ーンホルムBornholmのおいしい旅、今回はバスで巡ってみた島のことを紹介します。

ボーンホルム島には東西南北所々に小さな町や名所があるのですが、路線バス網が意外と充実しているので車がなくてもある程度まわることができます。夏の観光シーズンは特にですが、メインルートを走るバスは1時間に1本と、次の目的地の移動にも丁度よい間隔で走っているのです。






窓辺はまるでおとぎの国 〜ボーンホルム島・レンネの伝統的な建物。


バスのチケットについても宿のマダムからアドヴァイスをもらいました。一か所をじっくり見る、そんなに遠くまで行かないのなら、乗車距離によって使う枚数が決まる回数券のようなチケットが断然お得で、島一周とか、あちこち移動してまわるならフリーパス(24時間券など)にすればよいとのこと。私はすでに目的地が何か所かあったので、24時間券を購入することにしました。
マダムの用意してくれた朝食をいただいたら出発です。

その朝食、デンマークでは一般的にどんな感じなのでしょうか?

「パンにクリーミーハバティなどのスライスチーズをのせ、その上にいちご等のジャムをのせて食べます。それからミューズリ、ヨーグルト、ハムなどもいただきますよ。」とマダム。

この日は彼女の農園で収穫したベリー類を使った手作りのRød grød med flødeも出してくれました。発音は何度聞いても聞き取れないほど難しいのですが、意味は単純で‘クリーム添えの赤いおかゆ’。デンマークの典型的なデザートで、ラズベリー、グロゼイユ、いちごなどの赤いベリーに軽く火を通し、でんぷんでとろみをつけた‘おかゆ’に、液状の生クリームをかけまわして食べます。泡立もしない生クリームを大胆にかけるなんて、ちょっとびっくりしましたが、食べてみるとよく混ざり、ちょうどよいゆるさ。酸味のあるベリー類とクリームの組み合わせは文句なし。何でも食べてみないとわかりませんね。


レンネの宿B&Bでいただいたデンマークの典型的な朝食。マダムの友人お手製のパン、コーヒー、チーズ、ミューズリ、自家製ジャムなど。

パンにはバター、クリーミーハバティ(チーズ)のスライスにジャムをのせる。ジャムをパンにのせる朝食なんてスウェーデンではありえなかったこと。ここが食べ方の分水嶺か!?

デンマーク語の発音は世界一難しいというのは、このRød grød med flødeを例にとれば納得。生クリームを直にかけて食べるポピュラーなデザート。似たものがドイツにもあるから、きっと影響を受けあったのでしょう。

さあ、朝食を済ませ、レンネのバス停から島内バス旅のスタートです。

ホーンホルムの路線バスサイト〜BAT
  http://www.bat.dk/forside/


じめに目指したのは島の南東、Aakirkebyという町。ここにあるLEHNSGAARD(リンスゴー)という菜種オイルとマスタードを製造するメーカーを訪ねるためです。日本では揚げ油のイメージが強すぎて特に注目されることのない菜種オイル。私もそう思っていました。ところがLEHNSGAARDのコールドプレスオイルを味見して180度考えが変わりました。アスパラガスや青草のような香りとすっきりした後味がエキストラヴァージンオリーブオイルに通じるのです。それまでサラダはオリーブオイルで、と決めていた私は、以降LEHNSGAARDの菜種オイルをレパートリーに加えました。キュウリやラディッシュを和えればいっそう瑞々しいサラダになるのです。

一方マスタードはフレンチマスタードと違って酸味は穏やかで甘いのが特徴。和がらしのようなツーンとした辛みもほぼありません。でもふくらみのある味はハムやお肉、お魚にとてもよく合います。LEHNSGAARDのマスタードは種類も豊富。カレーマスタードなんていうのもあって、これがまた格別なのです!

バス停から歩いて5分、畑に囲まれた平原にLEHNSGAARDの工場はありました。中に入ると入り口付近には製品見本と販売所、その奥に出荷を待つ商品の棚、その向かい側にはガラスに囲まれた瓶詰ラインがあり、きびきびと瓶詰する人がたった一人。何分か経ってようやく一人の男性が出てきたので気になる製品を買うことができました。とても忙しいところ、恐縮しながら製品の使い方などをたずねると、こう答えてくれました。

「ぼくの奥さんはオリーブオイルが苦手でね、だから料理にはいつもコールドプレス菜種オイル、オリーブオイルにも負けない最高の調味料なんですよ。」

数年前、北欧のスターシェフ達が来日した際、講習会で「ラプスオイル(菜種油のこと)」を何かと使っていたのを思い出しました。

それからちょっと気になるマスタードを発見。北欧の人が大好きなスパイス、リコリスで風味づけたマスタードはどうやって食べるのでしょうか?

「リコリスマスタードは鶏肉との相性が抜群です。ぜひマスタードで鶏肉をマリネして焼いてみてください。」

それは簡単だし、食べてみたい。帰国後作ってみると予想以上の美味しさ! 家族も友人たちも同じく目を丸くしていました。マスタードでマリネして焼くというのは、BBQの発想でしょうか。北欧の人たちはBBQが大好きですからね。


LEHNSGAARD(リンスゴー)という菜種オイルとマスタードを製造するメーカーの製造工場。衛生管理された建物らしく窓がほとんどないシンプルなつくり。

工場へ向かう道沿いにかわいい鋳物オブジェ発見。なんの会社なのでしょうか?

LEHNSGAARDでオイルやマスタードの使い方を教えてもらった。残念ながら工場見学は受けていなかったのですが、製品販売はしています。スーパーより割安でしたよ。

LEHNSGAARD(コールドプレス菜種オイルとマスタード製造メーカー)のサイト
  http://www.lehnsgaard.dk/


に向かったのは南東部海沿いの町Nexø(ネクセ)。ここにはチョコレート屋さんと燻製塩を作る燻製小屋があるのです。Aakirkebyを出発すると、ほどなくして車窓からワイン(ぶどう)畑が見えたのでもしやと思ったら…やっぱりワイナリーではありませんか! スウェーデンのゴットランド島にもワイナリーがあることを考えれば、さらに南のボーンホルム島ならあってもおかしくありません。後で調べてみたら、ワイナリーの名前はVingården Lille Gadegårdで、ガイドツアーやテイスティング、食事のできるカフェもあるようです。途中下車するタイミングを逃し残念!

惜しいといえば、余談をもうひとつ。このワイナリーあたりから南下した海岸沿いに、コペンハーゲンから、または海外からわざわざ食べにくるガストロノミックなレストランKadeau(カドウ)があります。どうせならここで食事をしたかったのですが、夏のピークシーズンを過ぎるとランチは週末のみになり、スケジュールに組むことができませんでした。島の食材をふんだんに盛り込んだ美しいお皿の数々…今度訪れることがあったらきっと!


島のス―パーでもVingården Lille Gadegårdのワインは売っていました。大きいサイズしかなく、さんざん迷って買いませんでしたがやっぱりどんな味わいか気になります!

Vingården Lille Gadegård(ワイナリー)のサイト
  http://a7.dk/

Kadeau(レストラン)のサイト
  http://www.kadeau.dk/



話しは戻ります。Nexøの手前で降り、チョコレート店へ。住宅街の静かな通りに位置するお店の名前はKjærstrup(ケアストゥプ?)。黄色い壁のかわいらしい建物で、店内には板チョコ、ボンボン、ココア、スプレッド、ミューズリなどのチョコレート製品がずらり。しかしこのお店の看板商品は、Flødebolle(フルーボル)と呼ばれるマシュマロにも似た食感のソフトメレンゲにチョコレートをかけた、デンマーク人が大好きなお菓子。
そして夏はこの4種類あるFlødebolleに、ソフトクリームを絞りトッピングでアレンジしたお店オリジナルのFlødebolle soft iceがおすすめなのだとか。周りのお客さんの注文もFlødebolle soft ice。これは食べずにはいられません!
ベースのFlødebolleは、クラシック、ココナツ、ラズベリー、リコリス&ホワイトチョコレート。これにバニラソフトとトッピング違いで5種類。ベリー好きの私はラズベリー&ラズベリーソーストッピングをいただきました。冷たいソフトクリームと、舌にほわっと温度を感じるメレンゲ、チョコレートのパリッと感と甘酸っぱいソースが不規則に混ざり合い、ちょっとしたパフェを食べている感覚。チョコレート自体はベルギー産なので全体的に親しみやすい味でした。


チョコレート店Kjærstrupの店先看板は自転車置き場になっている。

白とパステルブルーでまとめられた店内。様々なチョコレートものが並ぶ。

北欧といえば、やっぱりリコリス系チョコレート。バラエティに富んだリコリスチョコレートを見ると、思わず手がのびそうに。

センターに詰め物をした、いわゆるプラリネ(ボンボンショコラ)は、大きめでミルクやホワイト率が高い。北欧の人たちは甘いチョコレートが好きなのです。

KjærstrupでいただいたFlødebolle soft ice。注文を受けてからスタッフが奥で作ってくれます。

Kjærstrupのある住宅街で発見。園芸品や雑貨の無人マーケット。ちゃんとお金を入れる金庫も置かれています。平和な島です。

Kjærstrup(チョコレート店)のサイト
  http://www.kjaerstrup.dk/


びバスに乗って北へ、東海岸の港町Nexø(ネクセ)で下車。目指すはNexø Gamle Røgeri(ネクセ・ガムル・ロエリ)です。前回も登場した Røgeri(ロエリ)とは、ボーンホルム島特有の燻製小屋。伝統的には主にニシンを燻製するところからはじまり、今では様々な物で燻製品を製造し、販売、そしてそれらを提供するカフェレストランを併設しているところがほとんどです。
私がここを訪ねたのは食事をするためではなく、燻製をかけたお塩の作られた小屋が見たかったから。日本で味わったNexø Gamle Røgeri製の燻製塩は、瓶の蓋を開けた瞬間、燻されたウッドチップの香りが鼻を抜け、その余韻にずっと酔えるほど感動的。他の燻製塩とはまるで違う、そこに燻製小屋が見えてくるくらい立体的でナチュラルな美味しさです。


Nexø Gamle Røgeri(ネクセ・ガムル・ロエリ)へ行くには、Nexøの中心街からさらに先のバス停が近い。

燻製品売り場と工房は直結していて、出来立てラックごと並べられる品も。


お店の男性に声をかけました。
「日本であなたの燻製小屋のお塩を食べてとても気に入ったのでここまで来てしまいました。」
すると男性は厨房にいるオーナーらしき方にそのことを伝えに行きました。
「ようこそ! 日本から来るなんてうれしいじゃないか。うちの燻製窯を見ていきますか?」

陽気なNexø Gamle Røgeriの方々の案内で、燻製の現場をちょっとだけ見学できることになりました。ニシン、サバ、サーモン、海老、うなぎ、魚のミートボール等々‥。種類によって温度の高いスモーク(60℃から80℃の温燻)と低温スモーク(20℃くらいの冷燻)に分けているそう。きつね色のサーモンは温燻、お刺身のように透き通ったサーモンは冷燻と、両方作るお魚もあります。ちょっと驚いたのはうなぎのスモーク。デンマーク人もうなぎを食べるのか聞いたところ、本物は希少で高価なのでクリスマスなど特別なときに食べて、普段食べるのはサメの身で作ったイミテーション。食感が似ているのだそうです。日本の‘かにかま’的発想!?に思わず笑。そして例の塩は、72時間かけてゆっくり煙をまとわすのだと教えてくれました。

ニシンの燻製を手にポーズをとってくれた。

サーモン。これはホットスモーク(温燻)。日本ではあまり見かけないけれど、北欧ではとてもポピュラー。サンドイッチによく合います。


これが噂のスモークソルト。職人が状態を見ながら作っていました。


真ん中手前の細長いのがイミテーションうなぎスモーク。写真にはありませんが、ちゃんと本物のうなぎスモークも作っていましたよ。


見学したら、殻ごと食べられるという温燻を1時間かけた海老を食べてみたくなりました。海風を感じながらむしゃむしゃ、たまりません!

殻がやわらかいから、丸ごと食べられるスモークシュリンプ(海老の温燻)。これで1人分!

この後は海岸沿いをさらに北上してSvaneke(スヴァネケ)へ向かいます。続きは次回ご案内しましょう。


Nexø Gamle Røgeri(燻製小屋)のサイト
  http://www.n-g-r.dk/

ボーンホルム島の案内サイト
  http://bornholm.info/en





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