欧には塩味のケーキがあります。塩味ケーキ 〜そういうと、フランスのケーク・サレみたいな、肉や野菜など具材を生地に焼きこんだケーキを想像するかもしれませんね。ではサンドイッチケーキといったら、どうでしょうか? 英国の、ジャムを挟んだヴィクトリアサンドイッチケーキを思い浮かべますか? でもそれはスイーツのサンドイッチケーキ。北欧でサンドイッチケーキといえば、魚介や肉類、野菜などのサンドイッチを、まるでケーキのようにデコレーションしたものを指します。

北欧のサンドイッチケーキの一例。果物やチョコレートの代わりに野菜や魚介、肉類などで味付け、デコレーションしたパーティー料理の定番。フィンランド語ではVoileipäkakku(ヴォイレイパカック)、スウェーデン語ではSmörgâstârtaスモーガストータとなります。

北欧のサンドイッチケーキは、見た目の豪華さから、結婚式、誕生日からお葬式、卒業式など、主だったパーティーに欠かせないアイテムのひとつ。見た目や用途がどこか日本の「ちらし寿司」に通じることから、北欧に行ったら食べてみたいもののひとつでした。しかし、パン屋や菓子店にいきなり行っても、ショーケースに姿はありません。そしてカフェ、レストランのメニューにも・・・なかった!
当然ですね。日本のちらし寿司だって、お祝いのために家で作るもの、もしくは専門店に事前オーダーするものなのですから。

そこで、フィンランドでケータリングのお仕事をされ、以前家庭料理を教えてくださったリータさんにお願いし、作っていただきました。事あるごとにサンドイッチケーキのオーダーが入るのよと、つぶやくリータさん。そのくらい、ケータリングの重要なメニューなのですね。

では、リータさん流サンドイッチケーキ作りを写真でご紹介しましょう。

パウンドケーキ型にラップを敷き、パンのスライスを敷き詰め、ブイヨンを塗ってしっとりさせ、ハーブ入り特製フィリングクリームを敷き、異なる種類のパンを敷き詰めていきます。パンは全部で3層に。
下になるほうのフィリングはサーモン。クリームやマヨネーズ、ハーブなどで味付け。
フィリングを隙間なく敷き詰めたらパンで蓋をしてラップでぴっちり覆い冷蔵庫で一晩馴染ませます。
食べる当日、ホイップクリームにマスタード、ハーブなどで味付けしたクリームと色とりどりの食材でデコレーションし仕上げます。


レシピも見ずにどんどん組み立てていくリータさん。さすがに何度も作っているだけあって、頭の中で自由自在に具材とフィリングのコンビネーションが生まれるそう。ケーキ同様、ナッペしたり具材をのせたりして仕上げていく様に興奮せずにはいられません。

待ちに待った試食のランチタイム、入刀すると鮮やかな断面が食欲をそそります。3層のパンは種類を変えることで色はもちろん、味や食感、フィリングとのマッチングが楽しめます。フィンランドのパンは、気泡が小さく噛んで味わう全粉粒タイプやライ麦粉、シロップの甘さを感じるタイプが多いので、クリーミーな具材とマッチするのかもしれません。ちょっと乾いたパン生地は前日に具を挟むことでパンとフィリングが一体となりしっとり。

きゅうり、トマト、ゆで卵、スモークサーモン、ディルなどで彩り鮮やか。リータさん特製サンドイッチケーキのできあがり。

甘いケーキ同様、サンドイッチケーキもカットしたときの断面が楽しみ。


次はスウェーデン語が公用語のフィンランド自治領オーランド諸島で偶然であったサンドイッチケーキをご覧あれ。

ここは島の中の小さな村のパン&ケーキ屋さん。ヨハンナスという女性シェフが、数年前にオープンした、地元素材や手づくり感を大切にした島でも評判のお店です。パンやケーキ、お店については改めて紹介するとして、ちょうど私がお店を訪ねたとき、幸運にも厨房を見学させていただけることになり、 わくわく気分で一歩入ってみると、ヨハンナスとスタッフが大きなパンのスライスを積み重ねているではありませんか! ひょっとしてサンドイッチケーキ!?

そう、彼女達はお葬式のためのサンドイッチケーキ作りの最中だったのです。あたりまえですがパンは自家製。しかも大きい! 30cm×40cmはあったでしょうか。ルヴァン生地のようなパンのスライスを広げ、溶かしバターを塗って、オニオンやハーブを練りこんだクリームフィリングで4段重ねにし、レタスやサーモン、小エビ、トマト、ゆで卵で大胆に飾りつけていました。お葬式というと、日本で言う、通夜振る舞いで出されるお寿司のような存在なのでしょうか? なんとなく親しみが涌きます。食べてみたかったけれど、人の特注品なので残念! 味を想像しながらその場を去りました。

ヨハンナスの厨房ではサンドイッチケーキの仕込みの真っ最中。

フリルレタスをサイドに、サーモンをトップに配置。

最後まで見学できなかったけれど、完成形に近い形がこれでしょうか。

ヨハンナスはリータさんのように型は使わず、そのままパンとフィリングを積み重ね仕上げていきました。このように、サンドイッチケーキのレシピにかしこまった決まりはないようです。四角でもいいし丸型にするもよし。パンも好みや具材との組み合わせを考えて選べばいいのです。パーティーで盛り上がること間違いなしのサンドイッチケーキ、日本に広まってもおかしくないと思うのですがどうでしょう!?


こでお試しに、日本でも簡単に作れる一人分のサンドイッチケーキの一例を紹介します。パンは大きな気泡のないタイプがおすすめ。薄いのでパン屋さんにスライスしてもらうと楽です。フィリングのクリームやハーブなどの分量も数字にとらわれず、好みで加減してください。

ちいさなサンドイッチケーキ

材料:(直径6cm 4個分)
シリアルライ麦パン(1cmスライス)4枚
全粒粉パン(1cmスライス)4枚
パンオレ(1cmスライス)4枚
ボイル小エビ約60g
生クリーム(34%ホイップ)約40ml
サワークリーム約10ml
ディル(粗みじん)2〜3本くらい
スモークサーモン約50g
マヨネーズ約40ml
レモン汁小さじ1/2くらい
チャイブ又は細ねぎ(粗みじん)大さじ1〜2
スモークサーモン(飾り用)4枚
ミニトマト4個
ゆで卵、飾り用ディル、マヨネーズなど

作り方:
1)パンは直径6cmにセルクルで抜いておく。
2)小エビはナイフで5mm角くらいに細かく切り、ホイップしたクリーム、サワークリーム、刻んだディルを加え混ぜ味を調える。
3)スモークサーモンをレンジで1〜2分加熱し、細かく裂き、マヨネーズ、レモン汁、チャイブを加え混ぜ味を調える。
4)お皿に直径6cmのセルクルを置き、シリアルライ麦パンを敷き、3)の具を1cm弱の厚さにならし、全粒粉パンをのせ、指でぴったり押さえる。さらに2)の具を同じように1p弱入れならす。パンオレで蓋をしてぴったり押さえたら、セルクルを外す。
5)トップにマヨネーズを薄く塗り、飾り用のスモークサーモンをお花のように飾り、ディル、ミニトマト、ゆで卵などで飾る。
6)お皿に盛り、ナイフ&フォークでいただきます。


ちいさなサンドイッチケーキの仕上り例。ピクルスなどを添えて。



いかがですか? もちろん大きく一台に仕上げてもOK。フィリングはこの他、クリームチーズ、カッテージチーズ、ハム、チキン、きゅうり、紫玉ねぎ、ポテトサラダなど自由自在。トッピングにいくらやスプラウトなど、ぜひ身近な素材で試してみてくださいね。なにしろ北欧に行っても、食べるチャンスがないかもしれないメニューなので!








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