シェ・シーマ 本間 淳さん 



<経歴>
「ホテル西洋銀座」で修業の後、フランス「オ・ファン・パレ」、ベルギー「ル・サントノーレ」を経て帰国。「エヴァンタイユ」でシェフを務めた後「シェ・シーマ」へ

   


僕がこの店に来て、今年の2月で2年。シェフとして、ただ指揮をとり統括するだけでなく、実際に製作スタッフの一員として動き、目を光らせているので、ほとんど市川にいますよ。ここが工場なんです。

前のシェフ、木村さんから交替したばかりの頃は、そりゃあオーナーにプレッシャーもかけられた。多分、島田さんから木村さんに変わったときもそうだったんだと思う。オーナーとしては当然のことだよね、それで僕も気合いを入れてがんばるわけだから。とはいえ、商品に関しては完全に任せてもらい、好きなようにやらせてもらっています。


スタッフは、前の店(エヴァンタイユ)から連れてきた人と、新規で募集した人が半々くらい。以前のシェ・シーマのスタッフはいないんです。だからケーキもがらりと変わりましたよね。例えばショートケーキをはじめたこと。それぞれのケーキに、大人向け、子供向け、というのは意識していないんだけど、間口の広いケーキがあってもいいかなと思って作りました。上にのるイチゴは真っ赤で美しいのを使っています。僕は、美味しいものは見た目も美味しそう、まず見て魅力的じゃないとね、と思っているから、このあたりにはこだわりますよ。イチゴにかかわらず、どのケーキも、デコレーションなど仕上げには手を抜きません。


新商品の開発は、スタッフには任せず、自分自身でやります。できたものを味見してもらうことはある。でもね、「なにか具体的に感想を言ってくれ」っていっても、みんな難しいみたいで、下向いちゃうんだよね。僕も20代の頃は美味しさを言葉にできなかったから、その気持ちもよく分かります。それでも、あえて求めるのは、言葉にできなかったとしても、「クリームの量はちょうどいい」とか「多すぎる」とか、「酸味はもっとあってもいいのでは」「甘さは…」と、感じながら食べて欲しいから。それが、いずれ自分が何かを生み出すときやシェフになったとき、多いに役に立つと思う。


そうしてうまれた新商品は、売れなければその原因を考え、リニューアルします。変えるのは味のときもあるし、見た目のときもある。例えばね、四角を丸にしただけで売れ出すこともあるんですよ。そんなときには、見た目だっていかに大事かということを考えさせられるよね。でもね、「四角い方が、クリームなどのバランスを考えると美味しく味わえると思うけどなあ」なんて心の中で思うこともあって、そんなときは僕なりに落ち込んだりもするんですよ。同時に、作り手と食べ手のそのギャップが面白い、というのもあるんですけど、そのあたりは微妙で難しいですね。


リニューアルもそうですが、自分がやってみたいことをいろいろ試してみられるのは、いいスタッフに恵まれてのこと。2年前から考えると、みんなメキメキ力をつけています。厨房は程よい緊張感。ワイワイというのは好きじゃないけど、萎縮していてもいいものができないと思う。常にテンションは高く、でもときには笑い、というのが理想の空気なんです。

なにか一つケーキを召し上がりますか。じゃあシュークリームなんてどう? パティシエールと生クリームが半々なんだけど、生クリームは50%のを使っているんです。なかなかないでしょう。濃厚ですよ。扱いも簡単ではありません。がっちり食べた気がするシュークリームです。ほかにはない味だから、病みつきになるかもしれませんよ。



2002年2月取材

シェ シーマ
東京都千代田区九段南4−5−14
03−3222−4031
本間さんの秘密