※前回の小杉さんの記事はこちらから↓
http://www.panaderia.co.jp/members2/craftsman/belamer/index.htm



秋はショコラがおいしい季節。爽やかな秋風と共に、ショコラファンにとって嬉しいニュースが舞い込んだ。それは『ベルアメール』2号店(八雲店)オープンのお知らせ。『ベルアメール』といえば、代官山で人気のショコラトリー。2003年10月のオープン以来、日本人の趣向に合った繊細な味わいが評判を呼んでいる。代官山の閑静な住宅街に佇む瀟洒な姿は、まるでパリの路地にあるブティックのよう。2号店はそんな静かな環境とはイメージを一新、東横線都立大学駅にほど近く、交通量も人通りも多い目黒通り沿いにある。ベルアメールで腕をふるうショコラティエ、小杉和之さん に2号店にかける想いを伺ってみた。

    


「ショコラを広く根付かせたいと思っていました。客層が限られる代官山に比べると、この辺りは人通りも多いので絶好の場所。リピーターも多く、お蔭様で評判も上々ですよ。また、代官山店のアトリエ(工房)が手狭になり、そろそろ新しい場所をと考えてのことなんです。1号店での経験を踏まえて作られた新しいアトリエは、ショコラのための最適な環境が整いました。今はこちら(目黒店)で主力商品のボンボンショコラ作りに励んでいます」

アトリエには、おいしいショコラを作るためのアイデアが詰まっている。まず、以前よりスペースを広くとり、作業効率がアップした。それからオーブンがないことも大きな特徴だ。そのわけは熱や湿度を嫌うショコラに配慮したため。更にショコラの微妙な食感に影響を与えてしまうため、粉を使用するお菓子は別のアトリエで作製するという。ショコラと粉ものは別々の場所で−これは絶対に譲れない点だ。それからもうひとつ、小杉さんには「ショコラのフレッシュさをアピールしたい」という夢があった。オープンキッチンはパティスリーではよく見かけるものの、ショコラトリーでは珍しい。

    


「ショコラもケーキと同様にできたてが一番。そのことをお客様に伝えたいという想いから、この見せるアトリエ(オープンキッチン)ができあがりました。それに私自身、実際に作業している姿を見てもらえるのは嬉しいんですよ」

フレッシュやできたてがおいしいのはケーキだけではなく、ショコラも同じ。オープンキッチンにはそんなメッセージが込められている。


こだわりのアトリエで作られるのは、「日本に合う」ショコラ。小杉さんにお勧めをひとつ上げてもらうと、今秋の新作『サツマ』という答えが返ってきた。これは、四季折々の期間限定ショコラが楽しめる『ショコラセゾン』のひとつ。『ベルアメール』のオリジナル商品だ。

「ビターガナッシュに芋焼酎を合わせてみたんですよ。個人的に好きなお酒だったので是非使ってみたかった。でも、これがなかなか難しくて。どうしても焼酎の尖った味が強調されてしまうんです。そこでさつま芋のソテーをプラスしてみたところ、うまくいきました。焼酎とソテー、共にさつま芋だから相性もぴったり。是非男性に食べていただきたいですね」

ショコラに焼酎?と疑問を抱く前に、まず食べてみて欲しい。カカオ豆の芳香な風味と共に、焼酎の辛味とさつま芋の甘みが口の中にふくらんでいく心地よさ。最後に焼酎の香りが鼻に抜け、キリリとした大人のテイストで攻めている。しかも、その効かせ方の絶妙なこと。初めて小杉さんのショコラを食べた時にはその繊細さに驚かされたものだが、その後、繊細な味わいにして「キレ」がプラスされたようだ。欧州のショコラティエには真似できないセンスだろう。
「フランスやベルギーで食べるショコラに比べると、随分繊細ですね」。思わずそんな言葉が飛び出した。すると、

「彼らが好きなのは、カカオ分の高いビターチョコレートや、スパイスなどの風味がはっきりしたもの。食べなれていない日本人にいきなり同じものを出しても喜ばれないでしょう。日本のショコラブームはまだ始まったばかり。まずは食べやすいものから始めてショコラのおいしさをわかってもらえたら、そんなふうに思うんです」

ときっぱり。
普段は穏やかな小杉さんが熱い口調に変わった瞬間だった。

日本は今、かつてないほどのショコラブーム。でも、小杉さんはブームに左右されることなく、自分の信じる味を作り続ける。それも地道に、長い目で。その結果日本のショコラ文化が定着してくれたら、と今日もアトリエに向かう。
    



ベルアメール八雲店
住所東京都目黒区八雲1−4−6
TEL03−5701−2523
営業時間11:00〜20:00(日・祝は〜19:00)
定休日不定休
アクセス東急東横線都立大学駅より徒歩5分


ベルアメール代官山店
住所東京都渋谷区鉢山町14-4
TEL03-5456-2533
営業時間11:00〜20:00(日・祝は〜19:00)
定休日
アクセス東急東横線代官山駅より徒歩7分