取材・文 浅妻 千映子  


「気軽にフランス料理を食べられるイベント」として、アラン・デュカス氏をはじめとする星つきシェフ達の呼びかけで始まった 「Tous au Restaurant」(トゥス・オ・レストラン=皆でレストランへ)の日本版「フランス レストランウィーク」。今年で9回目となり、記者会見とレセプションパーティーがフランス大使館で開かれました。
すっかり定着したイベントですが、改めてその歴史を振り返ってみると、スタートしたのは2011年。東日本大震災のあった年なのです。日本を元気にしようという強い思いとともに、そんな状況の中でもあえて出発。年々拡大しながら、今に至っています。

この第一回以来、タイトルスポンサーを務めているのが「ダイナースクラブ」(三井住友トラストクラブ株式会社)です。代表取締役社長である五十嵐幸司氏が記者会見でマイクを握り、こんなお話をされました。
「このイベントで、ダイナースクラブの会員の方にはウェルカムドリンクや先行予約のサービスがあります。しかし、本来は全国各地の人々にお得な値段でクオリティの高いフランス料理を楽しんでいただくのが目的。ぜひ一人でも多くの人にフランス料理と楽しい時間を味わっていただきたい。そして、日本各地の次世代シェフにスポットを当てているという点も、フランス レストランウィークが他に類をみないイベントと言われるゆえんでしょう」


「ダイナースクラブ」(三井住友トラストクラブ株式会社)代表取締役社長 五十嵐幸司氏


さすがは、ダイニングシーンからスタートした、食とのつながりの深いダイナースクラブです。日本とフランスの食文化の架け橋になるべく、フランス料理の発展に、大きな視点で協力されていることが伝わってきました。

五十嵐氏も話された通り、多くの人が気軽にフランス料理を味わうのがこのイベントの目的。この期間、参加するレストランはお得なコースを用意しています。ちなみに昨年の参加店は日本全国600店以上にのぼったそう。今年はさらに上回ることが予想されていますが、その理由の一つに、価格設定を増やしたことがあります。
以前は、ランチが2,500円と5,000円、ディナーは5,000円という設定でしたが、今年は、ランチ、ディナーともに2,500円、5,000円のコースの他、さらに8,000円のコースが加わることになったのです。今まで参加していなかった高級店の参加が見込まれ、それも私たちには新たな楽しみになりそうです。

そして、次世代を担う15名の「フォーカスシェフ」が紹介されました。北は北海道から南は沖縄まで! それぞれのシェフは、自己紹介とともに、注目の地元食材など自信を持ってアピール。

例えば、福島県で一日2組の客をもてなす知産知消のレストラン「なか田」の中田智之シェフは、
「福島は日本で一番四季がはっきりしていると言われ、12の季節があるとも言われます」と話し、郡山の玉ねぎや、磐梯鯉、県内のきのこ類などを積極的に使っていく予定だそうです。

中田智之シェフと料理イメージ


海のない栃木県の「メリメランジュ ホテルエピナール那須」の吉田拓朗料理長は、ヤマメやイワナ、ヤシオマスといった淡水魚で勝負。



吉田拓朗料理長と料理イメージ


石川県の「ラ・クロシェット」の橋田祐亮シェフは、
「店のある羽咋市は人口2万人。発酵食の文化もある地域です。それらをフランス料理のフィルターを通して表現したい。能登らしさの再発見の機会にしてほしい」
と話し、アカモクやジンバソウ、ヤツマタモクといった能登の海藻や、発酵食であるへしこなどを、お皿の上に登場させるとのこと。

橋田祐亮シェフと料理イメージ


沖縄県の伊良部島にある「紺碧ザ・ヴィラオールスイート レストラン エタデスプリ」の渡真利泰洋料理長は、沖縄県産の山羊を使うなど、沖縄の歴史や文化にまつわる料理を期間中のコースで披露。


渡真利泰洋料理長と料理イメージ


こういったフォーカスシェフらの話を聞いていると、全員のお店に行ってみたくなると同時に、頼もしくもなります。
この後には、1日だけ開催されるガラディナーの料理を担当するシェフや、フランス レストランウィークを引っ張り続けているサポートシェフらの紹介がありました。サポートシェフは、日本のフランス料理界に名を刻んでいるベテラン揃いです。

その中心的存在でもあるのが「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三シェフ。
「先ほどフォーカスシェフたちのおしゃべりからで、“何年生まれ?”“83年”なんていうのが聞こえてきましたが、うちの店のオープンは85年。うーん。僕たちも負けてはいられませんね」
と、ベテランのプライドをしっかりと見せつけてくださいました(笑)


「オテル・ドゥ・ミクニ」 三國清三シェフ


ちなみに、この日シェフたちみんなが着ていたのは、コックコートで有名なフランスのブランド、ブラガールからのプレゼント。道具が大切なのと同じように、生地を大切に仕立てた、フランス レストランウィークオリジナルのコートなのだそうですが、一人だけ違うコートのシェフが……。ダイエットに失敗したという三國シェフです。
「フランス レストランウィークまでにはサイズダウンする」
と宣言!


記者会見後に行われたレセプションパーティーでは、フォーカスシェフたちの作ったフィンガーフードがふるまわれました。見た目も味も、レストランでの一皿をそのまま小さくしたような完成度の高さで、さすが、選ばれたシェフたちだけあると感動。ますますフランス レストランウィークが楽しみになったのでした。

この日のフィンガーフードがずらり。気になるものはたくさんあるのに、残念ながら全部は食べきれず


福島「なか田」 中田智之オーナーシェフ
おざわ農園のいちごのミルフィーユ (左1列目 中央)
いちごのまわりにふわふわのクリームとハラハラしたパイ生地。一口サイズの新ミルフィーユ。

東京「パーク ハイアット 東京」 ロナン・カドレル総料理長
サステナブルアトランティックサーモンのマリネと春野菜のプレステリーヌ キャロットチップス (左1列目 奥)
なんとも美しいテリーヌがフィンガーフードとして登場。パクッと口にするとそれぞれの野菜の歯ごたえと味が一度にやってきて楽しい。

福岡「オーグードゥジュール メルヴェイユ 博多」 小岸明寛シェフ
〜九州の大地と海〜有明海の海の幸のコンソメジュレ、九州野菜とハーブ、野草、花添え (左から2列目 手前)
「かわいい!」とみんなの声が! 九州の海と畑から作られた一品は、爽やかで軽やか。食べると気分が上がりました。

北海道「ミクニ サッポロ JRタワーホテル日航札幌」 二本柳眞料理長
十勝蝦夷鹿と厚真産ハスカップのタルト (左から2列目 中央)
北海道生まれのシェフが使ったのは、地元の鹿。野性的な素材を甘酸っぱいハスカップと合わせ、可愛らしく食べやすく、そして美味しく地元をアピール。

東京「ジュー ドゥ マルシェ」 榎本奈緒子オーナーシェフ
フォアグラのマカロン ほうじ茶の香り 甘夏のコンフィチュール (左から2列目 奥)
フォアグラクリームの挟まれたリッチなマカロン。生地はほうじ茶味。抹茶ほど強くない味がいいバランス。

石川「ラ・クロシェット」 橋田祐亮オーナーシェフ
羽咋市・紫垣の海藻タルトレット (中央列 手前)
能登の海藻に注目しているというシェフ。それを使ってシャキッとした野菜と合わせ、小さなタルト仕立てに。

栃木「メリメランジュ ホテルエピナール那須」 吉田拓朗料理長
今牧場(那須町)子山羊の煮込み ショーフロア仕立て (中央列 中央)
火を入れた子山羊を冷ましてソースでおおったショーフロア。ピカピカ黒光りしたビジュアルに誰もが釘付け。しっかりした食べ応えでも臭みなど全くない。

兵庫「アミタ」 後藤久右衛門オーナーシェフ
栃の実と白小豆のプリン (右から2列目 手前)
滑らかでしっとり、程よく濃厚な白小豆のプリン。シンプルな味から素材の良さが伝わってくる。

大分「ラ ヴェルヴェンヌ」 渡辺亨オーナーシェフ
ガトーバネル(フランス田舎風蒸しパン)安心院産レーズンと湯布院バターのサンド (右から2列目 中央)
フランスのローカルな程よく弾力のある蒸しパンにたっぷりのバターと地元のレーズン。バター好きにはたまらない味

沖縄「紺碧ザ・ヴィラオールスイート レストラン エタデスプリ」 渡真利泰洋料理長
海のパン (右から2列目 奥)
東京の名店やフランスでの修業ののち、地元である宮古島に戻ったシェフからは、沖縄の海をイメージした、お菓子のような軽いパン。海ぶどうがのる。



今年も盛り上がりそうなフランス レストランウィーク。レストラン好きはもちろん、これを機に、たくさんの人がフランス料理を体験しますように。




今年のフランス レストランウィークは9/20(金)〜10/6(日)までの17日間、開催されます。
一般予約は9/3(火)から。 ダイナースクラブプレミアムカード会員は8/20(火)、ダイナースクラブ会員は8/27(火)から予約ができます。
詳しくは、HPをご覧ください。
日々増え続ける参加店舗やフォーカスシェフらの情報、ガラディナーの詳細、表参道のミーレ・センターで行われる、東京にいながらにして地方のフォーカスシェフの料理が食べられるイベントなどについても、こちらからどうぞ。


ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2019
 http://francerestaurantweek.com/



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