Text by Chiemi Sasaki  


2016年の年が明けました。スイーツ界は息つく間もなくチョコレートのお祭りに突入です。そう、1月27日からはチョコレートの祭典〜SALON DU CHOCOLAT(サロン・デュ・ショコラ)が開幕します。会場は昨年に引き続き新宿NSビルの地階イベントホール。昨年は、プレオープンの式典で、パリのSDCの主催者であるフランソワ・ジャンテ氏・シルヴィー・ドゥース氏らを載せた車が登場したり、パリではお馴染みのショコラファッションショーが初開催されるなど、天井の高さや照明設備を持つイベントホールならではの装飾や仕掛け、アトラクションに大興奮でしたね。

昨年プレオープンに行われたファッションショーの様子


それでは昨年、プレス内覧会で発表された今回のSDCの概要を、ここでご紹介しましょう。2016年のテーマは「INNOVATIONS CHOCOLAT, EXPRESSIONS CACAO(ショコラの冒険、カカオの誘惑)」。人々を惹きつけてやまない、多彩な魅力にあふれるカカオたち。革新的なアイデアや技術で、より進化し続けるショコラの数々。ショコラが飲み物だった古代から芸術の域にまで昇華した現在へと続く冒険と誘惑。14回目となる今年は世界約19か国からおよそ100ブランドが集結します。


まず気になるのは初登場ショコラティエ。今年はフランス、スペインから3つのブランドがやってきます。ひとつめは「スクレ・ドゥ・カカオ」。あの老舗Bean to Barショコラティエ、ベルナシオンの元で9年間修業ののち2012年に独立、中央フランスの小さな町に店を構えた女性シルヴィー・フォシェシェフによるボンボンショコラは絵画のようなトップの色彩、ケーキを食べているかのような味覚の流れと口どけが特徴です。

「スクレ・ドゥ・カカオ」〜カカオの秘密という意の店名からも、何やら女性らしいエッセンスを感じる


二つ目は2009年創業の「ショコラトリー・ライヤ」。スペインとの国境にあるバスク地方に店を構えるオリヴィエ・カズナーヴシェフは、元リンツフランス工場の焙煎師。フランスにおけるチョコレート発祥の地、バスク地方にふさわしい経歴の持ち主です。Bean to Barに精通したショコラティエによる産地別タブレットショコラは、豆そのものの味わいを感じられるフレッシュ感が圧倒的。

ペルー、キューバ、ブラジルなどタブレットショコラは最もカカオを感じられる75%

クロタン・デュ・ペイ・バスクはノワゼットのショコラがけに特産のエスペレット唐辛子入りも

プラリネ職人の奥様が作るプラリネペーストやパータ・タルティネは香りよく、とろっとした食感


もう一つはスペイン、芸術と美食の地バルセロナからやってくる2005年創業の「ブボ」。カルレス・マンペルシェフは、地元の伝統食材をボンボンに取り入れ、味覚だけでなく、視覚、聴覚、質感、香りなど五感に訴えかける作品作りが人気。パンにトマトとオリーヴオイルの旨みをすり合わせたバルの定番「パン・コン・トマテ」を表現したボンボンなんて、一体どんな仕掛けになっているのでしょうね! 斬新なパッケージデザインにも注目です。

ピンクとホワイトのマーブル模様が目をひくタブレット「チョコスリム」のベリーヨーグルト(手前)と、スナック感覚で手が止まらなくなる缶入り「チョコフルーツ」



毎年恒例、日本限定のセレクションボックスは4種類。

1:Innovations Chocolat
メインテーマである「ショコラの冒険」の詰め合わせは、お馴染み17人のトップショコラティエが創り出す技術の結集。例えばクリスチャン・カンプリニ氏は、生クリーム、バターの代わりにオリーヴオイルを使ったことで、フルーティーでカカオの味がよりクリアになった一粒をこのボックス限定で提供しています。パッケージは進化し続けるショコラを見守る人間の象徴として女神をデザイン。蓋を開ければ真ん中には、幸運を呼ぶお守り〜陶器のオリジナルフェーヴが! カカオの女神からのギフト付きです。

2段重ねのInnovations Chocolatボックスには、フィリップ・ベル、フランク・ケストナー、クリスティーヌ・フェルベール、クリスチャン・カンプリニ、ダビッド・カピィ、ジャン=シャルル・ロシュー、ホテル・デュ・キャップ エデン=ロック、アルノー・ラエール、ヴァンサン・ゲルレ、ユーゴ・エ・ヴィクトール、セバスチャン・ブイエ、ジャン=ポール・エヴァン、パスカル・ル・ガック、ファブリス・ジロット、サダハル・アオキ、アンリ・ルルー、エスコヤマの17粒とフェーブ入り


2:Terres de Cacao / Crus de Chocolat
「カカオの大地 / チョコレートのクリュ(畑の格付け)」と名付けられた箱には、一人のシェフがミニタブレットと同じカカオ(素材)を使ったボンボンの2種類のショコラを作り、そのクリエーションを楽しむというもの。6つの産地別カカオをオリヴィエ・ヴィダル氏など6人のショコラティエがどう表現するのか、ストーリーを食べて感じたいですね。

カカオの木と産地をイメージした生き物が描かれたCru de Chocolat / Terres de Cacaoボックスには、フィリップ・ベル、オリヴィエ・ヴィダル、クリスチャン・カンプリニ、ジャン=シャルル・ロシュー、フレデリック・アヴェッカー、ジャン=ポール・エヴァンが6つの産地をそれぞれ受け持ち2種類のショコラを製作


3:Expressions Cacao
メインテーマである「カカオの誘惑」を、フルーツ使いに定評のある10人のショコラティエが、8種類のフルーツを使ったショコラで表現。ジュースをパウダー状にする技術を考案したフランク・ケストナー氏が作り上げたパッションフルーツとオレンジコンフィのボンボンは、余韻の長さが際立つのだとか。主催者のフランソワ・ジャンデ氏の描く、チョコレートと相性の良いフレッシュフルーツのイラストパッケージからも瑞々しさが伝わります。

フルーツを使ったExpressions Cacaoボックスには、フランク・ケストナー、モリ ヨシダ、クリスティーヌ・フェルベール、クリスチャン・カンプリニ、ジャン=シャルル・ロシュー、ホテル・デュ・キャップ エデン=ロック、アルノー・ラエール、ヴァンサン・ゲルレ、パスカル・ル・ガック、パティシエ エス コヤマの10粒が詰まっている


4:World Chocolate Masters
パリのサロン・デュ・ショコラで決勝が行われる2年に一度のチョコレートの世界大会「ワールドチョコレートマスターズ」の日本代表として活躍した7人のシェフが生み出すボンボンショコラ7粒入り。2005年和泉光一氏をはじめ、今年は2015年2位受賞の小野林範氏も加わりました。常に上位を獲得する日本人ショコラティエの技術と感性に共感できるひと箱です。

World Chocolate Mastersボックスは、日本代表として活躍したメンバーが集結して作った限定ボックス。今回は2015年代表の小野林シェフが加わり、さらにパワーアップして登場しました


一年ぶりの再会が待ち遠しい常連ショコラティエたちも、いつものショコラや新作のショコラを連れてやってきます。その中のひとつ、「ユーゴ・エ・ヴィクトール」の新作を、ちょうど会場にやってきたユーグ・プジェ氏から紹介していただきました。<カルネ・ビーントゥーバ―>と名付けられたボンボンは、ベトナム産カカオのショコラブランド「マルゥ(Marou)」との初コラボレーション。マルゥのベトナム産グランクリュカカオをガナッシュに仕立てた3種類。なんとそのうちの1種類はベトナム麺料理のフォーをイメージしたスパイス入り。ユーグ氏はベトナムを訪れた際、フォーのスープが醸す八角とシナモンの香りがとても印象に残ったそうです。

コラボ限定品を手にする「ユーゴ・エ・ヴィクトール」のユーグ・プジェ氏。お馴染みカルネ形(手帳形)のボックスデザインもマルゥとのダブルネーム

毎年初日行列必須の「ベルナシオン」。今年はグリルしたアーモンドに蜂蜜入りのプラリネタブレットが登場

根強い人気の「フィリップ・ベル」。新作は宇治の抹茶を使ったトリュフ「MACHA」。フランス人の手にかかると、抹茶もこんな表現ができるのかとハッとさせられる

「ヴァンサン・ゲルレ」は今回もキュートなデザインで女子の心を鷲掴み。クマさんの中には一体何が?


そして近頃日本でもよく耳にするBean to Bar。カカオ豆から板チョコへの加工を一貫して手掛けるブランドが増える中、カカオ豆の個性の引き出し方にこだわるブランドが集結。イタリア「アンティカ・ドルチェリア・ボナイユート」のような昔ながらの老舗から、初登場のフランス「ショコラトリー・モラン」、そしてエクアドル「パカリ」をはじめとするカカオ産国での一貫生産ブランドまで、口の中でゆっくり溶かしながらカカオの地を旅してみては。

Bean to Barのラインナップも充実

酸味の魔術師と呼ばれる「ショコラトリー・モラン」は南仏から初登場。1884年から親子4代にわたりショコラを製造

数々の受賞歴を持ち、サロン・デュ・ショコラ初出店の「アケッソンズ」。カカオ産地の胡椒やコーヒー、塩などを合わせた独自フレーバーも魅力

ベトナムのカカオを‘熱く’した「マルゥ」。パッケージとともに、クリュごとのニュアンスも楽しんで

Bean to Barの先を行くTree to Bar、「PACARI」からは、貴重なピウラケマソンを使ったタブレットとエクアドルの薔薇が薫るタブレットが登場


このほか注目すべきは着実に増えつつある女性シェフによるショコラ。「クリスティーヌ・フェルベール」をはじめ、ラ・メゾン・ド・ショコラ出身の「アリーヌ・ジェアン」、ロンドン修業後に南半球オーストラリア・シドニーに店を構えたジン・スン・キム氏の「カカワチョコレート」、ローフードの発想から生み出された焙煎しないカカオで作る松田すみれ氏の「カカオマジック」など、女性ならではの繊細な感性から生み出されるショコラで癒されてはいかがでしょう。


女性ショコラティエの先駆け「クリスティーヌ・フェルベール」。アルザスの民族衣装を着た女の子のイラストボックスには、自慢のコンフィチュールとプラリネが2層になった新作をはじめ焼き菓子も登場。捨てられないパッケージが増えそうな予感!

日本におけるローチョコレートの先駆者「カカオマジック」からは、白砂糖、乳製品などは使わず、素材が持つ酵素や栄養素などを身体に取り入れられるように、全工程を48℃以下で行い作ったチョコレートが登場


そしてパリのサロン・デュ・ショコラで5年連続ゴールドタブレット受賞の「 パティシエ エス コヤマ」の小山進氏をはじめ、土屋シェフ、辻口シェフ、猿舘シェフ、成田シェフなど、世界でますます高い評価を受ける日本人シェフたちからも活躍から目が離せません。

「パティシエ エス コヤマ」のSUSUMU KOYAMA'S CHOCOLOGY 2015のテーマはDESTINY〜運命的なつながり〜。産地での出会い、素材との出会いを詰めた4粒(左)。コーヒー園を訪ねたことからインスパイアされたカカオとコーヒーのマリアージュがテーマのUNKNOWN!! CAFÉ(右)。


ちょっと廻り疲れたらイートインで一休み。今年は熱気あふれる会場でのほてりを取ってくれる冷菓のラインナップがすごい! 台湾発のかき氷「アイスモンスター」がサロン・デュ・ショコラ会場に初登場。味はもちろんショコラ。ふわふわのかき氷に、ココアエスプーマや塩バニラアイスクリームなどのトッピング。貴腐ワインと合わせれば極楽です。


サロン・デュ・ショコラ2016の会期は2016年1月27日〜31日。ここに紹介しきれなかったアイテム、新作、トークショー、イベント情報など、サロン・デュ・ショコラ2016の最新情報は、公式日本語サイトで随時チェックしてくださいね。


サロン・デュ・ショコラ公式日本語サイト
 http://www.salon-du-chocolat.jp/




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