美食の地として知られるバスク地方ですが、中でも有名な食材が「バスク豚」。最近では日本のレストランでも耳にする機会の多い食材ですね。ここバスク地方特有の品種の豚です。

そのバスク豚、以前は絶滅の危機にありました。1929年には15万頭以上いたバスク豚は、度重なる交配を繰り返し、1989年にはなんと25頭のみになってしまったという事です。
その危機を知り保護活動に動いたのが、シャルキュトリー(加工肉)職人ピエール・オテイザ氏。バスクのアルデュード村にピエール・オテイザ社を設立し、バスク豚の保護と育成を行っています。その成果もあって、2000年には1500頭、その後も着実に年間生産量は増え続けています。

ピエール・オテイザ社では、2010年にブランド名をバスク豚からKINTOAキントア豚(バスク語でアルデュードを意味する)に改め、A.O.Cの取得を目指しています。

ピエール・オテイザ社 バスク豚の看板

バスク旅では、バスク豚について知るために、ピエール・オテイザ社のあるアルデュード村に向かいました。村は、フランスバスクの中心地バイヨンヌから車で1時間ほど南下した位置にあります。

豚の数からすると広大な敷地に驚く


雨宿りしているように見えるバスク豚たち

広大な敷地ではバスク豚の放牧が行われています。この日は雨が降り、あまり遠くまでは歩き回らなかったのですが、山のようにかぶせた藁のドーム状の小屋では豚の姿を見ることが出きました。

バスク豚の見た目の特徴は、淡いピンク色の肌に、頭とお尻に黒いぶちがあること。それから耳が大きくて顔に垂れ下がっているのも印象的でした。


餌の見本

バスク豚は生まれてから2カ月は母豚の乳で育ちますが、その後はトウモロコシや、大麦、大豆などの飼料や、放牧も行われるので自然の中で栗の実やドングリなどを食べて育っていきます。


天井につるされている様々な種類のシャルキュトリー

豚を見学した後に、建物の中に入りバスク豚の加工品を見学、試食しました。
サラミやハムなど加工品のいくつかは天井からぶら下がっていて、独特の雰囲気がありました。

バスク地方イルレギーのワイン


素朴な柄が特徴のバスクの食器

肉加工品の他に、バスク地方特産のイルレギーのワインや、濃紺と赤褐色のラインが特徴のバスク地方の食器のディスプレイもありました。

瓶詰や缶詰も豊富

瓶詰や缶詰はパテやリエットなど。日持ちするのでお土産にちょうどいいですね。
ピエール・オテイザ社の缶詰は時折日本でも見かけるようになったので、そのたびに訪れたことを思い出します。


サラミと一緒に豚の人形がちょこんと(右端) バスク豚の生ハム


最後に試食をしました。サラミはプレーンなものや、バスク名物の唐辛子エスプレットを練りこんだものもあり、お酒にピッタリな味。
生ハムは脂肪が程よく入っていて、甘みと豚肉の味の濃さを感じるものでした。

ブランド豚だけあって、バスクのそのあたりのレストランにふらっと入って食べられるような食材ではないと思うのですが、またじっくり味わってみたいなと思います。最近は日本でもバスク料理のレストランが少しずつ増えてきているので、そういったお店で出会う機会も多いかもしれませんね。


ガトー・バスク

ところで豚といえば、バスク地方の郷土菓子ガトー・バスクの原型といわれるお菓子は豚の脂とトウモロコシの粉、はちみつを使って作られたといわれています。豚はシャルキュトリーとしてだけではなく、お菓子の材料としても貴重な食材だったという事が伺えますね。

ピエール・オテイザ社
 http://www.pierreoteiza.com/



イルレギーのワイン工房 看板 イルレギーのブドウ畑

バスク豚とも相性の良いワインが、イルレギーのワイン。ピエール・オテイザ社でも見かけましたが、やはりその土地の料理とお酒は自然と相性がよくフランスの地方を巡る大きな楽しみのひとつです。この旅では、「ラ・カーヴ・イルレギー」を訪れ、見学と試飲をしてきました。
ラ・カーヴ・イルレギーは、1952年に40の農家で設立されたワインの協同組合です。1970年にはフランスバスク唯一のA.O.C.ワインとして認定されました。


フランスのワイン生産地マップ


イルレギーは、スペインとの国境近く

イルレギーはスペインとの国境付近に位置し、小規模生産ながらここ数年のバスク地方の美食に伴って人気を集めています。
以前はほとんどを、バスク地方をはじめとするフランス国内で消費していましたが、現在は海外での人気も高まっているそうです。


4種のワインを試飲 上質なタンニンを感じる赤ワイン

イルレギーのワインは、赤、白、ロゼがあり、その生産量の60%が赤、30パーセントをロゼ、10%を白が占めます。
イルレギーの地は、粘土石灰質の土壌で、ワインはタンニンが多く含まれ、やや刺激的な味が特徴です。


樽の中で時間をかけて熟成させる

ワインを作るために、ブドウを収穫するのは10月初旬ごろ。雨が多い地域で育ちが遅いため、他の地域に比べると収穫が比較的遅めだということです。
ロゼは3カ月、白は6〜9カ月熟成させ、赤は6〜18カ月時間をかけて熟成させます。

もちろんブドウの種類のよって味が変わってくるため、他の土地のブドウとは一緒にせずいいものを作っていくという話が印象的でした。

最近日本でもバスク料理専門店などで見かける機会が多くなったイルレギーのワイン。
近くのボルドーワインほどどっしりとした感じはありませんが、比較的ライトな料理が多いバスク料理との相性は抜群です。是非バスク料理と合わせて召し上がっていただきたいワインです。

ラ・カーヴ・イルレギー
 https://www.cave-irouleguy.com/fr/







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