アテスウェイ 川村英樹さん



1971年新潟生まれ。
1989年東京プリンスホテルで働きはじめる。
2000年ブルターニュの四ツ星ホテルで一年を過ごす。
2001年11月アテスウェイオープン。シェフパティシエに。



実は洋菓子屋の息子なんです。といってもショーケースに並んでいるのはシュークリームやショートケーキ、モンブランが中心。新潟の、いわゆる町の洋菓子店。
それでも父は、「洋菓子にはもっと広い世界がある」ということは常々言っていました。それで自分が就職するときホテルを選んだ。少なくとも当時の父のイメージは、「東京のホテル」といえば「最高の素材と技術」だったんですね。





確かにホテルには、いい素材も素晴らしい先輩もいました。ただ、自分は学生時代の夜更かしの癖が抜けないままで、毎日遅刻はするし、それに洋菓子屋の息子といえど、過去に親の手伝いなんてしたこともなかったから知識もない。「おまえ、やる気あるのか。それでも本当に洋菓子屋の息子なのか」と何度先輩に怒られたかわかりません。

目覚めたきっかけは、プリンスホテル内の料理コンクールでした。各ホテルから若手の代表が出て飾り菓子を作るというものがあって、自分は東京プリンスの代表に選んでもらった上、2位になったんです。「一生懸命やればできる」と、信頼していた先輩に言われ、子供みたいですけど素直にそう思ったんですね。家のお菓子屋を継ぐための修業として、ホテルには2,3年勤めればいいと考えていたのに、いつしか田舎に帰ろうという思いは消えてしまいました。



やる気になってみると、いろいろな道が開けていることも知り、積極的にコンクールに出るようにもなりました。
印象に残っているのは二つ。ひとつはクープドフランスです。15回大会に出て10位。上位の作品を見ていて、技術を磨くだけでなく、感性を研ぎすまさなくては上位にくいこめないと感じたんです。
それからというもの、なにを見ても、そこで感じたことを意識して頭に蓄積するようにしました。その甲斐あってか、翌年の16回大会では優勝することができました。




その後、知り合いのフランス人に、ブルターニュの4つ星ホテルを紹介され、フランスに渡り、毎日一生懸命働きました。 ブルターニュについての知識はほとんどなかったです。いってみたら、塩のきかせかたなど初めて学ぶことも多かった。
出会った素材で一番気に入ったのは海塩の粒が入ったバター。本当にこれは美味しくて、とても高いけれど今もひとつのケーキにだけ使っています。そのケーキを含め、ブルターニュで学んだ味がベースになっているから、男性的でどっしりした味がこの店の特徴。正直、夏向けとは言えない味なので、夏にはシャーベットなんか作っていかなとだめかなと思って、今、アイテムなど考えているところなんです。



取材日2002年6月12日
アテスウェイ
武蔵野市吉祥寺東町3-8-8
0422-29-0888

川村さんの秘密