取材・文 佐々木 千恵美  


パナデリア主催のイベント「香りの会」で、以前スイーツ製作でご協力をいただいたパティシエ、仲村和浩さん(株式会社INTUITIONS(インテュイションズ)代表)が、2023年4月1日、パンとスイーツのお店「Think(シンク)」をオープンさせました。

場所はメトロ根津駅から上野方面にお寺の多い辺りを歩いて10分くらい。昔ながらの落ち着いた風情で街歩きが楽しい「谷根千」エリアに位置する、築80年を超える古民家を改築した「上野桜木あたり」の2号棟1階。


「Think」は、昭和13年築の日本家屋が現代に蘇った複合施設「上野桜木あたり」の2号棟1階に。


古民家だからという以上にどこか懐かしく感じるのは、ここが以前もパン屋さんがあった場所だからでしょうか(実は個人的に時々買いに行っていたので)。
しかし「Think」が展開するのはヨーロッパの街中ではよく目にする、“ブーランジェリー パティスリー” というスタイル。それは、パンとお菓子、それぞれの分野のシェフを置くことで、専門性を持ちながら、それぞれの分野を掛け合わせた商品も生み出していけるということ。以前のお店の中心にはなかったパティスリー(スイーツ)の存在が、この古民家の間口を広げた形となりました。

築80年を超える建物が持つ雰囲気を大切に、元々のしつらえや、襖など、和の装いを生かした内装デザイン。入り口を入った瞬間、栃木県の芦野石を加工した什器に並ぶパンとお菓子が目にとびこんできます。


店名「Think」は、つくることは想うことから始まる、というところから。

パンやお菓子を食べた方が喜んでくれた時の笑顔や、誰かに食べさせたいと想う気持ちを想像して、厳選した素材で一つ一つ丁寧に作り、安心できる商品を提供すること。ただ商品を製造することだけにとらわれず、そのモノの向こうにある想いを大切に考える、とのこと。


自家製酵母を使用し、国産小麦を主体にしたパン作りを担うのは、鈴木嵩志(スズキ タカシ)シェフ・ブーランジェ。仲村さんとはフランスの製菓学校の同級生で、都内有名ホテルや菓子店、パン店等で経験を積み、直前には「ガーデンハウスクラフツ」のシェフ・ブーランジェを務め、数多くの新商品を開発していました。

これまでを活かしつつ、二人で意見をすり合わせ、双方の分野を掛け合わせた商品作りは、“Back to New basic” がコンセプト。


店内でパンとスイーツを前に、鈴木嵩志シェフ(左)と仲村和浩シェフ(右)。


多くの人が親しむベーシックやクラッシックなものが、現代的なエッセンスの注入によって、新しい価値につながることを目指したパンやお菓子は、古民家をどう再生させるかにも通じるところ。新たに誕生したブーランジェリー パティスリーがどんなふうに日本らしさを表現していくのか、これからも目が離せません。


代表的なパンの紹介 

ハードブレッド:
 カンパーニュ(ホール\1,400、ハーフ\700) バゲット\280
鈴木シェフの独自製法<水種(小麦粉と水を合わせ、麹甘酒を加えて24時間以上水和させたもの)と、湯種製法を掛け合わせてもっちりでしっとりな焼きあがりのハード系。
カンパーニュは、高加水にした生地に、さらに自家製酵母のルヴァン種を加えて熟成発酵させるため、爽やかな酸味と独特のもっちり食感に、しっかり焼きこまれた外皮の香ばしさのコントラストが魅力です。ドライフルーツやナッツ入りのものはワインやチーズのお供にいかが?

焼き色からおいしそうなカンパーニュ。フルーツやナッツ入りはぎっしり。

バゲットは皮が薄めで中は瑞々しく、とても食べやすい。


食パン(1本 \800〜)
通常よりも多く水を加え、もっちりと柔らかな食感に焼き上げられた食パンは、ほとんど砂糖を加えず、水種による長時間の熟成により、小麦の甘みを引き出しています。

全粒粉食パン、レーズン食パンなどのバリエーションも。

甘みとうま味の強い小麦粉キタノカオリは三浦さんの農園から。日々食べるであろう食パンは、卵も乳も不使用。アレルギー成分を極力なくしたいからとグレープシードオイルを油脂として使い、つや出しの塗玉もなしです。これぞ「つくることは想うことから始まる」ですね。

生産者・三浦さんの小麦を使った食パン。


ヴィエノワズリー(クロワッサン\380、ブリオッシュ\280など)
ベルギー産の発酵バターをふんだんに使用し、風味よくしっとり焼き上げたブリオッシュは、歯切れよく、バターとのバランスが良い小麦粉をブレンドすることで、より一層の味わいに。
ブリオッシュは味や具材のバラエティも豊富で選ぶのに苦労するほどです。
焦がしバターを加えたクロワッサン生地は、奥深くリッチな味わい。

ブリオッシュとバリエーションなど

クロワッサンとそのバリエーションなど。


フレンチパティスリー 

生菓子
クラッシックながらも、ナックやクリームなど、リッチな味わいと、季節ごとに変わるフルーツや、他ではなかなか出会うことがないフレンチクラッシックなパティスリー(お菓子)が数種類揃います。

マルジョレーヌ(¥700)
ブランデーとシナモンを香りづけにプラス。オリジナルのマルジョレーヌは生地を湿らすためにワインセラーに1晩寝かせたフランス発祥店の製法を、現代風のやり方でしっとり香りよく作りあげたところがポイント。

タルトクレーム(¥600)
バニラの香りと間に忍ばせたプラリネがアクセントのクリーム好きにはたまらない一品。


マドレーヌ(¥230〜)
毎朝焼き上げる出来立てのマドレーヌが数種類並びます。シェフがパリで出会ったマドレーヌの美味しさを味わってほしいと、密閉袋に入れず、そのままを紙袋に包んで提供されます。発酵バターのリッチな風味とさくっとした外皮とほろっと口の中でなくなる食感は天国です。お散歩のお供に、朝食に、ティータイムにぜひ。

毎日焼き上げるマドレーヌたち。レモン、ラズベリー、はちみつ、ショコラ。


クグロフ(¥1,320)

バターの香り豊かなアルザスの発酵菓子クグロフ。さくっとした切れのある食感が意外でくせになります。


コールマンのバタークッキー
ベルギー産発酵バターの風味を生かすため、焼き色は付けずうっすらイエロー。ふわっと崩れる儚い食感。



その他、季節のフルーツのタルトや、しっかりと焼き込まれたカヌレなど、あれこれ悩みながら選べるお菓子が揃います。特別な日のためのケーキやプレゼント用のギフト菓子なども、相談してみてください。ホテル出身のシェフが力になってくれますよ。

カヌレ(¥380)


さらに、今年6月中旬頃には2階のスペースに、和風スイーツが楽しめる喫茶<雀>をオープンする予定とのこと。昭和の風情を残した隠れ家のような空間で、夏はかき氷、冬は汁粉など、ゆっくりくつろげるように進めているそうです。こちらもオープンが楽しみですね。(時期未定)



店舗概要

住所:東京都台東区上野桜木2-15-6 上野桜木あたり内 2号棟1階
通常営業時間:11:00〜18:00(売り切れ次第終了)
定休日:毎週 月曜・火曜(祝祭日は翌日に振替)
公式Instagram:https://www.instagram.com/think_tokyo/


シェフのプロフィール  

シェフ・パティシエ (株式会社INTUITIONS 代表)
仲村和浩(ナカムラ カズヒロ)氏

フランスの製菓学校を主席で卒業。
ストラスブール<ティエリー・ミュロップ>で研修。
帰国後、<サダハル・アオキ・パリ>に勤務し、製菓の基礎を学ぶ。
その後、ブライダル関連企業・個人店立ち上げ等の勤務を経て、西新宿 <ハイアット リージェンシー東京>にて、同社、最年少でシェフ・パティシエに就任。
現在、<株式会社INTUITIONS>を設立し、様々な企業・ホテル・パティスリー 等に対し、コンサルティング事業を行う。

シェフ・ブーランジェ
鈴木嵩志(スズキ タカシ)氏

フランスの製菓学校を卒業後、アヌシーで研修を積む。
都内の菓子ブランド<サダハル・アオキ・パリ>、横浜<カマストラ ベーカリー>などでキャリアを積み、フランスのパンブランド<ゴントランシェリエ>の製造・開発などを経て、西新宿<ハイアットリージェンシー東京>にてチーフとして活躍。その後、代官山などで4店舗を展開する<ガーデンハウスクラフツ>のシェフ・ブーランジェに就任。数多くの新商品を開発し、業績の向上に貢献した。





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