ブルターニュの食で欠かせないものといえば「バター」。 酪農が盛んなブルターニュは良質な乳製品が多く、中でもバターは様々なお料理やお菓子に使われています。
また、ブルターニュは塩の産地ということもあり有塩バターを使うのが大きな特徴です。

ブルターニュのお菓子、キャラメル・ブール・サレや、ガレット・ブルトン、クイニー・アマンなども、有塩バターを使うことが多く、砂糖の甘い味の中にしっかりとした塩味を感じます。その甘じょっぱさが、もう一切れ食べたい!と、あとひく美味しさにつながっています。

レストランで提供されるバターもフレッシュ感がありびっくりするくらい美味しく、やはり有塩バターを提供される機会が多かったです。

そんな美味しいブルターニュのバターの中でも、素晴らしく美味しいと有名なのが「ジャン=イヴ・ボルディエ」。
日本でも「ボルディエのバター」と聞いただけで「ああ〜、美味しいよね!」とウンウン頷く美味しい物好きな方は多いです。

私自身は、日本の百貨店の催事で出会ったのが最初でした。
その際はボルディエ氏も来日していたのですが、実演スペースで木べらでバターを叩いて器用にくるくると動かしては円錐状に成形している姿がとても印象的でした。バターをこういう風に扱うのを初めて見たのでちょっとしたカルチャーショックでした。
その時、ボルディエさんのバターを初めて食べましたが、その味の濃さとしっかりきいた塩味のインパクトはとても大きかったです。バターはミルキーなコクがあって濃厚な味。塩は日本の有塩バターよりももっと輪郭がはっきりして塩分も強めに感じました。これはバゲットにたっぷり塗って食べたい味です。

さて、前置きが長くなりましたが本場ブルターニュでも、もちろんボルディエさんのバターを目指してサンマロの店舗に伺いました。しかし前回レポートで紹介したように残念ながらその日はクローズしていて、お店に入れず…

ただ、これだけでおとなしくボルディエバターを諦めるわけにはいきません!
ボルディエさんのお店はサンマロだけではないので私達はそこを目指してまた出発。
それから実はサンマロに行く前に、レンヌの屋内市場にもボルディエさんのお店があるのでそちらでもお菓子を頂いていたのです。


レンヌの屋内市場にて 様々な珍しいチーズがずらっと!

レンヌの朝市はとても大きな規模で新鮮な野菜やフルーツ、魚介類が豊富です。観光としてもとても楽しめるお勧めのスポットです(詳しくはレポートvol. 2で紹介しています)。
市場は屋外で開催されている以外にも屋内市場があり、そこにはボルディエさんのお店があります。日本では“バター屋さん”というイメージが強いですが、実は数多くのチーズも扱っています。写真のようにフランスにしては珍しく小さめサイズで様々なチーズを販売しています。
小さいサイズだと、色々な種類を買って食べ比べてみることもできるので嬉しいですね。
私はチーズには詳しくないのですが、きっとチーズ好きな方がみたら垂涎ものの品揃えだったのかもしれません。


バター専用の木型

ショーケースの上には、バターを整形する際に使用する木型が置かれ、販売されていました。花や鳥のデザインでとても愛らしい雰囲気です。こんな可愛いデザインのバターが提供されたらきっと皆微笑んでしまいますね。


トゥルトー・フロマージェ 真っ黒な焼き色はインパクト大!

そして、お菓子好きな私たちの目に、飛び込んできたのがこの真っ黒なチーズケーキ! そう、これはブルターニュ地方の南方にあるポワトゥー・シャラント地方の郷土菓子「Tourteau fromage (トゥルトー・フロマージェ)」。
高温で焼くことで表面を真っ黒に焦がしたチーズケーキです。本場では山羊のチーズを使うようですが、こちらは牛乳から作られたチーズを使用しているということで、あっさり癖のない味。
土台はサクサクの軽いブリゼ生地。そこにふんわり軽いチーズケーキを流して焼いています。食べてみるとしっとりふんわり優しい味で、ちょっとドキドキしていた表面の焦げは思ったよりも苦味を感じません。見た目に反してとてもやさしく穏やかな味で驚きました。

このお菓子をブルターニュで食べることができるとは思ってもいなかったのでとても嬉しかったです。
私達が外で切り分けて食べていると、ポワトゥー・シャラント出身という方から「あらまあ、こんなところにこのお菓子があるのねぇ」という感じで声をかけられました。故郷が懐かしくなってつい声をかけて下さったのかもしれませんね。


しっとりふんわり、意外に優しい味

バターを求めて、新たなショップへ

サンマロのショップが閉まっていて急遽向ったのはこちら。
白い壁に赤×白の可愛いテントが可愛らしい一軒家。2階に黄色い旗でBordierの「B」の文字が!
サンマロショップを挽回すべく一同でわくわくしながら入店しました。


バターを木べらで成形する様子

店内では大きなバターの塊をトントンと木べらで叩く女性が。
まずはこの大きなバターをそのまま室温においてあるところがカルチャーショックですよね。
日本でバターを置きっぱなしにしておけば、あっという間にてろんとだれてしまうのですが、これはやっぱり牛乳の質や気候の違いが大きいのでしょう。フランスのバターは室温においてもだれることなく保型性があります。


バターを計量 木べらでトントン叩く

一度に包装する分量をはかり、この後木べらでトントン叩きながら柔らかくしていきます。
そうするとなめらかな状態で均一な硬さになります。この後ブロックのような形に整え、包装紙でくるくるっと巻いていきます。テープなど貼らずにすむ包装の仕方で、フランスらしいエコな感じもいいですね。


テープ無しで、美しく包む技も必見

ボルディエ氏のバターは、伝統的な製法を続けているところに美味しさの理由があります。
バターを製造する過程で撹拌、熟成は時間ををかけてじっくり行ったり、マラクサージュというバターを手で練る作業を行っています。
時間も労力もかかりますが、そうしてできたバターはきめ細かくなめらかな質感。
ミルキーで濃い風味のバターに、インパクトある塩味は忘れられない味です。
ホテルやレストランからの注文も多いようで、その美味しさが多くの人を魅了していることがわかります。


包装されたバター達。美味しそうにころんとした形もかわいい

人気のバターだけあって、日本でも購入できることもありますし、パリでも購入できます。 ただ、ブルターニュでトントン木べらで叩いてもらったばかりのバターを直接購入するというのは特別な感じがしますね!
職人が伝統的な製法で作るバター。モノづくりの人間としてはやはりとても興味深いものがあります。次回ブルターニュを訪れる際には、是非製造過程を見学させてもらいたいなぁ!とまた1つの目標が出来ました。




ジャン=イヴ・ボルディエ HP
 http://www.lebeurrebordier.com/






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