テーマ:クリスマスのパン

〈作るパン〉
(1) シュトーレン2010 “ジャポネ”
(2) ボジョレーヌーヴォーを楽しむパン
(3) 飾りパン(ヘクセンハウス)



パナデリア石窯パン教室の12月の特別レッスンは、クリスマスのパンです。
華やかなデコレーションケーキが主役になりがちなクリスマスですが、最近では、シュトーレンやパネトーネなどの発酵菓子もクリスマスを迎えるために欠かせないアイテムになってきました。
そこで今回は特別に、「ブーランジェリー ラ・テール」の新作「シュトーレン2010“ジャポネ”」を教えていただくことになりました。さらに、パーティや人と集まる機会の多いこの時期にぴったりの、ワインを贅沢に使ったパン、そして、憧れのヘクセンハウスも教えていただきます!



「皆さん、よろしくお願いします」
講師をお願いするのは、パナデリアの石窯パン教室ではすっかりお馴染みの「ブーランジェリー ラ・テール」栄徳先生。粉はもちろん、色々な素材に独自のこだわりを持つ先生だけに、今回はどんなクリスマスのパンができあがるのか楽しみです。

栄徳先生、今日もよろしくお願いします!


「今年のシュトーレンは、国産小麦や国産のドライフルーツを使っています。メインになっているのは、国産ピオーネのセミドライ。これがとてもおいしかったので、なんとかいかそうと試作をし、この配合にたどり着きました。やはり国産ならではの繊細さがあるので、国産の柚子ピールや伊予柑ピールを使って、少し淡めの味わいに仕上げています」

レーズンの5倍はありそうな、大粒のピオーネ!まだ、みずみずしさが残るセミドライの状態で、甘みも濃厚!レーズンとはひと味違う、フルーツ感のあるおいしさです


国産のピールは、安全面はもちろん、おいしさも格別!


「それから粉は、北海道産の“キタノカオリ”を使います。独特のもちっとした食感が出るんですよね。なので、たくさん入れるのではなく、中種用として(30%)使います。もっちりとしながらも、口の中で溶けていく感じをイメージしているんです」
さすがは、栄徳先生!シュトーレンだって、粉の味や食感にこだわって作ります。

まずは、キタノカオリと牛乳、
セミドライイーストで中種を作ります


「一般的にシュトーレンには2タイプあります。ミキシングを長めにして途中でバターを入れていくタイプはパンらしい食感に、また、砂糖とバターをふんわり泡立ててミキシングを少なくするとパウンドケーキのようなお菓子に近い食感になります」
今日のシュトーレンは後者のお菓子に近いタイプ。中種を作ってホイロに入れたら、さっそく、バター、砂糖、塩を入れビーターでミキシングを開始します。

捏ねあがった中種はホイロへ。目安は、イーストが動く状態になるまで。20分ほど入れておきます


白っぽくなったら、卵を加え、さらにスパイスや粉類を。中種は、手で少しずつちぎって入れておきます。
「スパイスは、シナモン、ナツメグ、カルダモン。ピオーネをいかすため、きかせ方は弱めにしています。本捏ねの際は、ホワイトサワーとルヴァンリキッドも入れて。これでぐっと風味が増しますが、ない場合は牛乳に置き換えても大丈夫ですよ」

乳風味と相性がいい、ホワイトサワー



イエス・キリストのおくるみの姿をあらわしたとも言われるシュトーレン。その成形には色々な方法がありますが、今回は型入れと手成形の2種類で作ります。
「型成形の場合、少し詰まってきめ細かい食感になります。均一なボリュームに焼き上がるのも利点ですね。一方、手成形の場合は、少しボリュームが出て、ふんわりとした食感になります」
最近、増えているのが型を使ったシュトーレン。見た目も美しく、個体差がないので、お店では重宝するようです。

フタをして焼き上げるので、パン・ド・ミと
イギリスパンのような違いが生まれます


40分ほど一次発酵を取ったら、分割してすぐに成形します。
ところで、いったいどうやってあの形にしているのでしょうか?では、ちょっと成形の手順を見てみましょう。

平らに伸ばして、ピオーネを3粒ほど並べます
ピオーネを包み込むように折り返し、さらにピオーネを並べます
もうひとつ折り込んだところで、棒が登場
ギュッと押さえつけます
最後の部分を折り返して完成です!


一方、型入れはピオーネを巻き込んで成形し、型に入れるだけ。これは簡単です!

表面を平らにならせば完成です


「ホイロに入れ40分ほど発酵を取りますが、少し膨らめばOK。1.2〜1.3倍のイメージです」
表面に卵を塗り、窯に入れて30分ほど焼成します。

発酵後の生地。ほんの少しふっくらした印象です


丁寧に卵を塗ります


あとは、焼き上がりを待つばかり。
・・・ではないのがシュトーレン。焼き上がってからが、シュトーレンのおいしさの決め手となるといえるかもしれません。

ジャ、ジャーン! カルピスの有塩バター6本分(2.7kg)を溶かして使います!


バターは、コトコトと煮てからペーパーで濾すと、キレイな金色の澄ましバターに。この方が、日持ちもするのでオススメです


そうです、クリスマスまで毎日一切れずつ食べるシュトーレンには、日持ちが重要!保存性を高めるために、バターと砂糖でコーティングするのです。

バターが染み込みやすいよう、ピケも忘れずに!


焼立てアツアツのシュトーレンをバターのお風呂へ!まわりの部分にバターがじんわりと染み込んで、表面がコーティングされます。
「バターに2回浸す場合もありますが、このシュトーレンは生地の味わいが繊細なので1回だけ。お店によっては、浸さずに刷毛で塗るところもありますよ」

バターのお風呂にドブンッ!リッチな味
わいの裏には、こんな秘密があるんです


粉糖をたっぷり振って完成です。

バターと粉糖が合わさって層になり、
生地をしっかりコーティングしてくれます


出来上がりはこんな感じになりました! 中には、贅沢にピオーネが入っておいしそう。

シュトーレン2010 “ジャポネ”

しっとり、きめ細かいケークのような食感。全体をやさしく包み込んだバターの風味を、柚子と伊予柑の爽やかな酸味が、心地よく引き締めています。ピオーネの香りもエレガントです!





続いては、ワインにぴったりのパンを作ります。
「本当の名前は、“パン ボジョレー ロゼッタ”。フランスでは、ボジョレーヌーヴォーと共に、これを食べるんだそうですよ」
実は、このパンはフランス人ブーランジェの直伝だそう。本場の味が楽しめそうです。

配合を見ると、意外にシンプル。粉(タイプER)にボジョレーヌーヴォー・・・、あれ?水がありませんが・・・?
「水分はすべてボジョレーヌーヴォーなんです。生地に60%入ります」
さすがはフランス直伝のレシピ!本当にワインは水の代わりなんですね。

軽やかなテイストのボジョレーヌーヴォーを
使って。さて、どんなパンになるのでしょう?


「サラミはできるだけおいしいものを使うこと。だた、フランス産のサラミは日本で入手不可能なので、イベリコ豚を使ったサラミを用意しました」
なんと、フレンチのシェフに聞いて、フランス産に一番近い味わいのものを用意してくれたとのこと。熟成がしっかり進んでいて、ワインに合いそう!

今回のセレクトは、スペイン産“サルチチョン・イベリコ・ベリョータ”。濃厚な旨みが押し寄せてきます



惜しげもなくワインを注ぎます。酵母は、インスタントイーストとルヴァンリキッドを使用しています
生地のイメージとしては、フランス生地に近い状態。生地が出来上がったら、サラミを加えます
みずみずしくツヤのある状態になりました。鮮やかなワイン色が美しい!


間にパンチを入れて、約90分。発酵が終わったら、分割します。

そっとたたむようにパンチします


「ひとつ30gに分割したものを10個作ってください。これを、ブドウの形に成形していきます」

かなり小さな丸がたくさん出来上がりました


ベンチを取ったら、軽く丸めなおし、天板の上にブドウのように成形していきます。
「フランス人に言わせると、この形じゃないとダメ。というのも、フランスでは、ひとつずつちぎってワインと一緒に食べるからだそうです」

ただくっつけただけでもOKですが、枝の
部分をつけるとブドウらしくなります


二次発酵を取ったら、焼成。さて、どんなオシャレなパンが出来上がるのでしょうか?

ボジョレーヌーヴォーを楽しむパン

外からはわかりにくいですが、中の生地は美しいワインレッド。そこに、大きめにカットしたサラミがゴロゴロと顔をのぞかせています。食感は、しっとり柔らかで、ワインの香りと、甘みのある油脂のコクが口いっぱいに広がります。こんなパンが作れたら、パーティにプレゼントにと、大活躍間違いなし!ワインと一緒に楽しみたいおいしさです。






そして、最後はヘクセンハウス作り。これさえあれば、クリスマスの準備は完璧ですよね!
「生地作りのポイントは、水とお砂糖で作ったシロップをたくさん加えること。こうすると、乾きにくくて作業もしやすいのでおすすめです」
さらに、色使いにも栄徳先生ならではのこだわりが。
「ベースとなる白生地は、フランスパン用粉のモンブランとリスドオルに、ライ麦粉を合わせたもの。黒ならカカオパウダー、赤ならパプリカパウダー、緑ならホウレンソウパウダーを加えて色味を変えていきます」
ヘクセンハウスをバクバク食べてしまう人はあまりいないと思いますが、やっぱり食べられることが前提。食べ物由来の色なら、安全だし、色みもナチュラルに仕上ります。

かなり濃く見えますが、焼くと
もう少し落ち着いた色になります


「まず麺棒で5mmくらいに伸ばします」
生地はかなり固め。よくもんでから伸ばし、天板に乗せて冷蔵庫で休ませます。



続いて、カットの作業。栄徳先生が用意してくれた、厚紙の型を上に乗せ、丁寧にカットしていきます。

壁、扉、煙突・・・。まずは、基本のパーツを準備します


「ナイフを立てるようにすると、カットしやすいですよ」



基本的なパーツが揃ったら、後は余った生地で飾り作り。
「皆さん、あんまり凝り過ぎないようにしてくださいね!」
・・・と言われても、そうはいかないのがヘクセンハウス。皆さん、素敵なヘクセンハウスを作ろうと、細かい飾りをせっせとこしらえていきます。

すでに皆さん、かなり夢中になっている様子です


白、黒、赤、緑を上手に使い分け、色々な飾りが出来上がっていきます。皆さん、本当に器用ですね!



完成したら、軽く蒸気を入れた窯に入れ、低温でじっくり焼いていきます。焼き上がったパーツを使って今度は、組立て作業。卵白と粉糖を合わせた接着剤で、固定していきます。

乾くまでしっかり固定するのがポイントです


さて、どんなヘクセンハウスが完成したのでしょうか?

飾りパン(ヘクセンハウス)

生徒さんたちの作ったヘクセンハウスを一部ご紹介します。
おうちの形自体は同じですが、それぞれに個性のあるものが出来上がりました。それにしても、自分でこんなふうに作れたら、素敵ですよね!





ボジョレーヌーヴォーのパンで大人っぽい気分も味わいつつも、最後はちょっと童心にもどって、ヘクセンハウス作りに没頭した今回のスペシャルレッスン。皆さんも、手作りのパン作りで楽しくおいしいクリスマスを迎えてみてはいかがでしょうか?



パナデリアの石窯パン教室は来年も開催予定です。また、レポートしていきますので、どうぞお楽しみに。

それでは、皆さまも素敵なクリスマスを迎えられますように。Merry Christmas!!

(2010.12) 





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