11月25日、兵庫県三田市にある「パティシエ エス コヤマ」の小山進シェフが、東京で、「バレンタインコレクション2014」の発表を行いました。

「これまでにないほどの幅広いラインナップです」
という10種類ものアイテムが登場しましたが、なかでも、皆が注目しているのは! そう、10月にパリで行われた「サロン・デュ・ショコラ2013」の中で発表された、フランスの最も権威あるショコラ愛好会「C.C.C.(Club des Croqueurs de Chocolat)」のコンクールに出品されたボンボンショコラです。小山シェフはこのコンクールで、2011年、2012年は2年連続で最高の「5タブレット+☆」を、今年2013年も、+☆こそ逃したものの、「5タブレット」を受賞しました。

2013年C.C.C.デギュスタシオン(コンクール)出品作品


「ふきのとう」など、昨年の受賞作の個性的な美味しさは今でも記憶に新しいところ。さて今年は、どんな驚きが待っているのでしょう。配られた箱には洗練された5粒が並んでいました。
「C.C.C.は、チーム戦だと思っているんです。だから、左から順に食べてほしい」
とシェフ。つまり、テーマである4種類を順に、ショコラ・ノワール→ショコラ・オレ→プラリネ→オリジナル作品というふうに食べてもらうと、より美味しさが引き立つということ。(ちなみにオリジナル作品は1種類または2種類という規定。小山シェフは2種類を出しています)
早速、箱の中に手が伸びそうになるところ、
「でもまだ食べないで! 説明を聞いてからかじってくださいね」
まず、今年のテーマは「化学変化」だそう。ん? 化学式でも出てくるのかしら……。
「いや、何もそんなに難しいことではないんです。口の中での味の変化を楽しんでほしいというだけのこと」
そして一粒目から説明が始まりました。


R.2013(エール・ドゥーミルトレーズ)
最初のショコラ・ノワールは、ペルー中央セルヴァ地域産、トリニタリオ種とクリオロ種を使ったカカオ分63%のショコラ・ノワールを使用。アマゾン川流域でとれたカカオで、通常よりも低い温度、2〜3倍という時間をかけて焙煎することにより、ドライプラムやプルーンのコンポートを思わせる香りが出てくるそうです。食べると心地のいい酸味もあり、カカオがフルーツであることを感じさせてくれます。ほのかなキャラメルの香り、切れのよさ。表面に施された「S」はアマゾン川を表現しています。


YAKI-MIKAN
アルファベットを読むと……、ヤキ、ミカン? そう、焼きみかんです。みかんの皮を焼くと、リモネンという油成分が浮き出し、真っ黒な皮から想像もできないほどの芳ばしい香りが。真っ黒になるまで焼かなければ出てこないという、この成分を使用しています。黒焦げのみかんの皮をクリームの中に入れて香りを移し、ほんの少しのアールグレーをプラス。カカオ分40%のショコラ・オレのミルキーな味の中からこれらの香りが優しく立ち上ってきます。あくまでも、ミルクチョコらしさを逸脱しないというのがコヤマシェフ流。丸みのある甘さで、とてもおいしい!


P.C.J〜Praline Comme cuisine Japonaise〜
なんと。万願寺とうがらしの醤油漬けをフリーズドライにし、プラリネの中に。京都生まれのシェフにとってなじみ深いこの食材を、カカオ分55%のショコラ・ノワールと合わせています。フリーズドライは、水分が少しでもあるとドライ状態から元に戻ろうとする。その性質を生かし、プラリネの中では水分ゼロの状態で閉じ込め、口の中で万願寺とうがらしの醤油漬けそのものに戻っていくという、まさに化学変化なのです。サクサクした中から徐々に万願寺とうがらしが顔を出し、醤油漬けの旨みとあの食感まで戻ってくるこの楽しさ。実際に食べて、多くの人に体験してほしい!


ミエル・トリュフ・ブランシュ
研修旅行で行ったイタリアで出会ったという、トリュフはちみつが発想の源。これを食べた時に「肉料理に合わせたい。そしてショコラを作ってみたい」と思ったそうです。すぐに、エクアドル産のカカオ70%のショコラ・ノワールが浮かび、これと組み合わせて完成したものは、なぜか最初に(使っていないのに)レーズンの香りが。その後トリュフ、遅れてはちみつの甘さがやってきます。粘度のあるはちみつは、砂糖の甘さよりも遅れて感じるとのこと。最後にまたトリュフの香りがやってきます。ショコラの力強さがはちみつの甘さとよく合っています。


ZEN 禅〜Derniere influence〜
ヒントとなったのは、シェフの行きつけの寿司屋で出される赤だし。ピリッと山椒のきいたあのお味噌汁です。シトラス系の強い香りを持つぶどう山椒の、その香りを大切にするために、あえて粉にせずに粒のまま生クリームに入れて香りを移しています。ガナッシュは2層構造に。山椒には、パプアニューギニア産のカカオ分70%のショコラ・ノワールを使用。火山灰土壌で育ったカカオは、薪を燃やして乾燥させることも多く、刈りたての草や皮のような香りが特徴です。赤味噌のガナッシュにはカカオ分38%のショコラ・オレにコスタリカ産55%のショコラ・ノワールを加えています。ピリリとした山椒の辛さと赤味噌で、まさに締めにふさわしい5粒目の味わいです。

食べ終えた後は、まさに幸福感!
今年のバレンタインには、この5粒の詰め合わせのほかに、C.C.C.3年間の作品を詰めた「THE BEST」も登場します。小山シェフファンや、ショコラ好きにプレゼントしたら、感激してもらえること間違いなしですよね。


2011年〜2013年の出品作品を一つにしたベスト版。それぞれのテーマに基づき、高い評価を得てきた3年分の作品を一挙に楽しめる


ちなみにシェフは、今年「+☆」を獲得できなかったことが悔しく、サロン・デュ・ショコラ開催中の5日間ではカカオを食べまくり、その勢いで、来年のC.C.C.出品作品の4つはもう頭の中で完成しているそうです。ぜひ完成度をあげて、「5タブレット+☆」を再び獲得してほしい! でもそこには、「人が選ぶ」という難しさがあるとシェフは今年感じたとも話していました。

来年への抱負を胸に「THE BEST」を手にする小山シェフ


さて、ところ変わってロンドンへ。
こちらで開催された「インターナショナル・チョコレート・アワーズ2013」というコンクールにもシェフは出品していました。C.C.C.に出品した万願寺とうがらしをタブレットに仕立てたものや、「ミルクチョコらしさを少し逸脱したので」とC.C.C.には出さなかった南高梅とプラリネを合わせたミルクチョコのボンボンなどの試食がありましたが、いずれも個性的。やはりバレンタイン商品として登場するのでお楽しみに。

「インターナショナル・チョコレート・アワーズ2013」のボンボンショコラ部門受賞作品2点を含んだバレンタイン向けのボンボンショコラボックス

インターナショナル・チョコレート・アワーズは、C.C.C.よりも、より産地に近い考え方で行われており、審査員も、産地やショコラの起源、品種といったことに精通している方が多いそう。シェフは、その方々と話しをすることで大いに刺激を受けたそうです。





「インターナショナル・チョコレート・アワーズ2013」のBars(板チョコ/バー)部門受賞作品


「世界を俯瞰してバランスのいいショコラティエになりたい」という小山シェフ、実は、いま頭の中は「Bean to Bar」でいっぱいだそうです。
聞き慣れないこの言葉、カカオ豆を自分で輸入し、焙煎・加工からチョコレートの製造・販売までをトータルで行うこと。着々とその準備を進めている様子がうかがえ、来年はまたすごいものを見せてくれそうです。
それにしても、グローバルに活躍し、前へ前へと進んでいる小山シェフのお話しを伺うと、世界の最先端のチョコレート事情が見えてきます。

最後にもうひとつ、ニュースが。
この12月7日に、エス コヤマのある敷地内に、子どもしか入れない子どものためのパティスリー「未来製作所」がオープンしました。子どもしか入れない? 一体どんな風になっているの? 実は、取材も撮影も、子ども記者と子どもカメラマンのみなんですって! ……というわけで、パナデリアではまだ、その実態をつかんでいない状態なのでありました(笑)

「未来製作所」の外観イメージのイラスト。ちゃんとした写真が載せられるのは、子供記者と子供ライターの取材のみ!子供記者のいないパナデリアでは、イラストの掲載となります。でも、なんだか、楽しいですよね!!


☆パティシエ エス コヤマ
 http://www.es-koyama.com/




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