ゴコク 海老原 氏

都内中心に数軒のパン屋で修業した後、ルノートル、日航東京で腕をふるい、1年前からここゴコクに。パン職人歴20年!


もともと食べることに興味があって、最初は洋食のコックやりたかったんですけど、その頃は就職難であてがなくて。たまたまパン屋さんの求人広告を見て、洋食とパンは近いなと、軽い気持ちで入ったのがこの世界に入ったきっかけで、それ以来、奥深い面白さを感じて今に至っています。

取りつかれてしまったパン作りの面白さとは、「思うようにいかない」ところですね。自分のイメージ通りにイーストが働いてくれない、膨らんでくれない、焼きあがらない。でも、イメージ通りにできたときの喜び。ここの面白さです。今でも難しいな、と思うのはフランスパン。材料がシンプルなだけに、粉の旨みもストレートに出ますし、シンプルでごまかしがきかないパンです。粉は何種類も試しました。行き着いたのは「リスドール」。試した中で、旨みが1番しっかり出る粉です。焼き込み具合、皮と中とのバランス、フランスパンに求められるものは色々あるでしょうが、自分自身としては、特に皮の旨みのあるフランスパンを心がけています。

このフランスパンをはじめ、私が1番好きなのは、ハード系の食事パンです。味わうのも、作るのもこれが1番好きですね。以前、ホテルで大量に食事パンなどを作る生活をしていたので、最初この店に来たとき、作るパンの種類ががらりと変わるのかとも思ったのですが、実際はそんなことはありませんでした。このパン屋は、「ル・フォワイエ」として、以前からこの八王子に店をかまえていますが、菓子パン中心ではなくハード系食事パンを中心に売っています。ハード系のパンのリーダーとして、この土地のお客様にそういう文化を提供し続けたといってもいいかもしれません。ライ麦のパンも、天然酵母のしっかりした生地のパンも、私が来た1年前には、既にお客様に受け入れられるようになっていたんですね。そういう過程を経て現在も買ってくださるお客様に、「美味しい」といって頂いたときは何より嬉しいです。

ここでは製造スタッフが販売も手がけています。併設されているレストランでもここで作ったパンを出していますから、お客様の反応がじかに伝わってきます。そんなコミュニケーションの中で、より美味しいパンを作っていかれたらと思います。自分が作りたいパン、味ももちろん大事ですが、何よりお客様が美味しいと言ってくださることが1番。口に入れるものですから、安全なのは当たり前です。でも、食べものである以上、美味しくなくっちゃ。「安全で美味しい」、今後もこの追求に尽きると思っています。
取材日 1999年


海老原さんの秘密