個性あふれるフランスの地方の中でもお菓子好きなら、一度は訪れてみたいと思うのが「Bretagne(ブルターニュ)」。フランス北西部半島に突き出した形で位置するブルターニュ地方はドーバー海峡をはさんだ対岸の島国からケルト系の民族 移り住んだ地域。そのためフランスの中でも特有の文化を持ち、「ブルトン語」という固有の言語が使われていました。

かつてブルターニュ地方はフランスではなく独立したブルターニュ王国、ブルターニュ公国でした。
1532年にフランスに併合され、現在では、コート=ダルモール県、フィニステール県、イル=エ=ヴィレーヌ県、モルビアン県の4県で構成されています。

それぞれの県が海に面しているためフランスの中では海の幸が豊富な地域です。
そして同じ海でも南仏の海とはまた違った雰囲気の景色が広がります。
荒々しいというか、自然の雄大さ、厳しさを感じるような気がするのです。


ブルターニュの最西端「ラ岬」 サンマロから眺める海は穏やかな景色み


ブルターニュ地方は海に囲まれていることもあり、フランスの他の地域に比べると海産物が豊富でおいしことでも知られています。いつもはフランス料理というと、やっぱりお肉がおいしい!と思い、あまりフランスで魚を好んで食べることはないのですが、ブルターニュでは違います。魚料理も食べたみたいと思わせてくれるようなお店が数多くあります。

レンヌの旧市街


私がブルターニュに行ったのは2010年。パリからTGV(フランスの高速鉄道)でまずはブルターニュの首都レンヌに向かいました。時間にして大体2時間ちょっと。日帰りでもいける距離ですね。 レンヌの旧市街は美しい木骨組みの建物が並びます。なんとなくアルザスの街並みと似ているような感じもありますが、ブルターニュのほうが全体的な色味がブラウンなのでより落ちついた印象。

大きなカニがごろごろと


カンカルは牡蠣の養殖が盛ん


レンヌの朝市では、野菜やフルーツはもちろん地元でとれた魚介類が豊富。
カニやカキ、オマール海老など、日本では高級食材としてしられているものがごろごろっと無造作にカゴの中に転がっています。
ブルターニュはフランスの北部にあるので海水温が低く、身のしまった美味しい魚介類が豊富。
そんなわけでブルターニュの旅では、いつものフランスの旅の何倍も魚介類のお料理をいただきました。

ブルターニュ名物そば粉のガレット りんごのお酒シードル


ブルターニュに着いて最初のランチはやっぱりそば粉のガレット。
ブルターニュ地方で気軽に食べられる郷土食で、そば粉と塩、水を主原料とし、薄く平たく焼きます。そこに野菜やハム、チーズなどを合わせていただきます。
そば、というと日本人にとっては麺のお蕎麦を思い出しますが、ここブルターニュでは粉状にしてガレットのような食事にしたり、お菓子やパンの材料として使っています。

そしてこのガレットと一緒にあわせるドリンクは「シードル」が定番。これもブルターニュの特産物を生かしたものです。
シードルはりんごを原料とした醸造酒です。りんごのお酒というと、甘いジュースのようなイメージですが、どちらかというとビールのような感じで甘みはあまりなくコクのある味わいで食事によく合います。

バターを木べらで叩いて整形します 大きな塊のバターを叩いて紙の袋で包みます


そして、ブルターニュといえば有塩バター。
ブルターニュの特産物に塩があります。ブルターニュの南部のゲランドでとれる「ゲランド塩」は灰褐色でうまみのつよい塩です。その塩をつかったバターがとてもおいしく、特にジャン=イヴ・ボルディエ氏が伝統的な製法で作るバターがとても有名です。
このバターをたっぷりバゲットにつけてたべると本当においしい!
ボルディエでは、大きな塊のバターを木のへらで叩き、滑らかで空気を程よく含んだ状態にして包んでくれます。


ガレット・ブルトンヌ


パレ・ブルトン

ブルターニュの郷土菓子は日本でもよく知られているものが多いですね。
バターをたっぷり使ったサブレ「ガレット・ブルトンヌ」と「パレ・ブルトン」。
どちらも製法や材料は似ていて、バターたっぷりの風味豊かな味わいです。
ガレット・ブルトンヌが薄く平たく焼いたサブレで、パレ・ブルトンが厚く焼いたサブレです。

日本だと、パレ・ブルトンが「ガレット・ブルトンヌ」の名前で広まっていますが、もともと「galette(ガレット)」は薄くて円いものを指すため、実際は薄焼きが「ガレッ・ブルトンヌ」、厚焼きが「パレ・ブルトン」です。

クイニー・アマン キャラメル・ブール・サレ

そして、こちらもバターをたっぷり使ったお菓子「クイニー・アマン」と「キャラメル・ブール・サレ」。

クイニー・アマンはブルターニュの言葉で「バターのお菓子」を表し、その通りバターたっぷりの発酵生地に砂糖をあわせたとてもリッチで甘いヴィエノワズリーです。ブルターニュの素朴な地方菓子でしたが、日本でも一時期ブームになりましたね。

キャラメル・ブール・サレはほろ苦いキャラメルにバターと塩を入れたやわらかく甘じょっぱい味。
濃厚な味なので、ブルターニュのような寒い土地にはぴったりかもしれません。


ファー・ブルトン ガトー・ブルトン

そして、もっちりとした独特の食感が魅力のファー・ブルトン。
プリンのようなアパレイユに小麦粉を加えて焼き上げます。
中にはプルーンを入れることが多く、その深い酸味が優しいファー生地のアクセントになっています。

ガトー・ブルトンは、ソフトなクッキーの様な生地にプルーンをサンドした焼き菓子。 一見ガトーバスクに似ていますが、食べてみると生地の感じもガトーバスクによく似ています。
材料はバターや砂糖、粉、卵、とベーシックなものなので、フランスの地方で作られるお菓子は自然と似てくるのか・・・と思います。
このようにブルターニュでは、素朴ながら魅力的な食文化や、自然に恵まれた美しくも力強い光景に出会うことができました。その様子をこれから皆さんにご紹介していきたいと思います。





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