お菓子好きでバスクというと、たぶん真っ先に思い浮かぶのが「ガトー・バスク」だと思います。私も最初はそのイメージが強く、他の事についてはほとんど知らない状態でした。初めてバスクを訪れたのは2007年。このあたりの時期から、日本ではちょっとしたバスクブームでした。バスク豚やエスプレットなどバスク食材を扱うレストランやパティスリーが少しずつ増えてきたり、旅雑誌でバスク特集が組まれたり。
そんなこともあってバスクに対する関心がますます高まっていました。遠い遠いバスク(その当時はまだフランスの地方には行ったことがなかったので、とっても遠く感じました)一体どんなところだろう? と期待を膨らませ出発しました。バスクはフランスとスペインの国境をまたがる地域にありフランスに3地域、スペインに4地域あります。

バスクでは白い壁に赤茶色の木骨組みの建物をよく見かける

私が訪れたのはフランスバスク。バイヨンヌやビアリッツなどの賑やかなところから小さな田舎村まで、食を中心にしてめぐりました。
このレポートでは、そんな旅の様子を紹介していきたいと思います。

初回のレポートではバスクを代表するものたちを簡単に紹介していきたいと思います。
まずはやはりバスクの郷土菓子「ガトー・バスク」。
このお菓子は、パティスリーやマルシェ、スーパーなどバスクの様々なところで見かけました。粉主体の生地にカスタードまたはサクランボジャムをサンドした焼き菓子です。
生地はソフトなものからクッキーのように少しハードなものまで、お店によって様々です。
チョコレートバージョンのガトー・バスクも時々見かけましたが、基本はカスタードもしくはさくらんぼジャムというお店がほとんどでした。

ガトー・バスク バイヨンヌのサロンでいただいたガトー・バスク


スペインからフランスにチョコレートが伝わる際にバスク地方を経由したということもあり、バスク地方ではチョコレートを扱っているお店も多いです。
タブレットやボンボンショコラなどは、専門店の他にパティスリーやお土産屋さんでよく見かけました。
またバスクのお菓子でベレー帽を模した「べレ・バスク」もチョコレートが主役です。
バスク地方のチョコレートは昔ながらの素朴な味わいのものが多く、フランスで培われてきた手仕事を感じることができます。

ベレ・バスク


ボンボンショコラの種類も豊富

そして、あまり日本では知られていないですが「トゥーロン」というマジパン菓子もバスクでよく見かけます。小さいものから大きなものまで、ナッツ入りだったりカラフルに着色していたり、いくつかの色を組み合わせて模様にしたり、と様々なタイプがあります。
見た目がカラフルなものが多いので、日本人としては躊躇してしまうのも正直なところですが、チョコレートやピスタチオのナチュラルな色合いのものを選んだり、派手なものは小さいサイズを選ぶとチャレンジしやすいと思います。

大きなトゥーロン 小さい一口サイズのトゥーロン


料理関係だと、バスクといえばやはり「バスク豚」!
このところレストランでもよく名前を聞くようになってきましたね。肉そのもの以外にも生ハムやリエットなどの加工品も日本で食べる機会が増えてきたように思います。
バスク豚は頭とおしりが黒いぶち模様が入っていて、飼料の他に木の実などを食べて野山を駆け巡ってストレスの少ない環境で育ちます。

バスク豚の子豚たち


調味料としては、ピモン・デスプレットもしくは単にエスプレットと呼ばれる唐辛子が有名です。唐辛子といってもまろやかな辛さで、ハムやバスクの伝統料理ピペラードに使用されます。まれにチョコレートやトゥーロンなどお菓子に使われることもあります。

エスプレット村で見つけたエスプレットのイラスト

オッソイラティー(左)とマミヤ(右)


羊の放牧の様子


フランスの食事にかかせないのがチーズですが、急傾斜が多いバスクは羊の放牧が昔から行われていることから羊の乳を使ったチーズ「オッソイラティー」が有名です。セミハードタイプのチーズで、比較的クセがなく食べやすい味です。同じくバスクで栽培される黒サクランボのジャムを添えていただきます。
それから、日持ちしないので現地でしか食べられない「マミヤ」は羊の乳を凝乳酵素でゆるめに固めたミルクプリンのようなものです。甘くはないのではちみつをかけてデザート感覚でいただきます。

イッツァス村で見かけたさくらんぼのジャム

オッソイラティーに添えたりやガトー・バスクに使われるさくらんぼのジャムはよく朝市などでも見かけます。さくらんぼはイッツァス村が産地として有名なようですが昔に比べると収穫量は非常に少ないのだそう。今後地域の特産品として少しずつ収穫量を増やしていこうという動きがあるそうです。酸味はおだやかで色合いが黒っぽいのが特徴です。


バスクリネンのテーブルクロス ローブリューのマーク

食以外では、バスクのあちこちでみかけるバスクリネン。
もともと牛の日よけとして布をかけていたのが始まりだそうですが、現在ではテーブルクロスやキッチンクロス、ソファの張地などインテリア的要素が強くお土産でも人気のアイテムです。そしてこちらもバスクでは様々なところで見かける「ローブリュー」。風車のようなこのマークは、バスク地方の十字架です。ガトー・バスクの模様に使っているところもありますし、町中ではもちろん食器や陶器の飾り、エプロンの刺繍などで見かけました。


保養地として人気のビアリッツ 波が荒くサーフィンでも人気の地

山の印象が強いバスクですが、大西洋に面した地域もあるので、バカンスの時期はサーフィンでも人気が高いビアリッツを中心ににぎわいます。やはり海の近くはなんとなく開放的な雰囲気。山バスクと海バスクという表現を時々聞きますが、同じ地域とは思えないほど雰囲気が違うのも面白いところです。

私がバスクを訪れたのは約10年前。まだフランスについても地方菓子についても知らないことが多すぎて今とはちょっと違う自分の目線だったとは思いますが、この当時の私が感じたバスクの魅力をレポートしていきたいと思います。





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