? パナデリアが行く(ラショナル スチームコンベクションオーブンセミナー「エキスパートキッチン(製菓)」が開催されました )
取材・文 佐々木 千恵美  


みなさんはスチコンという道具をご存知でしょうか?
ホテル、レストラン、居酒屋、スーパーの総菜部、病院や学校給食、老人ホームなどの調理で今最も重宝されている調理機器がスチームコンベクションオーブン、略してスチコンなのです。
どうして重宝されているかというと、スチームと熱風の組み合わせによって蒸す、炊く、茹でる、焼く、煮る、揚げる、炒めるといった加熱調理、真空調理を一度にたくさん、誰がやっても同じように調理でき、時間短縮、人手不足解消、作業効率のアップがはかれるからです。

お菓子屋さんはというと平窯、スチコン、両方を備えているお店もあればそのどちらかというお店もあります。それで出来てしまうのでスチコンはなかなか導入されていないのが現状です。しかし、昨今製菓業界においても、作業スペースや人手不足を解消し、働き方改革をすすめるなか、スチコンは注目されはじめ導入を検討する傾向にあるそうです。

スチコンの世界的メーカーRATIONAL (ラショナル)が6月に行った“エキスパートキッチン(製菓)”は、そんな製菓業界における様々な課題を解決するセミナーイベント。実際に早くからRATIONALのスチコン SelfCookingCenter®や最新技術などを導入し、積極的に業務改善に取り組んだ結果、大きく売り上げを伸ばされている「べんべや」(北海道札幌市)のオーナーシェフ、土井大輔氏を講師に迎え、お店で作られているお菓子のデモンストレーションと、その導入後のメリットや活用法等をお話いただきました。


株式会社ビー・リガーレ 代表取締役で「べんべや」オーナーシェフ、土井大輔氏 べんべやの代表的な焼き菓子


ラショナルについて
RATIONAL(ラショナル)はドイツを本社とするスチコンを生み出した専門メーカー。 40年以上にわたる研究開発(600件以上の特許申請、実用新案)により、製造台数90万台以上、57の言語に対応の世界のトップブランドとして業界を牽引。多機能加熱機器の世界市場シェアは50%以上。事実上、世界中に設置されているスチコンの約半数がラショナル社製です。 1992年にラショナル・ジャパンが創立。 20年以上にわたり、全国の飲食店、ホテル、旅館、スーパーマーケット、惣菜店、食品工場、給食センター、社員食堂、病院、老人福祉施設などでスチコンが導入されています。



会場は千代田区神田猿楽町にあるラショナル・ジャパン1Fのテストキッチン。43人のプロ受講者が集まり、そのうち10名ほどがすでにラショナルのスチコンを持っている方でした。土井さんがどのような使い方をされているのか、ユーザーとしての視点で見ることも刺激になりますね。


“エキスパートキッチン”の会場ではラショナルの機器をどのように使っていて、どんな仕上がりになるかを体感できる。


土井さんのお店には平窯もありますが、クッキーやマカロンなど人気商品の生産効率を大幅に上げたいとスチコンの導入を検討。限られたスペースで20段タイプが2台入り、電気容量も少なくてすむガス式が選択できるラショナルのSelfCookingCenter®20段タイプを入れることに決めたそうです。

ラックごと出し入れできる20段タイプ。電気式かガス式が選択できるのも大きな決め手に。


こちらの機種、20段ラックごと出し入れができるので、クッキーは一台で一度に約500枚、マカロンは約20分で720枚焼成できるようになったそうです。しかも風力が調整できるので、オーブンペーパーに絞って焼いても紙がめくれることがなく、面倒なシリコンパッドの洗浄作業をなくすことができました。途中天板の向きを変えることなく、焼きむらも少ないなど、ここまで聞いただけでも効率の良さがわかりますね。
しかもラックごと庫内で自動洗浄できるので衛生面でのメンテナンスも労力が軽減されます。洗い物やお掃除の負担が減れば体力的にも楽ですね。

クッキーの焼成。ゼロではないがほぼ焼きむらなく仕上がる。


パイスティックは、冷凍したパイ生地を重ねてウォーターカッターでカット、砂糖またはココアグラニュールを塗してから焼きます。ザクザクした食感が好まれそうなパイ菓子です。


プレーンとココアの2種類のパイスティック。


プチドーナツは、小さなハートのシリコン型に生地を絞り焼いていきます。この生地は混ぜるだけなので絞り袋に入れて冷凍できるから便利。焼き上がりにシロップを含ませてグラニュー糖を塗すと、揚げたドーナツみたいになるから不思議。

 小さなハート型に焼き上げたプチドーナツはシロップ、グラニュー糖を塗すと揚げた
 ドーナツのテクスチャーに。ひと口で食べられる可愛さで大人気商品だそう。


サクっとさせたいパイスティックは湿度0%、しっとり感のあるプチドーナツは100%設定で焼成と、出したい質感に応じて湿度は1%単位で100%まで、生地の分も含めて設定できるのでわかりやすい。

メレンゲやマカロンは反りかえるのを防ぐように、風を4段階中2の弱設定にして焼く。するとオーブンペーパーは風でめくれない。


マカロンはひび割れなく均一に焼きあがる。


ガナッシュの中にパートドフリュイを入れたテリーヌはトヨ型で湯せん焼き、ブラストチラーで急速冷蔵してからウォーターカッターで4等分にし、羊羹のような形に仕上げています。


中心にパートドフリュイを入れたテリーヌショコラは、酸味のあるフランボワーズ、カシス、マンゴー、いちじくと4種類のフルーツと濃厚なショコラのハーモニーが楽しめる。


「ジェノワーズは焼いてから熱いうちにラップで密封し冷凍をかければ、平窯と同じにはできないけれど、配合や工夫次第でしっとりふんわりした仕上がりになる。
ガトーショコラは平窯だと中心が山になるが、スチコンなら平らに焼きあがる。要はスチコンをいじる。使い倒すことが肝心。」と土井さんはいいます。


メレンゲはオーブンペーパーに絞り、真空調理のフルーツは網にのせ入れる。


スチコンは真空調理も得意。旬のフルーツをコンポートにするのもシロップ漬けにした真空パックをセットすれば、驚くほどフレッシュで香りの立つコンポートが出来上がります。
土井さんが見せてくれたのは、例えば黒いちじくは赤ワインに、白いちじくは白ワインでマリネして真空にパックして調理。ワインの風味がそのままに、大人のコンポートになっていました。
巨峰は洗った粒をシロップにつけて真空パックし調理すると、皮がぺろりとむけるメリットも。しかも思い切りフレッシュ感があり、パフェ、デザートなどにも使えそう。皮はジューサーにかけジュースにするとおいしく飲めて無駄がない。
りんごはキャラメルタブレットとパックして調理すればキャラメル風味のコンポートの出来上がりといった具合に、土井さんは次々とアイデアを披露していきます。
果物加工のついでにいえば、ジャムの殺菌も、瓶の煮沸もできる。


黒いちじくの赤ワインコンポート。 巨峰のコンポート、皮がするっとむける。 りんごのキャラメルコンポート。


他の機械と合わせて使うことで作業効率が大幅アップしたべんべや。現在製造スタッフ15人で年商5億円を達成しているそうです。導入額は決して安くはないけれど、それによって創り出された時間でスタッフの技術が向上し、モチベーションが上がればさらにいいものが出来るかもしれません。
そのためには機械を使い倒す。何度もおっしゃっていたこの言葉が一番の手引きになったのではないでしょうか。


セミナー終了後、焼き上げたクッキーを手に。



ラショナル・ジャパン
 https://www.rational-online.com/ja_jp/home/

洋菓子工房べんべや
 http://www.benbeya.jp/



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