バックストゥーベ ツォップ

伊原 靖友 氏

 お客様の要望にお応えしていたら、こんなに種類が多くなっちゃったんですよ。驚かれる方も多いですが、食パンだけで毎日16種類。他のパンを合わせると、コンスタントに150種類くらいあります。使う素材もパンにあわせてさまざまです。例えば粉もホクシンやナンブ、ハルユタカといった国産の小麦から外麦、店の石臼で挽いている全粒粉までいろいろ。なるべく単一品種でいれて、パンにあわせて自分でブレンドするようにしています。そんなふうに、このパンにはこれがいいかなあ、とやっているうちに、おのずと塩も酵母も種類が増えていきましたね。塩は現在3種類。酵母についてはホシノやブドウ種がメインで、アンズ、イチジク、山芋もやったことがあります。パンによってはイーストも使っています。

親の代からパン屋で、自分も抵抗なくパン屋になりました。最初3年ほど、平塚にあった『シェーンブルン』というパン屋で修業をつんだのですが、ここは大きなパン屋で、職人も20人くらいいたんです。ドイツパンが得意な人、デニッシュが得意な人などそれぞれの分野に長けた人がいて、まだ若ぞうだった僕はいろいろなことを教わりました。それが今の基礎になっていると思います。

戦中派の親父も、まだ元気にパンを作っています。ぶつかることが全くないわけではありませんが、お互いの主張を生かしながら比較的うまくやっています。僕は朝4時に出てくるんですが、親父は2時。だから午後3時にはもう店をあとにしていますよ。

今、世の中の動きとしては、一つ一つの店が専門化していますよね。自分の店はまさにそれに逆らっているかなとも思うんです。フランスパンも、ドイツパンも、食パンも、アンパンも、サンドイッチも、どれも美味しい店にしたい。そしてそのどれを目指すお客様にも満足してもらえる店にしたい。だから、あえて「どんなパンでもあります」とうたうようにしているんです。

これからやってみたいのは、カフェ。作っている立場の僕達としては、パンに合うおかずを提供したり、もっと食の提案をしていきたいというのがあります。ドイツパンの食べ方など、まだ知らない方も多いですからね。暖かいパンペルデュや出来立てのサンドイッチを出すなど、カフェでないと味わえないものも出したい。そして何より、「美味しい」って言うお客様の顔を目の前で見たいですね!でも、今、職人が2人辞めてしまったせいもあり、店の仕事だけでてんてこまいなんです。実現は少し先になるかな。
取材日 2001年3月


伊原さんの秘密