「ブルターニュ」そして「スイーツ」と聞けば、真っ先に頭に浮かぶのは「アンリ・ルルー」ではないでしょうか。ブルターニュを代表するショコラティエ、キャラメリエのお店です。現在では創始者のアンリ・ルルー氏は引退し、後継者ジュリアン・グジアン氏がその哲学を受け継ぎながら新たな生命を吹き込んでいます。

アンリ・ルルー氏はブルターニュ地方の最も西に位置するフィニステール県のご出身。ご実家がパティスリーを営んでいたそうです。ルルー氏は、お菓子の道に入りその当時チョコレートの最新の技術をスイスで学びフランスで本格的なショコラティエとして活躍した第1世代ともいえます。

アンリ・ルルー キブロン本店


ブルターニュらしいディスプレイ

帰国後は、父のパティスリーを継ぎますが、その後キブロンに移り1977年お店を構えます。今回はちょうどキブロンを訪れた日が定休日と重なり残念ながらお店には入れませんでしたが、今回の目的はお菓子を習うこと。でもしっかりお店の前まで行ってきました。ショーウィンドウに飾ってあるブルターニュの民族衣装を着た人形がとても印象的でした。

キブロンを後にして向かったのは、車で40分ほど離れたランデヴァンというところにあるラボです。広々とした敷地に美しいラボが見えてきました。ひと目で「アンリ・ルルー」のラボだと分かるブラウンとオレンジのブランドカラーが青空に映えています。

ランデヴァンに構えるラボ


今回は事前にキャラメルのデモンストレーションをお願いしてありました。ラボに入る前にビニールの帽子や白衣のような形状のコートを着用し、衛生管理にも気をつけます。

ラボに向かう途中、中庭に大きな鉢植えが並んでいるのが見えました。
1つ1つ、黒板の様な立て札にその植物の名前が書いてあります。
どうやらエストラゴンやバジルなどのハーブの様です。これもショコラに使うのかしら?と眺めながらラボへ歩いて行きました。

ラボの中にはハーブが


新しく美しいラボの中には、様々なお菓子の機材がありました。
中には使い込まれたものもあり、キブロンの厨房から運んで来たのかな?と思われるものもありました。
ナッツをローストしたものを糖衣がけしキャラメリゼしたもの(プラリネ)を作る道具や、それをローラーで挽いてペーストを作る道具などが置いてありました。日本ではこういった道具はなかなか見る機会がないので、興味深々です。

球体状の部分が回転してむらなく加熱される仕組み


最初に石のローラーですり潰し、より細かくするために鉄のローラーにかけるそうです。一気に潰そうとするとナッツから余分な油が滲んでくるので少しずつ潰していく必要があるので、時間はかかりますが、自家製ならではのオリジナルの味と美味しさが生まれます。

プラリネを作るためのローラー


ラボ内には様々なプラリネのストックがありました。ショコラに使うプラリネは全て自家製なのだそう。アーモンドだけではなく、ヘーゼルナッツやくるみのもの、昔ながらの製法のものなどが並びます。プラリネだけで25〜26種類も作っているのだとか。

自家製プラリネが何種類も!


当たり前ながらラボ内では、お菓子が色々と作られていました。フロランタンやショコラなど、移動しながらもついついお菓子に目が奪われてしまいます。

フロランタン ボンボン・ショコラ


日本でお馴染みのキャラメルも、ここランデヴァンのラボで作られています。
キャラメルをカットし、包装するのは清潔な環境で機械化されています。ただ、キャラメルの仕込みだけはやはり職人の手で今でも少量ずつ作られています。

カットされたキャラメル キャラメルの包装機



今回デモンストレーションで教わったのは、夏限定のキャラメル「ピナコラーダ」。カリブ海発祥のカクテル。
パイナップル、ココナツ、ラムを組み合わせた甘くてフルーティー、とても夏らしさを感じる味です。以前ルルー氏がヴァカンス中にこのカクテルに出会ったことで、誕生したキャラメルです。

まず、鍋に生クリーム、グラニュー糖、水飴を入れて加熱します。ピナコラーダの味にするためにパイナップルピューレとココナッツミルクも加えます。ホイッパーで混ぜながら加熱するのですが、キャラメルなのでしっかり煮詰める必要があります。かなりの高熱。グツグツと煮えているキャラメルを焦がさないように、つきっきりで混ぜ続ける必要があります。しかも、煮詰まるということはそれだけ手応えも重くなってくるということ。これはかなりの力作業ですね。

キャラメルのデモンストレーションがスタート

キャラメルが煮詰まってきたところで、ラムとレモン果汁を加えます。あたりに甘酸っぱい香りが広がります。そして最後は木枠に流し入れます。金属製の型だと熱で変形するので、木製がいいのだとか。この後はゆっくり冷ましてカット〜包装という流れになります。

最後かなり煮詰まってくる 木枠に流して冷やし固める



最後、ラボに併設しているショップに行きました。
こちらは直線のラインを感じるとてもモダンな雰囲気。ショコラとキャラメルが美しく陳列されています。ディスプレイでは枯山水のようなイメージでショコラが飾られていたのがユニークでした。

ラボ併設のショップ。とても広々


ショコラのディスプレイ


今回はピナコラーダと蕎麦のキャラメルやタブレットを購入しました。特産物の蕎麦を使っているのがブルターニュらしいですね。意外性がありますがとても美味しかったです。 今は東京にも店舗を持つ「アンリ・ルルー」ですが、やはりそのベースとなるブルターニュの土地に行ったということは大切な思い出になっています。日本で「アンリ・ルルー」のお菓子を食べる度にこのランデヴァンのラボを思い出すのでした。

お土産に買ったキャラメルやタブレット





アンリ・ルルー キブロン店
  18 rue de Port-Maria 56170 Quiberon
アンリ・ルルー ランデヴァン店
  ZA Mané Craping - F-56690 LANDEVANT






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