ル・スリジェダムール

竹澤 浩一 氏

学生時代、アルバイトをしていたお菓子屋に学校を辞めてそのまま就職。その後1軒お菓子屋で働き、15年前からこの店に。


1976年にオープンしたフランス風菓子のお店、「ル・スリジェダムール」。日本列島の東西の境目といわれるこの土地で、約15年間このお店と共にケーキ作りをしてきたのが、現在本部の工場長を務める竹澤氏。もともと食べることが大好きで、学生時代、アルバイトしていたお菓子やさんに、そのまま学校を辞めて就職してしまったというツワモノである。
「ル・スリジェダムール」は現在岐阜県内にチョコレート専門店を含めて7店ある。竹澤氏がここで働いてきた15年の間にはバブルあり、その崩壊ありと、お店の方針もさまざまな変化を遂げてきたという。

例えばチョコレート一つとっても、中身のチョコレートよりラッピングにお金をかけていた時代がある。それでも飛ぶように売れていた時代から、現在では中身重視の簡易包装に移行し、大人から子供まで食べやすいチョコレートを中心に構成。バレンタインデー前にはデパートなどでの出店の勧誘が多数あり、今年のバレンタインデーを前にトリュフだけで25万個を製造するという超人気店である。

ケーキも、「ピラミッドの頂点の人たちだけが買ってくれればいい」と、客を選んだ商品構成をしていた時期があった。しかし、「どうしてこんなにお酒がきいているの」「子供の食べられるお菓子はないかしら」とお客さんのほうがほっておいてはくれず、意見を聞いているうちに、全体を対象にするような食べやすいお菓子の構成になって現在に至っている。ショーケースを前に笑顔でケーキを選んでいる光景が絶え間ない。

生菓子の種類だけで約50種。それに、焼き菓子が約30種、チョコレートが50種類に夏にはアイスキャンディーや、カップのジェラートなど、これまた50種類ほどのアイスクリームが登場する。何度行っても飽きない構成もまた魅力である。時には「僕自身も知らないところで新しいお菓子がケースに並んでいる」という新作のお菓子たちは、限りなく一般消費者に近い、何十人ものモニターの試食でケースに並ぶか否かが決定されている。ふんわり優しいアールグレーのケーキや、さっぱり南国を思わせる鮮やかな色のパッションのムースなどもこうして選ばれたものたちである。1番人気は1個100円の「コルネ」。カスタードクリームがくるんと丸まったパイ生地に入れられたケーキで、家族で囲む食後の食卓に登場させれば絵になりそうなケーキである。

本部の工場にいる50人もの従業員を統括している竹澤氏。立場上、お菓子を作る時間は減ってしまったとはいえ、「とにかくお客様と向き合って、喜ばれるお菓子を作っていきたい」という気持ちに変わりはない。老舗ながらにいつでも新しい風が吹いたお菓子を提供し続けられるヒミツは、店全体がお客様と向き合っている、そんな姿勢のなせる技なのである。
取材日 2000年1月

竹澤さんの秘密


ル・スリジェダムール
岐阜市北一色4−2−7
058−246−3377