ドンナ
吉野 敏江 シェフ

   



パンはもともと作るのが好きだったんです。趣味で作っては人にあげていたのが、ひょんなことから店を開くことになったので、初めたばかりの頃はそれはもう大変でした。

その頃はまだ女性のパン屋さんが少なくて、銀行に資金を借りることもできなかった。学校へ習いに行っても、あまり教えてもらえなくて途中で辞めてしまったんです。ほんとうにぎりぎりの状態で開いた店で、オープンの10日前にやっと機械が揃ったくらいです。 もうあとは自分でなんとか試行錯誤してやるしかなかった。失敗できないというプレッシャーと、女性の地位を上げたい、その一心でしたね。その頃から通ってくれているお客様にはほんとうに感謝しているんです。よくうちに通い続けてくれるなあ、我慢強いなあと思いますよ。今でも「この前のパン、いつもと味が違ったわよ」とか、お客様が教えてくれるんです。


女性ということ、添加物を使わないということで、赤ちゃんのいる若いお母さんたちは安心して来てくれるみたいです。遠くは成田や土気から来てくださる人もいます。小麦も卵も牛乳もだめというアトピーの子供向けに、かぼちゃやほうれん草を入れたパンも作っているんですが、やっぱりそういう店は少ないようで、喜んでもらっているみたいです。 今はレーズンで酵母をおこしているんですが、今年のお正月に20kgだめにしてしまって。元種は大丈夫だったんですけど、やっぱり難しいなあと痛感しましたね。もうずっと育てている酵母だから、いとおしいくらいに愛着がわいています。フルーティーでいい味になってきましたよ。

店は今転換期を迎えていると思います。女性の店ということもあって、女性の若いスタッフも何度か入れたんですが、どうしても結婚という逃げ道があって、なかなか本腰を入れられる人がいないんですよ。それで男の子を入れたんですが、とてもまじめでよくやってくれています。他のスタッフによく言うのは「気働きをしろ」ということ。いい人と仕事ができる人は違うし、頭がよくても気が利かなきゃだめなんです。そういう部分が自分に足りないと思うなら、他のスタッフを見て見習いなさいと。そうやってスタッフを育てていくのも今後の私の課題でもありますね。


うちは店と厨房がつながっているようなつくりなので、お客様とのコミュニケーションも大切。お客様、スタッフに支えられて、これからも頑張りたいと思っています。技術では他の店に劣る部分もあるかもしれない。でも毎日一生懸命やること、お客様の顔を思い浮かべて、愛情たっぷりに作ること、この2つだけはどこにも負けていないと思います。将来は食事パン中心にして、店の2Fの住まいをレストランにしたいと思っているんです。息子がやってくれてもいいし、私の気持ちを継いでくれる人がいればそれでもいい。料理はおいしいのにパンがまずい店っていうのはがっかりしますよね。パンがおいしいレストラン、それが夢です。


   取材日2003年1月27日


ドンナ

千葉県千葉市花見川区幕張本郷5-20-8
043-274-6618

〜お知らせ〜
4月(前半)に溶岩を使用した石窯が登場するそうです!
ハード系のパンが一層おいしくなることは間違いなし。
石窯をいかした新商品もでてきたりして・・
ドンナのこれからがますます楽しみですね。

吉野さんの秘密