都立大学の「ドゥー パティスリー カフェ」でシェフをつとめていた菅又亮輔さん。あの味のファンだった、という人も多いはずです。現在シェフは、ご自身の新しいお店のために準備中なのですが、今回、cotta主催の講習会に講師として登場してくださいました!

講習会では、オリジナルレシピを実践してもらえるのはもちろん、久々に菅又シェフの味が食べられるとあって、会場はファンで満席でした。平日の午後だったので、会社のお休みをとって来た方も少なくなかったかもしれませんね。

さて、意外なことに、一般向けの講習は初めてという菅又シェフ。
「緊張しています。沈黙が苦手なので、途中でどんどん質問してください」
という言葉からスタートしました。


現在ご自身の店オープン準備中の菅又亮輔シェフ


この日に習ったのは、抹茶やベリーの色などに春を感じる以下の3品です。

フィナンシェ オ テ ベール 〜 抹茶を使った緑のフィナンシェ
マカロン フリュイ ルージュ 〜 ベリー系とホワイトチョコのガナッシュのマカロン
ヴェリーヌ アプリコ トンカ 〜 アプリコットとトンカ豆を使ったヴェリーヌ

手前がヴェリーヌ アプリコ トンカ。右奥がフィナンシェ オ テ ベール。左奥がマカロン フリュイ ルージュ。春らしい色合いの3品が並びます


まずは、ヴェリーヌから。トンカ豆を入れて煮だしたブラマンジェ、そして、アプリコットのコンポートにもトンカ豆を使います。
「トンカ豆は、日本ではあまりなじみがないけれど、フランスでは結構使います。バニラに似た甘い香りがあり、バニラのお菓子に使うとアクセントに。使い方は、そのまま入れるか、香りをもっと出したい時は刻んで煮出します」

そして、このお菓子のもう一つのポイントは、フルーツのピュレの使い方でした。フルーツのピュレは、ものによっては温度を上げると色が変わってしまいますが、温度を上げないと、砂糖などしっかり溶けないことも。そんな時どうするか? ピュレ全体から一部だけをとりだして温度を上げ、そこでしっかり溶かし、残りのピュレと合わせるそう。少々面倒そうですが、こうすると、大部分のピュレの色は変わっていないので、仕上がりがきれいになるとのこと。
「細かいけれど、お菓子作りはこういうことの積み重ねだと思っている」
というシェフの言葉に、なるほどなあ、おいしさを作るってそういうことなんだと思わされました。

ジュレペッシェアブリコ、ブラマンジェトンカ、ソースをまとったコンポートアブリコと一つのグラスの中に組み立てていきます。

試食用のヴェリーヌもたっぷりの量でうれしい!



続いてマカロンです。ドゥー パティスリー カフェの、あのおいしかったマカロンが蘇る!
作り方でユニークだったのは、最初に粉糖とアーモンドパウダーをしっかりと手ですり合わせること。ふるうだけではなく、必ず手ですり合わせて、アーモンドの油分を粉が薄く黄色に色づくまで吸わせたあと、大きめのボウルに入れるのも大切なんだそう。せっかく含んだ空気が、小さいボウルに入れてしまうとつぶれてしまうとのことでした。

手ですり合わせたアーモンドパウダーを大きめのボウルに

粉糖に、オリゴ糖入りを使うのも独特でした。純粉糖は湿気をよんで、しまった生地になってしまう。オリゴ糖入りのほうが生地がしまらず、結果的にマカロナージュの回数を減らすことができ、つまり生地の温度をなるべく下げずに作業ができるとのこと。
「生地の温度が下がり過ぎなければ、このレシピならきっとうまくいきますよ」
とシェフ。こまめに温度を測って、わたしたちに生地の状態を知らせてくれました。



色鮮やかなマカロン生地を、丁寧に絞りだし


焼きあがった生地にガナッシュフリュイルージュをサンド。試食用のマカロンがこんなにたくさん出来上がりました

焼いた生地に、ホワイトチョコレートとラズベリーやチェリー、グロゼイユのピュレを混ぜて作った甘酸っぱいガナッシュをサンドしたら、冷蔵庫で一晩休ませ、それから冷凍庫へ。冷蔵庫に入れるのは、その間に生地に水分を吸わせるためで、その後冷凍すれば1か月くらいもつとのこと。解凍の時にまた水分が出て、自然に生地にしみわたり、いい感じのしっとり感が出るそうです。
お店に並ぶマカロンにも、こんな工程があったとは。知りませんでした。



最後はフィナンシェです。
今回使ったバターは、フランスのイズニー社のものでした。焦がしバターを作っていると、広い会場の一番後ろの席までいい香りが! シェフも、
「イズニーのバターは初めて使いましたが、“これはおいしくなるなあ”と確信するいい香り。久々に感動しました。火が通って色が入ってきてもさらっとしているね。こんなにおいしいバターなら、焦がしバターにせず、そのまま混ぜてもいいかなと思うくらい」
とまで言って、イズニーのバターを絶賛しました。
そして
「これは格別フルーティーな香り」
という抹茶を使用し、そのフルーティーさをさらに引き立てるようアプリコットピュレも入れています。
生地ができたらオーブンへ。焼き上がってオーブンをあけた時の香りを想像すると、たまらないですよね。


焦がしバターはヘーゼルナッツのような香りと焦げ色になったら、すぐに火からおろして、冷水を張ったボウルに鍋底をあてて、色止めする


ひとつひとつ丁寧に薄くバターを塗った焼き型に、抹茶色のきれいな生地を絞り出していきます。焼き上がりの香りもすばらしい!


さて、質疑応答をしながら、3つのお菓子が配られました。
食べる順序からすれば、ヴェリーヌからがよいのでしょうが、バターと抹茶の香りに食欲をそそられて、気づけば濃厚なフィナンシェに最初に手が伸びてしまっていました(笑)。 口どけがよく、想像通りのおいしさです。濃厚なのにキレもよく、心地いい後味。まだまだ食べられそう。
次に、ヴェリーヌとマカロンを。ヴェリーヌは、アプリコットとトンカ豆の重なった杏仁のような優しい香りと口当たりのブラマンジェがとてもおいしい! マカロンは、持った時に、ガナッシュが柔らかいのを感じます。噛めば、生地表面のさっくり感と内側のしっとり感、そしてホワイトチョコレートのなめらかさとコクで引き立つ甘酸っぱいフルーツピュレのガナッシュ。この2つが一体となって、なんとも言えないほどおいしい!
味わいの違う3つを食べ、大満足でした。


試食3品セット。そのおいしさに、菅又シェフの新店オープンがさらに待ち遠しくなったほど!

参加者からの質問にひとつひとつ丁寧に答えていく菅又シェフ。時には笑いにつつまれる場も


参加者からは、「フィナンシェの抹茶をココアに変えた時の配合は?」「白いマカロンを作るときは何度で焼けばいいか」など、作り込んでいる方々が多いのか、細かい質問が次から次へと飛びました。シェフもユーモアを交えながら丁寧に答えていました。


今回の講習会の協賛企業「ラ・フルティエール・ジャポン」のフルーツピューレ。帰りには、お土産として参加者にひとつずつ配られました


最後にシェフからのお願い(?)で、会は終了に。
「新しいお店の場所を探すのに苦労しています。いいなと思う場所には大抵いいパティスリーがいくつもあって、大御所の方がいたりもする(笑)。こんな場所でやるのがいいのでは、とか、いい物件があります、という情報があれば、ぜひ教えてください」
とのことでした。
皆さんも何か情報があれば。
「うちの町に来てください! 毎日買いに行きます」
そんな声も聞こえてきそうですね。


菅又シェフとcottaの佐藤さんのツーショット。菅又シェフの新店オープンと、シェフズcottaの次の講習会、またどんな素敵なシェフが登場するかと、どちらも楽しみです!




panaderia topへ戻る