コーンポピー

圓崎 恵美子 氏

何年か前、自分の体調が心配だったときに、あらゆる食品を見直したんです。特別にパンだけを見直したわけではありませんが、もともとパンはとても好きで、自分で作ったりパン屋さんでお手伝いさせていただいたりもしていました。有機野菜、無添加の食材と、自分の食卓に並ぶ素材をナチュラルなものに切り替えていく中で、安心・安全なものを皆さんに紹介できるお店が出来たらいいと思い始めるようになったんです。やるからにはメインはパンだろうと思いましたが、パン屋をやりたくてはじめたというより、健康食品のお店をやりたくてパン屋をはじめたという感じですね。

お店で売っているパンには、主にホシノ酵母を使っています。他に、自家製のレーズンから起こしたものも少しあります。粉は全て国産のもの。できるだけ農薬も少ないもので、自分の中で納得したものを選んで使っています。天然酵母と国産小麦でパンを作るのって、温度管理をはじめ、本当に難しいですよね。毎日同じように仕込んでも、ぜんぜん出来が違う。酵母は生きてるものだなあってつくづく感じさせられます。

パンに入れるレーズン、クルミ、フルーツなど小麦以外の材料も全て国産、無農薬のものを使っています。お塩も大島のお塩。お店で使っている素材は大体健康食品のお店で目にするものだと思いますよ。パン以外にも片隅にちょっとした食品を置いて売っていますが、これも健康食品ではメジャーな『正直村』のもの。自然食にこだわっている人が見れば安心なものだってわかるブランドです。その延長で、お店で売っているパンも安心して口に運べるものだとわかってもらえるんじゃないかって思うんです。

安心であることにプラスして、せっかくお店に足を運んで買いに来ていただけるのだから、通信販売では味わえない『出来たて感』も大事にしています。天然酵母のパンは日持ちがいいといわれていますが、実際には無添加だから出来るだけ早く食べてほしい。このお店では、一つ一つパンをラッピングしてお売りしているんです。少しでも出来たての味が長続きするためだから、手間はおしみません。

体に安心なパンっていうと、小さいお子さんを連れた人などが好んで買いに来るイメージがありますよね。でも、意外なことにほとんどそういうお客様はいない。東京の千駄木といえば下町です。パンなんて受けつけない土地なのではと思う方もいらっしゃるのでは?でも、私は開店のときからそれは心配していませんでした。きっと人情味のある町だろう、面白そうだって思っていました。開店してみたら、想像どおり人情味のある町だった。長く住んでいる方が多いのか、お客様はご年配の方が多いんです。70代、80代の方も多い。だから、菓子パンなどは特に固くしないように気をつけています。一番人気は食パン。毎日買いに来てくださる方を見ると、嬉しくなりますよね。
取材日 2000年11月


圓崎さんの秘密