取材・文 佐々木 千恵美  


日本におけるBean to barの先駆けのひとつ、「Minimal -Bean to Bar Chocolate- (以下、ミニマル)」が、6月22日、代々木上原駅から徒歩1分の場所に5店舗目となる「Minimal The Baking 代々木上原(ミニマルザベイキングヨヨギウエハラ)」をオープンしました。

駅から坂道をのぼっていくと、お店の50mくらい手前から漂うカカオの香りで、迷わずたどり着くことができる。


今回の新店は新業態となるガトーショコラ専門店。これまでの板チョコレート中心の展開からさらに一歩進み、お菓子からのアプローチをすることでカカオやチョコレートの可能性を広げ、より多くの人に愛されるような新しいチョコレート菓子をラインナップ。


そのひとつが火入れをテーマにしたガトーショコラ。
これまでもガトーショコラや焼き菓子のアイテムは作ってきましたが、Minimal The Bakingでは、もう一歩先に進め、「The Baking(火入れ)」にこだわった焼き菓子を作り出します。

火入れにとことんこだわった新感覚のガトーショコラが誕生。


どういうことかというと、ガトーショコラが完成するまでには、カカオは二度の火入れプロセスを経るという点に着眼。これまで板チョコレートを作るのに、カカオ豆の焙煎に1分1℃単位の違いで味わいに違いが出ることを数えきれないほど経験し、引き出したい味を探求してきたミニマル。
だからこそ、砂糖や粉、卵、油脂などの材料を混ぜて焼く2度目の火入れをした後でも、カカオの香りが楽しめる焼き菓子になるよう逆算の火入れを探ってきたのだそう。

以前から「生ガトーショコラ」という卵、砂糖、カカオ豆等を生地にして焼いた定番の人気焼き菓子がありますが、大きな一本売りであること、解凍後は要冷蔵で日持ち3日間と短めだったのですが、新しいガトーショコラは大きなサイズに加え、一人分のバトンタイプも登場し、常温保存で2週間ほど日持ちがするので、送る方もいただく側も楽ですし、自分用に求めるにも気軽ですね。

新店では定番人気の「生ガトーショコラ」も販売する。


しかし最大の特徴はその味わい。最適な2段の火入れによるカカオの香り、酵母(イースト菌)によるしっとり・もっちりとした新食感で、より深い味わいが堪能できるのです。
ミニマルでは、様々な素材や焼き方を繰り返し、酵母を使った生地づくりにたどり着きました。
酵母で膨らますと聞くとパンを想像しがちですが、ベーキングパウダー等とは違ったテクスチャーや味わいを表現してくれる膨張剤のひとつ。それに収穫後に発酵を経ているカカオ豆と酵母の発酵感はとても相性が良く、2つの発酵の掛け算による旨味で、カカオの香りをより複雑でコクのある味わいにしてくれるのです。


なめらかチョコレートケーキとも、ふんわりチョコレートパンとも違うMinimal The Bakingの新食感ガトーショコラのフレーバーは2種類。

酵母の力で膨らませ、発酵感をまとったしっとりもちもちのガトーショコラ。ホールサイズは約20cm×5.5cmで3,250円(税別)


「High Cacao」は、NUTTY系のしっかりした味わいのカカオ豆を使用し、チョコレートらしい味わいと長い火入れにより醗酵が進み、旨味を強く感じられるガトーショコラ。ひと口入れると発酵の香りが広がり、外皮の香ばしさも心地よく、多くの人が好みそうな王道の味わいです。バニラアイスを添えてデザート風にいただくのもよさそう。

「Fresh」は、FRUITY系のレーズンのような香りが特徴のカカオ豆を使用し、果実感を楽しむために火入れを少し浅くしたガトーショコラ。そのため味わいにマスコバド糖のようなカラメル香があり、フルーティーな酸味と、サラサラしっとりやわらかいテクスチャーが印象的です。

いずれも焼き上げてから1週間くらいの間で、味わいや食感が変化していくので、通常のサイズでそれを楽しむのもおすすめです。

お試し、お配りにぴったりなバトンサイズは約10cm×2.7cmで600円(税別)


もうひとつのお菓子がち密な設計によるチョコレートウイッチ。

チョコレートクリームを美味しく食べられる形にこだわったスティック状のチョコレートウイッチ。シュークリームのように、より多くの人に愛されるきっかけにしたいという思いから生まれました。ただしそこにはビスケットにクリームを挟んだだけではない、ミニマルらしいこだわり設計がなされています。

一般的な長方形のサイズでは、チョコレートクリームが重く感じたり香りを感じ取りにくいことから、1本食べ終わった後の満足感を探り、5mm単位で縦横厚さを変えて試作を繰り返し、約10cm×2cmのスティック状に決定。主役であるチョコレートクリームには、乳製品の代わりに甘酒と米油を使用し、カカオバターの甘みと香りを引き出すことに成功。和の醗酵素材をカカオと掛け合わせた、これまた多重的旨味と香りが口いっぱいに広がるミニマルならではの作り。日本を感じるチョコレート菓子ともいえそうです。

チョコレートウイッチ(手前)。とても手間がかかるため毎日数量限定。


カウンター席中心のイートインでは、国内・海外で腕を振るっていたバリスタが、スペシャルティコーヒーや茶葉を使ったドリンクの楽しみ方やガトーショコラとのペアリングを提案。ふたつを合わせることでモノづくりの世界観や、その生産地や生産者がより身近に感じられるのでは。

コンクリートと木の組み合わせがシンプルでスタイリッシュな店内。


ミニマルのハイカカオを使ったアレンジコーヒーのモカは、昔から一般的なものよりぐっと甘さ控えめ。カカオとコーヒー、両者の香りひきたつなめらかな舌触りの飲みごこち。アラビアのマグカップ、ティーマにたっぷり、美しくいれてくれます

ハイカカオのチョコレートを仕上げに削ったモカ。ドリンクにはひと口ガトーショコラが添えられる。


今回ミニマルは5店舗目にしてはじめてクラウドファンディングを行いました。その狙いは支援者を特別会員として迎え、少量で希少なカカオや実販売のカカオを使った完全予約生産の限定品を購入出来たり、意見を聞きながらの商品開発ワークショップや会員限定イベント開催など、一緒に新しい挑戦をしていく店舗にしたいため。こんなわくわくするような支援なら喜んでしたいですよね。

達成率は1500%を超え、支援者も1500名以上に。想定をはるかに上回る結果だったそうです。
ミニマルの「チョコレートを新しくする」挑戦に、今後も目が離せませんね。

イメージにぴったりの外の看板。



Minimal The Baking 代々木上原
 東京都渋谷区上原1-34-5(各線代々木上原駅南口2から徒歩1分)

商品内容、販売期間、店舗など詳細は下記サイト等でご確認ください。

 Minimal ‐Bean to Bar Chocolate‐
  https://mini-mal.tokyo/




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