「パン・ド・ナノッシュ」の関谷勝美シェフに教わるパナデリア・石窯パン教室、基礎コース3回目のテーマは<クリスマスパン> 。バターやドライフルーツ、ナッツ類たっぷりのクリスマスパンは、パン屋さんにとっては珍しく日持ちのする、ギフトにもできる華やかなアイテム。そして美しい層と見た目がお菓子のようなパン屋の花形、クロワッサンを教えていただきました。
1.クロワッサン
2.シュトーレン
3.飾りパン
ひとつ目はクロワッサン。生地から仕込むには、教室の時間内では短すぎるため、バターを織り込んだ状態の生地をお店で仕込んで持ってきていただきました。そのため実践できなかったバターの包み方折り方を、タオルを使ってイメージレクチャー。ナノッシュではクロワッサン生地の端っこも無駄なく使えるよう、
どこをカットしても綺麗な層が出るよう、生地でバターの側面を包み込むのではなく、すべて均等の厚さになるような折り方をします。見落としがちな細かい配慮に合点。バター不足や材料高騰などで頭を抱える今、少しでもロスのない方法をとるのも重要なことですね。そうして十分休ませた折込み済の生地を、決まった厚さと幅にシーターで延ばしていきます。クロワッサンの命〜層を綺麗に出すため、カットをする前に冷凍し休ませます。そして二等辺三角形に素早くナイフを入れます。関谷シェフの作業を見ていると、定規や型紙は使っていません。ひたすらスケールにのせ重量チェック。一枚60gにすべく、端きれを上に重ねていきます。形の大きさを合わせるやり方ばかり見てきたので、これには開眼です。
「同じ料金で売るのに重さが違うのはいけない。結局巻き込んでしまうから、形も同じようになるし焼きむらにもならない」と関谷シェフ。確かにその通り! 本当に無駄がありませんね。それに生地を4枚重ねた作業は素早く、生地へのストレスもなさそう。クロワッサンの美しさとおいしさを生み出すには、低い温度と作業スピード、しかも焦らないことがポイントのようです。

次に休ませた生地をくるくる巻いてクロワッサンの形にし、天板に並べていきます。ところで焼きあがったクロワッサンがいびつに角立ったりした経験の方はいらっしゃいませんか? その原因は、巻き終わりの位置にありました。巻き終わりを底にしてしまうと、ホイロで膨らんだとき、巻きが跳ね上がってしまうそう。
「だから必ず巻き終わりは脇の下でとめること」 ひとつひとつのポイントを踏んで初めて美しい仕上がりになるのですね。

焼きあがったクロワッサンは見事なルックス。ハニカム状の内層からもジューシーさが伝わってきます。

タオルとビニール袋でクロワッサン生地にシートバターを折り込むイメージトレーニング。

どこを切っても美しい層がでるように考えられた包み方と折り方。

延ばした生地を定規できちんと測って上下二段に切り分けます。

フリーハンドで素早くほぼ二等辺三角形にカットしたら60gに調整。

やさしくくるくる手前に巻く。

巻き終わりは側面につけ天板に等間隔に並べていく。

ホイロ後にはきれいな層が見えてきました。やっぱりこの形で揃うのがうれしい。

塗り卵をして焼き上げたクロワッサン。一つとして巻き終わりが跳ね上がることはありませんでした!

ハニカム状の内層。中は外のように層にならないところが不思議ですね。



2つめはクリスマスパンのハイライト、シュトーレン。年々浸透してきているこの発酵菓子は、基本は小麦粉、バター、イースト、牛乳、卵などで捏ねたリッチな生地にスパイス、ドライフルーツ、ナッツ類を混ぜ込みローフ状で焼き上げ、バターやお砂糖を塗し保存性を高めたもの。アドヴェント期間に少しずついただくため、クリスマスまで日持ちさせることに意味があります。お店によって少しずつ配合や仕立て方に違いがあり、パナデリア石窯パン教室でも毎回楽しみなプログラムとなっています。さて、関谷シェフのシュトーレンはどんな感じなのでしょうか?

副材料が多くリッチな生地は力をつける中種作りからはじめます。そして本ご捏ね。バターや砂糖、マジパンをビーターで回しクリーミング。まるでお菓子作りのような作業です。これらと自家製の漬け込みフルーツを混ぜてシュトーレンの生地ができあがり。捏ねといっても状態はベタベタ、パン生地というよりフルーツケーキ生地のよう。分割も手をべとべとにしながら行いました。これが成形の段階になるとソフトにまとまるから不思議です。焼き上がると、二重にグローブをし、火傷に注意しながらすぐさま熱い溶かしバターの中を通しますが、脆い生地なので、うっかりバター風呂に落とし壊してしまわないようにしないと! この熱脂風呂、関谷シェフは二回するのです。しかも二度目はショートニングで。なぜバターではないのかと聞けば、「二回ともバターではしつこくなる」とのこと。しかししっとり保存のためにはやはり二度なのですね。二度、といえばこの後の砂糖まぶしも同じ。バニラオイルで香り付けした三温糖と粉砂糖ミックスを塗し、教室では時間の関係でここまででしたが、この後はビニールをかけて一晩おいてから、表面がきれいになるように粉砂糖を振りラッピングをして完成です。ナノッシュでは店頭に並べる日に粉砂糖をかけるそうです。そうすることで表面を新雪のように見せることができるからです。パン屋さんの中ではギフトにもなる高価な商品なので、ラッピングにも配慮が必要ですね。
秋から仕込み始めるオリジナルの漬け込みや香り付けに深みのある関谷シェフのシュトーレン。いくつもの段階を経て生まれた癖になるおいしさでした。

中種の仕込み。寒かったので理想より少し低めになりましたが問題なし。逆に高すぎるとパサパサになってしまうそう。

中種がきちんと発酵しているかどうかのチェック。中をちょっと開けてみます。

本捏ね生地に入れる卵黄と牛乳を加え湯せんで温めます。

生地に混ぜ込むフルーツ、ナッツ、スパイス類はボールにまとめておくと忘れない。

漬け込みフルーツ。関谷シェフは赤ワインとラム、ブランデーを香りよくブレンドし、レーズン、オレンジピール、レモンピール、ドレンチェリー、バニラを漬け込んでいました。

バター、マジパン、砂糖、塩をクリーミング。

すべての材料を捏ね上げたところ。生地の色はまるでフルーツケーキのようにブラウン。

生地を台に載せ分割。まだベトベトでやりにくいですが、優しく素早く!

心棒にするマジパンローマッセは、棒状に手で丸める。これは手につかずやりやすい。

中心にマジパン棒を入れて生地で包みます。もうそれほど生地はくっつかなくなりました。

自然とお包みの形に。

天板に間隔をあけて並べます。

焼き上がりです。少しいい焼き色もついています。糖分や油脂が多く焦げやすいので石窯の場合下火は焼くときには切り、上火だけを燃焼させると底は焦げません。

軍手の上にビニール手袋をし、火傷しないよう注意しながら、焼き上がり熱いうちに溶かしバターを染み込ませる。

バター風呂でテカテカになったシュトーレン。この後もう一度、ショートニング風呂に通します。

バニラで香り付けした三温糖と粉砂糖のミックスを塗し、やっとシュトーレンらしくなりました。

自分で作らないと、普通は食べられない(!)焼きたてのシュトーレンを試食。三温糖やバニラ、リキュール漬けフルーツ類が際立って美味しい。



3つ目は飾りパン。食べるパンではないけれど、お店に飾ったり、結婚式などパーティーのデコレーションやウエルカムボードにしたりすると雰囲気が出て喜ばれるもの。
やり方は色々ありますが、今回教わったのはライ麦粉と小麦粉をブレンドした白生地とココアパウダーで茶色にしたココア生地。この2種類でクリスマスっぽくリースを作りました。飾りパンは乾燥焼きにするので生地の水分量は粉に対して50%にも満たず、そのためミキシングしても生地はボソボソ。この状態からシーター(ローラー)を使ってまとめるのです。教室にはシーター初心者も多く、機械操作にドキドキ…スイッチを入れ、順番にシーター操作にトライ。真ん中のメモリで厚さを設定してから、利き足で左右どちらか動かしたい方のスイッチを踏んでローラーを通します。手を巻き込まれないよう、スイッチを踏む前に生地から必ず手を放すことを忘れずに!ボソボソの生地を往復させていくうちに、自然と生地がくっつきシート状になっていきます。4mmまで延ばしたら2色のリースを作り、その上に思い思いのパーツを組み立て貼り付けます。飾りパン生地には酵母を入れないので、膨らみません。従って作った形そのものが完成形となるのです。さあ、みなさんの個性の出しどころ。それぞれの世界に入って作業を進め、オリジナルのリースができ上がりました。どうぞ完成写真をご覧ください。

飾りパン白生地とココア生地。見た目はボロボロ、でもこの程度しかミキサーではまとまりません。

シーターの使い方を確認しながら実践。足のスイッチを離すタイミングによっては、生地があちらにダイブしてしまう…しかし手だけは巻き込まれないよう注意!

きれいに延ばされた2種類の生地、まずはリースを作るための帯をカット。

3本の帯生地で三つ編みに。

思い思いにリースを飾るパーツを作っています。

関谷シェフの作品。シェフはこの分野は得意ではないといいつつ、均衡のとれた仕上がりはさすがです。

以下は生徒さんたちの作品です。見事にそれぞれの個性発揮。見て楽しい作品となりました。







3回にわたる今期のパナデリア石窯パン教室もこれにて終了。遠方から通われる方、まったく違う畑から開業を目指し、門を叩いてくださった方など、個性豊かな生徒さんが集まり、少人数で和気あいあいとあっという間の3ケ月でした。関谷シェフ、ありがとうございました。みなさん、お疲れ様でした。


この日パナデリアが用意したランチは、にんじんポタージュ、ブロッコリームースの赤ピーマンソース、マッシュルーム、ベビーリーフサラダ、フランス土産のパンデピス&コンテチーズ。それに焼き上がったクロワッサンを添え、彩豊かなメニューとなりました。


今後もパナデリアでは石窯パン教室の開催を企画する予定です。ご興味をお持ちの方は、ぜひメールマガジンの登録をおすすめします。






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