取材・文 佐々木 千恵美  


「果物の女王」と呼ばれ、黄緑色の果粒からうっとりするような香りを放つマスカット・オブ・アレキサンドリア。名前くらいは知っていても、高級な果物とあって食べる機会も少なく、実のところをよく知らないでいました。そんな私たちのために、生産量日本一を誇る岡山県から、今年初めて届いたマスカット・オブ・アレキサンドリアを試食しながら、美味しく食べるためのセミナーが開催されました。



初競りにかけられた岡山マスカット・オブ・アレキサンドリア

新橋にあるアンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」を会場に、初競りを終えたばかりの山下裕さん(岡山県農業水産部・副参事・大田市場駐在)が、画像を用いながら軽快で分かりやすく、詳しすぎるくらいにマスカット・オブ・アレキサンドリアをトーク。歴史と神話のロマンにあふれる果物と熱弁する山下さんからは、この高貴なブドウの魅力が十分伝わってきました。

岡山マスカット・オブ・アレキサンドリアをわかりやすく詳しく説明してくれた山下裕さん


ではそのお話しのほんの一部を紹介しましょう。

岡山では親しみをこめてアレキと呼ぶ「マスカット・オブ・アレキサンドリア」。そのルーツはエジプトの港町アレキサンドリアといわれます。
ヨーロッパへ持ち込まれたアレキはワイン用ぶどうとして各地で栽培されることに。そのアロマティックな香りは、名前の通りムスク(MUSK=じゃ香)の香りがするとしてクレオパトラも愛したとか。ちなみにマスクメロンも同じムスクを語源とするフルーツ。(あっ、フランスでメロンにマスカットワインを合わせるのはこのためですね!)
一方明治時代に日本に持ち込まれたアレキは、廃業武士の新規事業として、主食である米から醸造する日本酒の代わりになるワイン醸造をするため、ブドウ栽培を国策として実施。ワイン醸造はコメ備蓄、酒税獲得、輸出して外貨獲得になると考えたためです。(この時代も国はしたたかだったのですね。)
それが栽培に適した「晴れの国」岡山で、ガラス温室による栽培へとつながっていきました。


明治21年初収穫では1箱2円で販売(米60kgの価格)!


アレキの栽培はとても手間がかかります。それは大きな均一の甘い粒の房を作るため、余計な粒を間引く作業を4回も行うのです。蕾の段階、開花後米粒くらいの段階、その2週間後、パチンコ玉くらいの段階、そして、その1か月後、最後は雨をはじいて病気から守る白い果粉を落さず間引きをし、熟したところで待ちに待った収穫となります。
こんなに手をかけるのは、高温多雨な日本の気候のせいもあるけれど、もともとワイン用のぶどうを日本が生食用に育てようとしたから。(日本の果物栽培はやっぱり芸術的!)

こんなに丁寧に育てられたアレキ、美味しい食べ方は?
食べる前に15分ほど氷水に入れて冷やして皮ごと口に入れて食べる。アレキの魅力は何といっても香り。口の中で噛んだ時にパリッと弾ける食感とアロマティックな後味は一度食べたら癖になるほど。この日行われた初競りマスカットの糖度は軒並み22%を超え、中には22.7%といちごの約2倍の甘さとなったものもあったそう(一般的なマスカットの糖度は16%前後)。ちなみに初値は1箱(4.5kg)10万円で、昨年を大きく上回る過去最高の高値となりました。ということは…今日の一粒はいくらなのかしら!? 最高の初物を試食してちょっと興奮です。


粒の緑が濃すぎず、表面が白い粉を吹いたようになっている(果粉)ものが上質。


岡山のアレキは生だけではありません。ワイン、ジュース、ジャム、缶詰等と加工品の生産も岡山では盛んなのですね。


ふなおワイナリーでは、船穂町産のマスカットだけを100%使用したプレミアムワインを醸造。やや甘口、中口、やや辛口があります。

こんにゃくマスカットジュレ、マスカット・オブ・アレキサンドリア缶詰、マスカットキャラメル、いずれも岡山県産のマスカットを使用。


それから、6月10日、11日の2日間「岡山マスカットフェア」が、千疋屋総本店、日本橋本店をはじめとする13店舗で開催されます。生産者やキャンペーンスタッフ、岡山県職員によるマスカットの試食販売の他、日本橋本店、玉川高島屋店では、岡山マスカット・オブ・アレキサンドリアタルトを数量限定で販売します。魅惑のムスク香広がる岡山マスカット・オブ・アレキサンドリアを、この機会にぜひ体感してみてください。





とっとり・おかやま新橋館のサイト
 http://www.torioka.com/




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