取材・文 佐々木 千恵美  


日本人にとってハレの日の外食、ちょっと背伸びして食べに行く。
これがフランス料理のイメージですよね。

でもそれはひと昔前のことになりつつあります。
ランチが2500円から、ディナーは5000円均一で、シェフ自慢のコースが堪能できるとあれば、気軽に、日々多くのお店に行くことができると思いませんか?

そんなうれしいイベントを仕掛けたのが「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」。
たくさんの人にフランス料理を身近に楽しんでもらおうという趣旨で始まったこのイベント。7回目の開催となる今年も、日本全国、ガストロノミックなレストランからカジュアルなビストロまで、およそ600店が参加。年々エントリーするレストランが増えているというのだから、日本のフレンチの充実ぶりが伺えますよね。選択の幅もぐっと広がって、どのお店を予約しようかますます迷ってしまいそう。

そして今年のサブテーマは「トレ・ボン!日本のテロワール」。
南北に長く海と山を持つ日本列島。今回は地方それぞれが誇る多彩で独特な食材に注目。さまざまな食材を柔軟に使いこなす日本のフレンチシェフが、昆布や椎茸、そば粉などを取り入れながら'日本のフランス料理'の魅力をアピールします。


一体どんな展開となるのか、フランス大使公邸で開催された「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2017」プレス発表会に行ってきました。






まずは三井住友トラストクラブ株式会社代表取締役社長の野原幸二氏による挨拶からスタート。
「食事を楽しむ人(ダイナー)のクラブが起源なので、初年度から7年連続でフランス レストランウィークの特別協賛を務められることを光栄に思っています。日本を代表するダイニングイベントに成長したと感じています。」

続いてアラン・デュカス氏が挨拶をしました。かれこれ30年にも及ぶというデュカス氏と日本の交流。2010年にフランス美食術がユネスコ世界文化遺産に登録されたことをきっかけに、フランス全土で「トゥス・オ・レストラン(皆でレストランに行こう)」というイベントを立ち上げ、その日本版が本イベントであることより、毎年この会見には来日されています。
「日本のテロワールを知るには、生産者との交流も大事なこと。生産者と食材なくしては、シェフは料理できないのだから。そして新たなジェネレーションの参加がうれしい。今後のフランス料理の発展につながる。」

プレス関係者およそ100名を前に発表会の挨拶をする野原幸二氏(左)とアラン・デュカス氏(右)。


それから事務局によるイベント概要の説明がされました。


ダイナースクラブ フランス レストランウィーク 2017
開催 2017年9月23日(土)〜10月9日(月・祝)の17日間
予約開始 9月6日(水)10時から
ダイナースクラブ プレミアム会員は8月25日(金)10時から
 ダイナースクラブ会員は8月30日(水)10時から
ランチ2,500円または5,000円(各店舗任意)
ディナー5,000円
いずれも税・サービス料込。
ランチ、ディナーとも<前菜・メイン・デザート・食後の飲み物>が最少構成。

予約方法 公式サイト経由 一休.com レストランおよび電話で直接店舗へ


テーマ「トレ・ボン! 日本のテロワール」について。
日本の地元素材を組み入れるのは、新たなフランス料理の潮流です。今やフランスや世界の料理界で、UMAMI(うまみ)、SHIITAKE(椎茸)、WASABI(山葵)、YUZU(柚子)など、日本語で通用する和の味わいを、日本人シェフたちがどのようなフランス料理に仕立てるのでしょうか。また来日するフランスのシェフたちが、どんなインスピレーションを得て料理するのでしょうか。そんなミッションを作り手と共に分かち合うのも楽しみのひとつ。新たな発見も期待されます。

このテーマを中心となって担うのが、今年のフォーカスシェフ9人。来場した彼らからは使う和食材と意気込みが熱く語られました。

昨年7月、渡辺雄一郎シェフがオープンした「ナベノ‐イズム」のコンセプトはずばり「日本の食材とフランス料理の融合」。この日のレセプションでは雷おこしにポワトーシャラントのバターを組み合わせたアペリティフを振る舞った。


「ロワゾ― パー マツナガ」(北海道・函館)の松永和之シェフは、北海道産食材でフランス料理に馴染みのない函館産昆布と塩昆布、椎茸を。

「レストラン シェヌー」(宮城県・塩釜)の赤間善太スーシェフは、港町で生まれ育ったこともあり、気仙沼産牡蠣などの海産物を中心に、生湯葉、梅酒を使い、和の存在をバランス良く感じさせる料理を。

「キュイジーヌ・レジョナール・レヴォ」(富山県・富山)の谷口英司シェフは、養鶏家とともに開発したレヴォ鶏、岩魚の酵母で仕込まれた利賀村産どぶろくなど、ストーリーも興味深い食材を。

「ヒガシヤニシ」(長野県・松本)の田邉真宏シェフは、キノコ生産量日本一を誇る長野県から池田町原木椎茸、里山辺の蕪を。

「ナベノ‐イズム」(東京都・駒形)の渡辺雄一郎シェフは、自店のコンセプトがまさに「日本の食材とフランス料理の融合」ということで、蕎麦粉、山葵、すだち、煎餅、和牛、みりんを。

「シエル・エ・ソル」(東京都・白金)の音羽創シェフは、フランス料理における昆布だしの可能性を探ることと、酒粕、昆布、刀根柿、大和野菜を。

「星のや東京」(東京都・大手町)の浜田統之シェフは、‘日本に来ないと食べられない’フランス料理を突き詰めたいと、新潟産シオデ、長野産ウワズミザクラの実などを。

「アニエルドール」(大阪府・本町)の藤田晃成シェフは、秋に脂ののった徳島産および淡路島産鱧を。鶏や鹿、猪をかつお節同様の手法で削り節に。

「ローブランシュ」(福岡県・西中洲)の白水鉄平シェフは、フランス料理を通じて日本の食文化を守り伝えたいと、八女茶、阿蘇産あか牛、佐賀産日本酒などを。



聞いたことのない食材もあって好奇心をそそられます。そこに行かないと出会えない、素晴らしい食材が日本にはたくさんあることをフランス料理が気づかせてくれる。フランス料理の手法が別の魅力を教えてくれる。このイベントがそんなきっかけになればいいですね。

また、プレイベントとして、9月6日から18日のうち、計10日間、東京のミーレ・センター表参道にて、「ラ・ターブル・ドゥ・ダイナースクラブ@ミーレ」と称し、地方のフォーカスシェフ4人と、フランスから来日するシェフが日替わりでコースを提供するポップアップレストランをオープン。地方発の個性豊かな若手シェフのお料理を堪能できるチャンスです。

そして同じくプレイベントとして、「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2017」の開催を祝し、会期直前には日仏星付きシェフが集結する恒例のガラディナーを、東京・大阪でそれぞれ開催。パティシエも加わった日仏5人のシェフが和素材をふんだんに使い、華やかで個性あふれるコースを演出します。その日だけの貴重なコースなので、こちらも見逃せません。


長野県から来場の「ヒガシヤニシ」の田邉真宏シェフは、「ラ・ターブル・ドゥ・ダイナースクラブ@ミーレ」でも腕を振るう予定。レセプションではキノコ類や稚鮎といった山国ならではの食材で目と舌を楽しませてくれた。


さらにキャンペーンとして、極上のパティスリーを先着100名様にプレゼント!
これはパナデリアとしても見逃せません。公式facebookの予約開始ニュースをSNSでシェアしたうえで神宮前「ワンズ バイ ソスウ」に来店すると「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」を象徴する極上のパティスリーがもらえるというキャンペーン。9月6日10:00〜、先着100名限りなのでスケジュール帳にしっかりマークしておきましょう。

今年は他にもたくさんのキャンペーンが予定されているとのこと。詳しくは順次「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」のwebサイトに掲載される予定です。


いよいよレセプションのはじまりです。
乾杯の後、臨席されたローラン・ピック駐日フランス大使からはこんなメッセージが。
「美食はフランスと日本をつなぐ確かな架け橋であり、インスピレーションと交流の豊かな源です。フランスの美食文化と和食がユネスコ世界無形文化遺産に登録されたことは、決して偶然ではありません。日本ならではのすばらしい食材とフランス料理の融合という今年のテーマは、私も非常に楽しみです。」


コックコート姿の野原幸二氏による乾杯。フォーカスシェフの他、多数のトップシェフが集結。

ローラン・ピック駐日フランス大使。


お料理は都内と地方の参加レストランから5人のシェフが担当。テーマに沿って“和&地元”の食材を取り入れた目にも美しいフランス料理が振る舞われました。そのひとつひとつを賞味するにつけ、本番への期待が高まります。


「アルシミスト」山本健一氏による‘紫黒米・ラベンダー’。お店のカラーでもある紫を、自家製の黒米のチップとラベンダークリームで表現。獺祭発泡にごり酒とのペアリング、ルノー トゥインゴ ノクターン(限定車)のイメージで。サクッと軽い口当たりにラベンダー風味のフロマージュブラン、セルフィーユが爽やかな風をよぶ。

獺祭(旭酒造株式会社)もイベントパートナーとして参加。フランス料理にはフランスワインで、というくくりはもはや昔のこと。和食でワインを飲むのと同様、フレンチを日本酒でいただくのもありですよね。

「ナベノ‐イズム」渡辺雄一郎氏による‘大心堂 雷おこし「古代」とフランス ポワトゥ・シャラントバターとの出逢い’。雷おこしのクリスピー感とバター、アンチョビの旨みが癖になる。

「シエル・エ・ソル」音羽創氏による‘プレミアムヤシオマスのコンフィ きゅうりソース’(左)と‘地鶏とアーティーチョークのテリーヌ 山葵のクリーム’(右)。しっとり、そして甘みを感じるプレミアムヤシオマスにきゅうりの緑が目に涼しげで爽やか。

「ヒカリヤニシ」田邉真宏氏による‘蕪と大根と地鶏のミルフィーユ 柚子の香り はちみつとマスタードのドレッシング 花のサラダ添え’は、食べるのが勿体ないほどの色彩とフォルム。

同じく田邉氏による‘稚鮎のフリット うるかのタプナード’。日本料理を思わせる動きのある仕立てにもフランス料理と和の融合を感じる。鮎の塩辛うるかをソースにしたところも面白い。

デザートを盛り付ける「ビストロ・マルクス」のスタッフたち。

「ビストロ・マルクス」小泉敦子氏による‘ブリオッシュ、パイナップルキャラメリゼ、ライスミルクのリオレ、山椒’。同店のスペシャリテであるブリオッシュを小型に焼き、山椒で風味づけたパイナップルと合わせたデザート。ライスパフの軽い食感とお米のミルクのやさしい甘さにほっとする。

同じく「ビストロ・マルクス」小泉敦子氏による‘マンゴーと赤紫蘇のジュレ ヴェリエンヌで’(左)と‘ブリオッシュフイユテ、ムース・オ・ショコラ スモモのコンポート’(右)

「アラン・デュカス」グループのシェフパティシエ、ジュリアン・キンツラー氏は‘柚子と生姜の香りのムース・オ・ショコラ’を、ヴァローナのイランカで乳を使わずにムースに仕上げた。スパイスの香りがくっきり、余韻に柚子が広がる。



NPO法人「森は海の恋人」畠山重篤氏からは宮城県気仙沼市水山養殖場の真牡蠣が振る舞われた。気仙沼の牡蠣はフランスの牡蠣養殖との深い関係がある。かつて病気で絶滅に瀕したフランスの牡蠣を気仙沼の牡蠣が救い、東日本大震災で被害を受けた気仙沼の牡蠣養殖を今度はフランスが救い復活させた。それもアラン・デュカス氏ら料理人たちとの交流が大きな助けになったという。

「食のみやこ鳥取県」として、今回のレセプションではパートナーである鳥取県の食材が豊富に使われた。試食は黒らっきょうのペーストなど。


予約開始日までは夏休みを挟んであと1か月少々。参加レストランの情報は7月中旬から公開予定。それまでに、各キャンペーンや日程などが順次アップされるとのこと。ここに紹介しきれなかったプログラム、キャンペーンなどの最新情報は、ぜひ公式webサイト、公式facebook、公式Twitterでチェックしてみてください。

日本人シェフとフランス人シェフ、ベテランから若手までが腕を振るう「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」。シェフも食べ手も今から開催の日が待ち遠しい。


ダイナースクラブ
 フランスレストランウィーク
 公式サイト
 http://francerestaurantweek.com/
 facebook
 www.facebook.com/frweek/




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