トックホルムやヘルシンキなど大都市はともかく、北欧ではパン屋、ケーキ屋&カフェは女性が営む(または製造に携わる)ことが多いように感じます。日本でも女性のパン&菓子職人など珍しくありませんが、20年くらい前まではこの職種は男性のものでしたよね。でも北欧の場合、それよりずっと昔からの気がするのです。はっきりした理由は知りませんが、パンやお菓子を焼くのは家の女仕事だったからかなと想像しています。というのはオーロラ目的で行った20年前のスウェーデン北極圏のパン屋でも、平たいパンを焼く女性職人の姿を見ましたし、野外博物館でパンを焼くのも女性だったからです。

スウェーデン北極圏ユッカスヤルビのパン屋で、丸い薄焼きパンを焼く女性職人(1994年)。このパンはバターをつけたり、ハムや野菜などをくるっと巻いて食べると美味しい。

オーランド島にある野外博物館の薪窯でパン焼きをする女性。焼きあがったパンは販売されている。

スウェーデンには昔、カフェレップ Kafferepという習慣がありました。それはコーヒータイムに友人を集めて自慢のお菓子を何種類も振舞い、おしゃべりを楽しむというものです。そしてシナモンロールをはじめ、7種類のクッキーやケーキなどを何度も作るうちに、新たなレシピも生まれていったそうです。共働きが当たり前となった今、カフェレップはフィーカ Fika(コーヒーの逆さ読みが語源)というもっと気楽なコーヒーブレイクに変化し、パンやお菓子はお店で買ったりカフェで楽しんだりすることが多くなりました。豊富な種類のスウェーデン菓子は、このような習慣から女性達によって作られていったのではないでしょうか。

今回はスウェーデン本土ではありませんが、かつてはスウェーデンに所属していたオーランド島の、女性が手がける素敵なパン・ケーキ&カフェをご紹介します。

前回のサンドウイッチケーキで取り上げたヨハンナス・ヘムバクタ Johannas Hembaktaは島でも評判のパンとお菓子の店。地元の粉や素材を使い、パンやお菓子を愛情いっぱいに作っています。昔の風車小屋のある小さな村にブレツェルの看板を見つけたら、そこがヨハンナス・ヘムバクタ。かわいらしいインテリアの店内に、パンとお菓子が立体的に並べられ、食指が動きます。

通りには可愛らしいブレツェル形のパン屋の看板が。
入り口壁にはお店のロゴの入ったメニュー。サワー種のパン、シナモンロールに・・・。
オーランド島ではこの丸くて平たいHemvetebrödが、普段の伝統パン。

熟成させて食べるオーランド島名物の黒パン(手前)と、編みこみパン(奥)。

プリンセストータも緑に着色していないマジパンを使うなど、ナチュラルを意識しているようです。

焼きあがった小型パンたちはラックのまま売り場へ。

弾力があり、カルダモン、シナモン、甘さ、全てがJUSTバランスのシナモンロール!



お店の建物入り口にもブレツェル形看板。

ハートが貼られた大型のパンは、心掴まれる味わい。



Hemvetebrödを使った店内ディスプレイ。



フルーツの入ったパン、オーランドパンケーキ、レモンのムースケーキ・・・。



カフェでレモンのムースケーキとクッキーをコーヒーとともに。



厨房ではシナモンロールの成型が行われていました。



店主のヨハンナさん。スウェーデン語を話すフィンランド西部の町から移り住んで、数年前にJohannas Hembaktaをオープン。


迷いに迷って、レモンのムースケーキとクッキーをコーヒーと共にいただきました。スポンジ生地にレモンムースの組み合わせは口当たりも軽く、夏にぴったりのさわやかな酸味。持ち帰りにしたシナモンロールやオーランド黒パンも、フルーツ入りの食事パンも、サワー種パンも、どれをとってもどんどん食べ進んでしまう。さすがに島内の食品セレクトショップ数店で取り扱いされるだけのことはあります。彼女のパンやお菓子の虜になった島民は多いでしょうね!

◆Johannas Hembakta
 http://www.johannashembakta.ax/index.html


次は島の玄関町マリエハムンにあるバーガステューガンBagarstugan Cafe & Vin。北欧では単にパン屋・ケーキ屋というより、カフェと一体になったお店がほとんど。スープやサラダなど軽食もいただけるのがうれしい。お店は町の中心にあって、ひっきりなしにお客さんが入ってくる人気店。並んでいる間にケーキもどんどんなくなっていきます。丸型を放射状にカットし、フルーツやクリームで飾ったケーキは、どこか懐かしい洋菓子のよう。特にスポンジに生クリームと夏のベリーをデコレーションしたサマートータなど、日本のショートケーキみたい!

北欧の赤い塗料の壁に、白い窓枠、鋳物の看板がかわいいバBagarstugan Cafe & Vinの外観と入り口。1866年創業のパン屋は、マリエハムンで二番目に古い建物だそうです。

アンティークのキッチンストーブに並べられた焼き菓子とシナモンロールなどの菓子パン類。

最後まで悩んで隣の方に撮らせてもらったシーバクソンのメレンゲタルトHavtorns-marängpaj。シーバクソン(クロウメモドキ)は強烈に酸っぱいから、レモンパイのようなスタイルにしてあるのだと思います。

キュートな書体の壁掛けメニューに‘オーランドパンケーキAlands pankaka’を発見!

アンティークをキュートにコーディネートした店内。ストーブの前の竿には、乾燥させて保存する北欧の伝統的なライ麦パンが。





冷蔵ケースには、ベリー類を飾ったサマートータsommartårtaや定番のチョコレートケーキなど6種類ほどが並ぶ。





選んだのは女王のチーズケーキDrottning-cheesecake。ブルーベリーとラズベリーをミックスしたものはドロットニング(女王)と呼ぶのだそう。





追加でオーダーしたオーランドパンケーキ。温めて出てくるので番号札をテーブルに置いて待ちます。黒い粒々はカルダモン、トッピングはプルーンのコンポートとたっぷりの生クリーム。ボリューム満点です。



チョコレート系もショートケーキ系も捨てがたいけれど、ここは女王様のチーズケーキDrottning-cheesecakeをチョイス。北欧ではチーズケーキはとてもポピュラー。ベリー&クリームチーズの組み合わせは鉄板。しかも土台のビスケットには、シナモンなどのスパイスが使われていて、甘い、酸っぱい、スパイシー、なめらか、香ばしいと、調和の取れたおいしさです。

このお店の店主やシェフが女性なのかはわかりませんが、私が見た限りは女性スタッフばかり。キュートな店内やあたたかいサービスから、自宅に招かれたような気分になりました。女子力を感じずにはいられません。

◆Bagarstugan Cafe & Vin
 http://www.bagarstugan.ax/English.html


球にはこんな絶景もあるのか!?と、息を呑むようなドライブルートがここオーランドにはたくさんあります。北部イェタGetaにあるエネボ・ハントワーク&カフェEnebo Hantverk & Caféは、いくつもの群島をつなぐ橋や、車ごと移動する渡し船でアイランドポッピングをしながらたどり着く、とっておきの場所でした。

りんご畑や羊の放牧、船付き小屋・・・のどかでファンタスティックな景色は、自然と人の手が作り上げたもの。

オーランドパンケーキの注文を仕上げるクリスティーナさん。



赤と青のパッチワークが映える。ここはハンドクラフトのお店でもある。

北欧らしいデザインの装いにオーラが!


お店に入ると、店主のクリスティーナさんは丁度オーランドパンケーキのオーダーを仕上げているところでした。リネンやトレー、コーヒーのケトルから彼女の装いまで、小物ひとつひとつに雰囲気があって萌えちゃいそう! 聞けばクリスティーナさんは夏の間カフェを、冬はキルトやニットを編むクラフト作家なのだとか。だから独特のセンスを持っているのですね。ある意味、昔ながらの女性の家仕事を現代風に行っている感じです。せっかく心地よい場所なのに、この時は時間がなく、すすめられた自家製エルダーフラワードリンクが飲めなかったのが残念・・・。

◆Enebo Hantverk & Café
 http://www.aland.net/enebo/enebo.html



気がつけばこの島名物のスイーツ、オーランドパンケーキはどのお店も作っていますね。見かけはだいたい同じですが、味はそれぞれ微妙に違うのでしょうか? 

このほかにも女性の手がけるお店はたくさんあります。それはまた次の機会に!






旅日記・トップに戻る