ヴェルサイユと聞けば、すぐにヴェルサイユ宮殿、ルイ王朝、そして漫画「ベルサイユのばら」などが思い浮かびます。パリから行ける世界的観光名所として有名ですが、宮殿の一画に、ルイ14世の時代から今に続く‘王の菜園(ル・ポタジェ・ド・ロワ)’があることはあまり知られていないのではないでしょうか。ル・ポタジェ・ド・ロワは、ルイ14世が命じ、ジャン=バティスト・ド・ラ・カンティニによって1683年に造園されました。菜園では王と宮廷の食卓のための野菜と果物が栽培され、現在でも昔の方法のまま、昔からの品種が数多く育てられている世界最古の菜園なのです。この王の菜園で、毎年秋に開催されるフェットゥ・ドゥ・ヴェルサイユは、菜園の収穫を祝い、伝統的な食文化を継承していくお祭り。実は2012年から日本でも開催されているのです。

主催は王の菜園のりんごやバラの花びらで香りづけた「オリジナル マリー・アントワネット ティー」を手がけるニナス・ル・ポタジェ・ド・ロワ。ニナスはヴェルサイユの王の菜園ル・ポタジェ・ド・ロワに実る希少な果物やバラを利用した飲料や食品を提供している唯一の契約企業なのです。

会場の入り口のフェットゥ・ドゥ・ヴェルサイユ案内板


昨年末、アンスティチュ・フランセ東京で行われた2回目のフェットゥ・ドゥ・ヴェルサイユ、テーマは、“歴史が紡ぐ未来<LE FUTURE de L'HISTOIRE>”。実際現地で10月の収穫祭を訪れた著述家・湯山玲子さんと、「ベルサイユのばら」の作者・池田理代子さんのディープな対談は会場を大いに沸かせました。

会場に一歩入ると、ニナスの「オリジナル マリー・アントワネット ティー」の優雅なコーディネートに目が奪われました。その奥では王の菜園や収穫祭の様子などを盛り込んだ映像が映し出され、ラグジュアリーな中にも、昔から繰り返され受け継がれてきた人の手仕事の美しさに引き込まれていきました。今回は映像で紹介されたマリー・アントワネットの靴のレプリカ、さらにニナス・パリ本店に保管されているマリー・アントワネットの直筆の手紙も展示され、来場者の関心を集めていました。これらの貴重な展示を目にすると、気持ちはぐっとヴェルサイユに近づいていきます。

「オリジナル マリー・アントワネット ティー」。リーフとティーバッグどちらもピンクのパッケージが優雅。


1793年当時履いていたマリー・アントワネットの靴のレプリカ。
映像とマリー・アントワネットをイメージしたドレスの展示。


ニナス・パリ本店から運ばれたマリー・アントワネットの直筆の手紙。


ほどなくして湯山玲子さんと池田理代子さん、お二人のトークショーがはじまりました。 湯山さんは、漫画「ベルサイユのばら」を日本人女性が一生涯読み返すバイブルとして捉え、深く読み解き教養を紹介した「ベルばら手帖」が大人気。池田さんとは、この「ベルばら手帖」を通じて交流が始まったそうです。

プライベートでも交流のある池田理代子さん(左)と湯山玲子さん、トークショーは和やかな雰囲気でスタート。

「まずは紅茶とケーキを召し上がってください」と、来場者に「オリジナル マリー・アントワネット ティー」と、マリー・アントワネットの時代に、彼女をイメージして作られた'マリー・アントワネット ケーキ'を再現したケーキが供されました。ピンクの砂糖掛けが優雅な、小麦粉、砂糖、バター、卵、りんご、レモン等で焼き上げたアンティークレシピのケーキは、当時の贅沢な甘さを堪能したような気分に。何百種とある王の菜園のりんごの中から、あえて薄力粉のような味のするルネット・ブラン・オブ・カナダをバラの花びらと共に茶葉の香り付けに生かし、絶妙なフレーバーに仕上げられた「オリジナル マリー・アントワネット ティー」とは見事なマリアージュ。りんごとバラは同じバラ科、色合いも香りの要素も共通点があるのでしょう。


1778年のレシピを再現したマリー・アントワネット ケーキは、ニナスの名づけの元となった女性ニナ・ディアズによって考案された。日本での製造販売はなく、この日だけのケーキでした。
マリー・アントワネット ケーキとマリー・アントワネット ティー。

「ルイ14世時代から始まる王の菜園ということは、その時代の土壌が今でも引き継がれているわけで、そこで採れた作物で作った紅茶を飲むということは、ルイ14世やマリー・アントワネットとある意味つながっていることですよね」と湯山さん。はっ!確かに。想像するだけでなんだかわくわくしてしまいます。


途中ニナスの川島さんからおいしい紅茶の入れ方ミニレクチャーが行われました。
「紅茶には硬水がいいのですよね?」湯山さんの問いかけに、「いいえ、硬水軟水どちらでも構いません」と切り返すと会場は笑いのリアクション。「硬水で入れると鉄分がタンニンと結合して渋みが吸収され、まろやかであっさりした味わいになります。一方、軟水は味もタンニンもよく出るので、茶葉の量を少なくすることができます。いずれも汲みたての水をしっかり沸騰させることです」。
なるほど、お水も味わいたい感覚で変えればいいのですね。

おいしい紅茶の入れ方レクチャー。「茶葉を量るスプーンはいつも同じものをお使いください。そうすれば濃さの調整もしやすいですよ」。


フランスでは「レディオスカル」のタイトルで紹介された漫画「ベルサイユのばら」。歴史の舞台フランスではこんな逸話が・・・オランド大統領来日の際、随行の男性が池田さんのもとにやってきて、「フランス革命史はあなたの漫画で勉強しました。それまでマリー・アントワネットはもっとバカな女だと思っていたのです」と語ったそうです。「マリー・アントワネットの人気の秘密は、彼女が後世に自分の名前を残す死に方を選んだことにもあります。お母さんのマリア・テレジアは偉大だけれど、マリーのほうが魅力的でしょう!?」と池田さん。湯山さんとともに、テンポよく語る「ベルサイユのばら」の普遍性に、ぐいぐいと引き込まれていきます。



「ベルサイユのばら」を様々な切り口で語るお二人。


「コーヒーは一人で飲んでもさまになるけれど、紅茶は何人かで飲んで会話を楽しむ時間がつくれる飲み物。ポットに茶葉を入れて待つ時間のコミュニケーションも楽しいでしょう」。
2014年フランス観光親善大使を務めることになった池田さんが、最後に締めくくりました。

トークショー終了後、12月18日が誕生日という池田さんを祝福。マリー・アントワネット ティーのアロマであるピンクのバラとりんごのブーケが映える。

宮殿傍らの9haの畑で、10数名のガーディナーが働き、400種類ものフルーツ、450種類もの野菜を育て続けている王の菜園。昔からの堆肥で、昼間の畜熱を利用した壁に枝をそわせる栽培方法など、後世に伝えるべく農法を行っていく場所でもあります。10月の収穫祭では、保護され続けている古い品種のりんごや梨の展示、菜園の果物で作られたコンフィチュールなどの販売もあり、誰でもふらりと訪れることができるそう。2014年は、10月4日、5日の2日間開催予定(詳しくはLe Potager du Roiサイトをご覧ください)。ヴェルサイユの土壌を通じて、時空を越え、マリー・アントワネットとつながる体感、いつか現地で味わってみたいものです。

オリジナル マリー・アントワネット ティーのリーフはベビーピンクの缶入り。

箱の中のミニボックスに一杯分ずつのティーバッグが入っている。ティーバッグといえどプチ贅沢な気分に。



NINA'S PARIS のウェブサイト
http://www.ninasparis.com/

Le Potager du Roi のウェブサイト
http://www.potager-du-roi.fr/site/potager/

日本のNINA'S PARIS のウェブサイト(サロン、紅茶の販売など)
http://www.les-deux.co.jp/nns/




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