いま、一番光っているショコラティエといえば?
そして、遠くても訪れたいショコラトリーといえば?
兵庫県三田市にお店を構える、小山進シェフ以外に、答えはないですよね。
なかなかお店に行かれないと思っている方も多い中、製菓材料とラッピングの通販を手がける「cotta(コッタ)」が、東京で企画したバレンタイン講習会にシェフがやってくることになりました。
チョコレートを使ったお菓子のデモンストレーションと、2013年のC.C.C.で5タブレットを獲得したボンボンショコラの試食、そして講演という3部構成で、たっぷりの3時間。言うまでもなく、予約が始まると同時に、あっという間に定員いっぱいになりました。

当日、満席の広い会場の熱気もすごかった! みんなの席に配られた試食用のショコラを、急きょいったん回収し、試食の直前まで冷蔵庫で冷やすというハプニングが起きてしまったほどなのです。もちろん、デモンストレーション中は暖房も切ることになりました。

会場となったのは「ドーバー洋酒貿易」の講習会場、この席がすべて満席に。130人の熱気は、ショコラを溶かすほどに!


この日、教えて下さったお菓子は
「ピスタチオとグリオットチェリーのブラウニー」と「スフレ フロマージュ ショコラ」 の2品。

「チョコレートケーキに近いかな」とシェフが言うブラウニーは、その通り、想像よりも軽めのお菓子で、上にのるピスタチオとともに、香ばしさを感じさせるお菓子でした。
このレシピの肝は、「どこで粉を加えるか」というタイミングだそう。あらかじめバターとチョコレートをボウルで合わせたところに粉を加えるのですが、こうすると(チョコもバターも油脂なので)油分の多いところに粉を入れることになります。油分の効果で、粉を入れてしっかりまぜてもグルテンの生成が抑えられるそう。さっくり軽めの食感が生まれるというわけなのです。

ちょっとしたコツも実は大きなポイント。納得の講習が続きます


他に面白かったお話は、使うボウルの大きさについて。わたしたちはどうしても、「次にあれも入れるし、これも入れる」と、ついつい先のことを考え、最初の作業をするボウルを大きくしがちではないですか? うんうんとみんなが頷いてくれる顔が浮かんできます。でも、場合によってそれはNG。たとえばホイッパーで何かを混ぜるとき、小さいボウルと大きいボウルではホイッパーが入りこむ深さが変わってくるので、泡立ちが全く違ってきます。きちんと深さがないとしっかり泡立たない、つまり、最初からむやみに大きなボウルは使うなと。面倒でも、その後に大きなボウルに移しかえることで、生地の状態をよりよくでき、美味しい食感につながるのだそうです。

スフレ フロマージュ ショコラ(左)とピスタチオとグリオットチェリーのブラウニー(右)


二品目のスフレ状のフロマージュ ショコラでは、メレンゲについていろいろとお話してくれました。卵白と砂糖の割合、それらを混ぜるタイミング……、「メレンゲを使いこなすと、感動する食感を生み出せる。それが面白い」と小山シェフ。

他に、チョコレートの乳化についての細かい話や、「なるほど!」と思わず頷きたくなるひと手間やコツ、そして完璧なレシピのために何度でも試作するというお話もありました。極めつけの、「お菓子作りに“なんとなく”はないんです」という言葉に大いに納得し、「お菓子屋ほど、“数字数字”の仕事もあまりないんじゃないですか。“勉強もできないから菓子屋にでもなるか”では通用しないですよ(笑)」という話には唸らされました。お菓子作りは化学であり、れっきとした理系の仕事かも?! いや、冗談ではなく、少なくともそういう意識を持っていないと、これからのパティシエはやっていかれないなと思わされました。

今回教えていただいた2品は「パティシエ エス コヤマ」でも販売中!

会場の外では、この日、小山シェフがお菓子に使った「KAOKA」のショコラの試食も並びました


デモンストレーションの後は、2013年のC.C.C.のコンクールに出品したショコラの試食です。
3年連続5タブレットを獲得したボンボンショコラを順に、小山シェフ直々の説明と共に食べられるなんて、これぞ贅沢!
「説明を聞きながら食べる。これは大切なことです。誰と食べるかも大事。そして、目の前にあるものが“世界一のもの”と思って味わう。そうしなければ味覚は上がっていきません」
この話にも大きく頷いてしまいました。

この一箱を小山シェフの説明を受けながら順番に試食していきます。もったいなくて、半分食べて半分お持ち帰りの人も多かったのでは?


ショコラの保存方法についてのお話もあったので、紹介します。買ってきたり、いただいたものをすぐに食べないときは、必ずパッケージごとラップして冷蔵庫にいれるのがいいそうです。食べる1~2時間前に、20℃くらいの部屋にそのままの状態で置き、食べる時にラップを取るようにとのことでした。
ラップは大切……、そこには小山シェフの子どもの頃のエピソードも潜んでいたのです。お父さんがお菓子屋さん、お母さんがお漬物屋さんで勤めていて、お二人が夕方、それぞれのお店から、ケーキとたくあんをお土産に持ち帰ってくることもよくあったそう。翌朝、小山少年がケーキを食べようと冷蔵庫から取り出すと……、なんとケーキはたくあんの味に(笑)。ラップは他の香りからもお菓子を守ってくれます。
ちなみに小山シェフ、黄色いたくあんを見ると子どもの頃のこの思い出が蘇ってきて、今でこそ、たくあんは食べるそうですが(子どもの時は嫌いになってしまったそう)、それでも、“黄色いたくあんの色がついたお弁当のご飯”は好きになれないそうですよ。

ボンボンショコラの試食の後は、「未来の表現者を生み出すために」というテーマで、一時間近く講演がありました。
小・中・高校での講演の機会も多くある小山シェフ。その時、どんな話をしているのかと思ったら、お菓子作りの話とは一見無縁の話からスタートするそうです。 「昨日面白いことなんかあったか?」と生徒に聞いてみると、最近の子の多くは「なにもない」と言うそうですが、しつこく聞くと、「そういえば…」とポツリポツリ話し出すんだとか。その話は、誰かが聞いてあげなくちゃもったいないほど面白いんだそう。
小山シェフが子どもの頃は、友達同士はもちろん、ご両親、駄菓子屋のおばちゃん、近所のおじさんといったまわりの人たちが、毎日起こる面白い話、すなわち小山少年にとっての自慢話(カブトムシをつかまえた、とか)を聞いてくれた。そういう状態を作ることが大切だと言います。聞いてくれる人がいるから、昨日より頑張ろうという気が起きたり(たとえばカブトムシを昨日より多くつかまえようとか)、そのためにどうしたらいいか(どんな日にカブトムシがとれるか)研究したりもする。
昨年12月にオープンさせた「未来製作所」は、子どものためのお店。子どもしか入れない。どうしたって親は、子どもから話を聞きますよね。子どもの自慢話を聞くことは、子どもをのばすことにつながるといいます。
お菓子屋になりたいからって、子どものころからお菓子を作っていれば、いいパティシエになれるなんて思ったら大間違い。作るだけなら誰でもできるようになるけれど、これからは、創作できる人にならなくてはならない。何に着目して、クリエイトしていくか。それが大事と言います。
「こんな言葉があるかわからないけれど、チョコレートにおいては、カカオの産地を知った上でチョコレートを創作していく“カカオティエ”ともいえるセンスを持った“ショコラティエ”になりたいと、自分も思っています」

話題も豊富で、話上手な小山シェフ、会場中の熱い視線を受け、未来の表現者を生み出すための講演が続きます


今、小山シェフには3歳のお子さんがいるそうです。21歳と18歳のお子さんもいらして、そのお二人はロックにはまり、ミュージシャンになりたいと言っているとか。
「僕としては、3歳の子はどうしたってパティシエにしたいわけですが、ロックに興味があるみたいで……うーん」
実はロックは、小山シェフが青年時代にはまっていたもの。好きなミュージシャンになりきってギターを弾いていたそうです。「好きなものは誰にも負けないくらいとことん突き詰めろ」、これもまた子どもたちに贈る言葉でした。誰にも負けないという気持ちが、自分のレベルを作っていく。ものづくりをしている人たちには絶対に必要な気持ちだそうです。

未来の表現者へのメッセージから、小山シェフのお菓子作りの裏側? 内側かな? が、少し透けて見えたような気がした講演でした。

最後には、「どうやって体重管理をしているんですか?」「睡眠時間は?」など、質疑応答の時間があり、充実の3時間が終了。ちなみにシェフ、6年前からトレーナーについて徹底的に体を管理。睡眠時間は「昨日も2時間くらいかな」と、とても短いのだそうです。


製菓材料・ラッピングの通販【cotta*コッタ】
 http://www.cotta.jp/

パティシエ エス コヤマ
 http://www.es-koyama.com/eskoyama/index.html





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