて勉強をしたら、いよいよボンボンショコラの試食がスタートです

まずは、「グアヤキル」を食べて、子供たちに「何の味がしますか?」と尋ねると、「バニラ!」、「ココア!」。まろやかな味わいにこんな答えが返ってきました。
次に「サルバドール」を味わいながら、「木いちごの味!」。お酒の味も感じたのか、「焼酎!」という答えも。
その後の「カラカス」には、「なんか、特別な味」「苦味が強い」という答えが。シェフ曰く「このショコラはお砂糖をあまり入れずに作りました」とのこと。子供たちの味覚、なかなかたのもしい。
最後は「リズロット」を食べて、「キャラメルが入っている」「フルーツが入っている」という答えが。実はヘーゼルナッツが入っているのですが、さすがにそこまではわからないですよね。


通訳を交えながら、楽しい授業が続きます

試食するときは、みんな、真剣にチョコレートと向き合っています

どのチョコレートを食べる時も、子供たちが真剣に、まずちょっと齧って、そのあとまた食べ、じっくり考えている様子が印象的でした。
ニコラシェフも後で感想として、「みんな集中して食べていて素晴らしかった。フランスの子どもたちだったら、言われる前にパクッて食べてしまうと思う。でも日本の子供たちは、ゆっくり考えながら食べていて感心しました。実はこういう授業をするのは、自分も初めてなのですが、とてもためになりました」。
そして、子供たちには、「これからもチョコレートを食べるときがあったら、どんな味がするか考えて食べてください」と、ショコラティエらしい一言を添えてくれました。


授業の終わりは、笑顔の記念撮影。この中から将来、名ショコラティエが生まれるかも!


その後、子供たちの方からも、ニコラ氏にいくつかの質問がありました。
たとえば、「いつからチョコレートを作っているのか?」「作っていて難しいことは?」「どんなチョコレートが好きですか?」などなど。そのひとつひとつに丁寧に答えていくニコラ氏の姿もまた、子供たちへの大事なメッセージになったことでしょう。
そして、最後にみんなで記念撮影をし、楽しかった味覚の授業も終わりとなりました。

「ゆたかなこころは、ゆたかな味覚から」
「味覚の一週間」は子供たちに、味覚を通じて大切なことを教えてくれます。来年もまた、この貴重な一週間が開催されることを心待ちにしたいと思います。



「味覚の一週間」
http://www.legout.jp/






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