Text by Chieko Asazuma  


今年も、パリ発のチョコレートの祭典「サロン デュ ショコラ」がまずは東京で開催されました。なんと、もう14回目を迎えます。昨年に引き続いて、会場となったのは新宿NSビル。広いイベントスペースには、19か国約100ブランドのショコラが集まりました。

今年のテーマは、「カカオの誘惑。ショコラの冒険」。
開催に先立って行われたセレモニーでは、もうすっかりおなじみの顔となったお二方から挨拶が。開催者であるイベントインターナショナルのフランソワ・ジャンテ氏とシルビー・ドゥース氏です。
「今回は、ショコラの世界の"今"に光を当てています。きっとみなさんは、この会場で新しい世代のショコラティエを見出すことでしょう」。 そして
「ショコラがもたらす幸せを感じてもらえますように」
と言葉を締めくくりました。

フランソワ・ジャンテ氏とシルビー・ドゥース氏


今回、ショコラのアンバサダーとなったのは、楠田枝里子さん。楠田さんのショコラ好きは有名ですが、
「物心ついた時から今日まで、ショコラを食べなかった日はない」
そうで、その量にもびっくり。
「夕食後のデザートには、ボンボンショコラだと7個。ちょっと体重が気になるときはカカオ分75%のタブレットを半分」
も食べるのだそうです。
「美味しいショコラを食べると、どんな人が作ったのだろうと考えてしまいます。ショコラの歴史や文化は知るほどに面白い。最近ではポリフェノールをはじめ、科学的な研究も進んで、ショコラの魅力は尽きることがありません。もちろん、私の健康の秘訣でもあります」
と、目を輝かせてお話してくださいました。

ショコラアンバサダー2016 楠田枝里子氏


そして、会場は、ショコラドレスのファッションショーへ。贅沢に、生演奏も入りました。
「ノーショコラ ノーライフ」をコンセプトに、ショコラの古代、中世、未来をパティシエとデザイナーが組んで表現。さらには「カカオの誘惑。ショコラの冒険」というテーマに沿って作られた「女王ラティエの大冒険」というお話に出てくる女王ラティエも登場しました。もちろん、見事なショコラの冠をつけた衣装をまとって。

古代は実に野性的な装いをしたモデルが登場。頭にある角は本物のショコラでできていて、腕に塗られているのもショコラです。
中世は、豊かな印象のドレスや、鎧で表現されていて、その繊細な模様はショコラで仕上げてありました。
未来の衣装は白がベース。透明感にあふれ、3Dプリンターで作ったショコラを大胆に飾っていました。3Dプリンターを使うと、複雑な立体の型を作ることができ、今までショコラで表現するのが難しかった形が可能になるのだとか。まさに、ショコラの世界で近いうちにポピュラーになりそうなことを盛り込んだこの作品は、ショーの中でもひときわ目をひいていました。

「女王ラティエ」や3Dプリンターで作った飾りのついた未来の衣装など、華やかなファッションショーが繰り広げられました

最後は、国内外から参加する53名のショコラティエがずらりと並んで、楠田さんの音頭で開催宣言が。
パーンと銀色のテープが散って、一大イベントが開幕したのです。




さて、開催期間中の驚くほどの来客は、ニュースなどでも取り上げられていたので皆さんの知るところなのでは。実際に会場で目にした光景もすごいものでした。ブランドごとに行列ができているのは言うまでもありませんが、「ここが行列の最後尾だろう」と思って並ぶと、なんとまだ中継地点。通路を挟んだところからまた長い列ができていたりするのです。さすがにそれを見ると並ぶのを断念……。それでも会場には入れればまだいいほうで、会場の外には入場待ちの列がうねうねと続いているのです。そのため、20時までの営業時間が22時までに延長された日もあるとか! 14年目を迎えても、サロン デュ ショコラの人気、ショコラの人気は衰えるところを知りません。

そんなわけで、会場内のすべてのブランドをじっくり見たり、たくさんの買い物をすることがなかなか困難な中、今年の100ものブランドから、パナデリアが注目したものをいくつかご紹介したいと思います。

やはり初登場のブランドにはひかれるところです。
ひとつめは、「スクレ・ドゥ・カカオ」。女性シェフ、シルヴィー・フォシェ氏は、毎回大人気のブランド「ベルナシオン」で9年修業ののち、2012年に中央フランスのランゴーニュという街に店を構えました。地元でとれたフルーツをふんだんに使い、その味を閉じ込めたボンボンショコラの表面には、かわいらしいフルーツ柄の転写プリントが。一粒食べると、どことなく、ケーキをひとつ食べたような気分と満足感があります。

次は「ショコラトリー・ライヤ」。スペインとの国境付近、バスク地方にあるショコラティエで、地元の名産品であるエスプレット唐辛子を使ってナッツを入れた小さな粒のショコラの袋詰めなどもありました。作っているのは、元リンツフランス工場の焙煎師オリヴィエ・カズナーヴ氏。bean to barの産地別タブレットを売りにし、
「75%が一番おいしい」
と、すべてのタブレットがカカオ分75%なのが面白い。何種類か購入して食べましたが、力強いドミニカ共和国産のカカオを使ったものが印象的でした。

それから「ショコラトリー・モラン」。個人的には今回一番印象に残ったブランドです。カカオの産地を細分化していて、例えばペルーだけでも数種類あり、チャンチャマイヨとイヴォンという5キロ離れた産地のものを食べ比べても驚くほど味が違う! まさにワインでいうグランクリュの世界です。
「その通り。それぞれの地域の特徴をよく出すために、決して大まかな地域でカカオをまとめることをしません。細かい地域ごとに、その良さを引き出すために焙煎度合いなども分けています。日本に持ってきていないものも含めると、50地域のタブレットを作っています」
とシェフのフランク・モラン氏。南仏の老舗ショコラトリーの4代目です。

南仏といえば、ラ・メゾン・デュ・ショコラで7年修業したという女性、アリーヌ・ジェアン氏の「アリーヌ・ジェアン」にも注目しました。ラヴェンダーやタイムといった、南仏を感じさせる香りを使ったボンボンショコラや、スミレやバラなども使って、エレガントなショコラを作ります。

「スクレ・ドゥ・カカオ」と「アリーヌ・ジェアン」、女性シェフの活躍が目立ちます


そして、セレクションボックスの紹介もしなければ! 今年は4種類が登場しました。
「ショコラの冒険」を表現したボックスには、17名のトップショコラティエがそれぞれ1粒ずつのボンボンショコラを提供し、さらには女神からのギフトである幸運を呼ぶフェーブが一つ入っています。


一方で、「カカオの誘惑」と名付けられたボックスはユニーク。8種類のフルーツを使ってこのテーマを表現しているのです。クリスティーヌ・フェルベール氏など、フルーツ使いの巧みさで知られるショコラティエたち10名がそれぞれ異なるフルーツを使ってボンボンショコラを作っています。



「テール・ド・カカオ/クリュ・ド・ショコラ」というボックスには、6人のショコラティエがそれぞれ2種類のショコラを制作。一つはミニタブレット。もうひとつは、それを素材として使ったボンボンショコラです。同じカカオ(素材)の異なる表現が面白い。



最後の一つは、グローバルに活躍する日本人ショコラティエ7名のボンボンショコラが詰め合わせになったもの。「ワールドチョコレートマスターズ」というボックスの名前通り、パリのサロン・デュ・ショコラで2年に一度開催されているショコラの世界大会に日本代表として出場したことのあるショコラティエたちが作ったボンボンショコラの詰め合わせです。2005年の和泉光一氏にはじまり、2015年の小野林範氏まで。何とも贅沢であります。 いずれのボックスも、日本のサロン・デュ・ショコラのオリジナル。おひとりさま5点までという購入制限がついていたところから見ても、やはり毎年、セレクションボックスは大人気の様子です。



さて、東京での開催は終了してしまいましたが、サロン・デュ・ショコラはこのあとも、JR京都伊勢丹や、名古屋三越栄店、仙台三越などでも開催されています。もちろん、セレクションボックスも用意されています。
いずれの場所も、NSビルよりはきっとすいているだろうな……、などと思いつつ、さすがにそこまでは足を運べないので、また来年を楽しみにしているパナデリアでした。バレンタインもまだだというのに、気が早すぎかな?!


サロン・デュ・ショコラの開催地、開催期間などの情報は、公式サイトから
 http://www.salon-du-chocolat.jp/



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