今年は朝ドラ「あまちゃん」人気で‘ご当地アイドル’が話題になりましたね。食の世界でも、地方の食に注目が集まり、ご当地の名前がつく食べものが随分増えたような気がします。その元祖ともいえるのがご当地ラーメン。ラーメンは、日本人の大好きな「麺」と「出汁」を軸に、素材、具材の組み合わせで無限の創作ができるところに魅力があるのでしょう。共通するラーメンという料理のうえに行われる冒険。その考えをケーキに置き換えてみたら、ロールケーキがぴったりはまると思いませんか?

昨年に続き第2回目の開催となった、「スイーツコンテスト実行委員会」と「協同組合全日本洋菓子工業会(世界洋菓子連盟日本支部)」共催の「ROLL-1グランプリ/スイーツコンテスト」。
今年は全国から102作品もの、地元の味を巻き込んだロールケーキの応募があり、そのうち書類選考を通過した18作品が、11月7日「ホテル日航東京」に集まり、最終審査を受けました。

会場にずらり並んだ最終選考のロールケーキ18点

当日会場に持ち込んだロールケーキを、選手自ら切り分け、特別審査員のスイーツ親方こと第六十二代横綱大乃国 芝田山親方と、工業会役員3名、望月完次郎氏(帝国ホテル)、中島眞介氏(ホテルニューオータニ)、宇治知英氏(イオンリテール)が試食。その午後、結果発表と表彰式が行われました。
さて、今年はどんなロールケーキがグランプリに輝いたのでしょうか?

選手がそろい、結果発表のときがきました


まずは、特別賞から。
前城竜太さん(勤務先:ムーンハート)の「ティーダ」が選ばれました。

前城竜太さんとネスレ日本株式会社 広報営業統括部統括部長 川島浩輝氏

ティーダ

「私の出身は沖縄県。シークァーサは冬が旬の食材、この酸味を活かしたガナッシュをミルクチョコの甘さとまろやかさで包んでロールの真ん中に。生地とクリームにも、小さい時にオバーがよくおやつに出してくれた黒糖のコクのある甘さを、後味がすっきりするように入れ、アクセントにナッツの食感をちりばめシンプルに仕上げました」

受賞のコメント: 自分が呼ばれるとは思っていなかったのでまだ実感がなく驚きでいっぱいです。

味: ティーダは沖縄方言で「太陽」を意味するとのこと。沖縄特産の酸っぱく丸い果物の味を真ん中に、ふわふわもっちり、ナッツのカリカリ感など、全体に癒される味わいでした。



銅賞は、長谷川岳人さん(勤務先:もりもと 札幌北15条店)の「どさんこ豆の砂糖醤油ロール」が受賞しました。

長谷川岳人さんと、協同組合全日本洋菓子工業会 副理事長 細内 進氏

どさんこ豆の砂糖醤油ロール

「北海道の晩秋から初冬にかけて味わう、豆をはじめとした体を温める素材で心もほっこりあったまるロールです。隠し味には日本人のソウルフードである醤油を使い、お正月の定番、お餅に付ける砂糖醤油の甘じょっぱいおいしさを表現しました。素材は北海道産にこだわり、小麦粉、てんさい糖、はちみつ、豆、醤油、生クリームなどほとんどの素材を地場産で揃えました」

受賞のコメント: グランプリでないのは悔しいです。北海道の雪原の足跡のイメージを、豆で表現しました。ロールケーキは庶民的なお菓子なので、北海道産の素材に地元愛を込めました。

味: スフレのような口どけの生地に、ほんのり塩味の豆がマッチ。後味にふっと醤油味が心地よく抜けます。



銀賞は、矢代 優さん(勤務先:柏屋)の「ルーロ・ソレイユ」が選ばれました。

矢代 優さんと、第六十二代横綱大乃国 芝田山親方

ルーロ・ソレイユ

「福島県の復興のシンボル「ひまわり里親プロジェクト」に込められた想いと絆をロールケーキで表現できたらと考え、真夏の元気なひまわりをイメージ。生地には福島県産の米粉(ひとめぼれ)と牛乳を使用し、しっとりした食感に。生地の食感とクリームのバランスを一番に考えました。さっぱりとしたオレンジのカスタードに、サクサクのチョコがアクセント。食べて明るい気分になっていただけたらと思います」

受賞のコメント: 予選の頃がちょうど、ひまわりの花咲く時期だったのでテーマにしようと考えました。ケーキは女性的というイメージを大事に構成しました。

味: カジュアルでおやつ的なロールケーキが多い中、ハレの日のデコレーションケーキ要素をふんだんに盛り込んだ斬新な構成は、ひときわ目をひきます。矢代さんもそれを狙ったそう。ジューシーなオレンジの味わいは見た目どおり、食べ手のテンションを上げますね。



金賞は工藤昌子さん(勤務先:北日本ハイテクニカルクッキングカレッジ)の「Rouleau “Suisen”」が選ばれました。

工藤昌子さんと、伊藤忠飼料株式会社 代表取締役社長 能登章友氏

Rouleau “Suisen”

「東日本大震災で津波の被害にあった岩手県大船渡市の「酔仙酒造」。復興を応援したく、この酒蔵の酒粕を使ったロールケーキを作りました。生地に酒粕を使い、酔仙酒造のにごり酒「雪っこ」をシロップに、クリームにはすっきりした後味になるよう、ユズの上品な香りを加えました。仕上げに、水仙(酔仙)の花と雪をイメージしたショコラを乗せ、酒造と地域が元気になることを願っています」

受賞のコメント: 私は学校で未来のパティシエを育てる仕事をしていますので、これからも素直、元気、誠実という、物作りをする前の3つの心構えをきっちり仕込んだ上で、基本的技術を伝えていきたいです。コンクール出場に際しては応援、アドヴァイスいただいた方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

味: 清楚な見た目ですが、近づくだけで酒粕の芳醇な香りが漂い、味にもインパクトがあります。バタークリームを巻く玉子焼きのような生地感に和を感じる、大人のロールケーキ。酒蔵のお土産にあったら喜ばれるかもしれません。


いよいよグランプリの発表です。
三好 豊さん(勤務先:クラブハリエ美濠の舎)の「近江の秋〜近江米と彦根梨のロール」が見事グランプリに輝きました。

三好 豊さんと、協同組合全日本洋菓子工業会 理事長 加藤 信氏

近江の秋〜近江米と彦根梨のロール

「風土豊かな近江の新米と米粉、そして地元彦根でとれる秋の果物、梨を使いました。米粉を使ったしっとり、もっちり生地に、新米をミルクでしっかり煮込んだクリームとムースリーヌを合わせ、トンカ豆でコンポートした彦根梨を閉じ込めました。米粉だけでなく、お米をそのまま使った事と梨のジューシー感がアピールポイントです。滋賀の果樹の美味しさを伝えたいという思いを込めたロールです」

受賞のコメント: 昨年第一回は同僚(中嶋万規子さん)がグランプリを取り、自分は受賞できなかった悔しさがありました。審査員のみなさんにどこがいけなかったのかを尋ね、悔しさをバネに、見た目、わかりやすさ、生地とクリームとの相性、食感を研究し挑んだ結果が、グランプリにつながってうれしい。ロールケーキはやはり日本に欠かせないケーキだと思います。

味: シンプルな見た目からは想像できないほど、様々な香りと味わいが展開します。しっかりと食感の生地を噛むと、懐かしいカスタードプリン味が・・・トンカ豆による桜もちの香りがノスタルジックな気分にさせるのでしょう。


出場した18人の選手と審査員による記念撮影


特別審査員を務めた第六十二代横綱大乃国 芝田山親方からは、
「このコンクールは私達の世界にたとえると、横綱審議委員会による稽古総見のようなもの。全国から関取が集まり、本場所はどんな感じになるのかを見る場のよう。受賞にかかわらず全員に可能性は十分ある。また、プロではなく食べ手の立場からの意見として、‘何処産の何々使用’といったブランドや言葉で食べるのではなく、味で判断できる素人も増えてきたということもわかってほしい」というコメントが。

スイーツ親方としても知られる第六十二代横綱大乃国 芝田山親方


またコンクールに使用された「北の卵」「奥入瀬雅」などブランドの卵を協賛された伊藤忠飼料株式会社・代表取締役社長・能登章友氏は、「洋菓子も国産の材料で美味しいものが作れる、選ばれるようにしたい」と述べられました。

コンクールには素材の味を活かす「北の卵」、またはコクと風味のある「奥入瀬雅」どちらかが、表現したい味にあわせ使われている。業務用「Roll−1Egg」は、開発中とのこと

授賞式後の18作品の試食会。どれもご当地の味とストーリー性を感じる


そして、授賞式後の試食会では、作り手が込めた日本の食材と地元の魅力に、食べ手はまるで旅をしているかのような気分になりました。

すでにラーメンは中華料理という枠から独立し、日本独自の素材と知恵に富んだ麺料理となり、海外でも認知度&人気は相当のもの。同じようにロールケーキも洋菓子の枠を越えて、日本発信できるお菓子になるのではないでしょうか。ROLL−1グランプリ開催を重ねることによって、その可能性を大きく羽ばたかせていって欲しいと思います。





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