スイス菓子 ハイジ トラウムプラッツ
小山 進(コヤマ ススム)氏



'64京都生まれ.
専門学校を卒業後、ハイジにて勤務。
今年で16年目。
テレビ東京系の「TVチャンピオン」で優勝。



小山さんといえば、テレビ番組でも観たことがある"とても夢のあるマジパン細工の世界を作り出すあのシェフ”と、お会いする前からいろいろと勝手なイメージが出来上がっていたのですが、実際にお話を聞いてみると想像していた以上に魅力的な方でした。

お父様もケーキ職人だった小山さんは、子供の頃からお父様の仕事場に出入りしては手伝うように、そしてそこが小山少年の遊び場だったそうです。小さな頃からモノ作りは好きだったけれども最初からお菓子職人になろうとは考えていなかったとか。ポスターを描いたり他のことに夢中になったこともあったそうですが、たまたま家に置いてあったお父様の洋菓子の業界誌に目を通したら、当時は日本でまだあまり見ることの出来ないヨーロッパの飴細工やマジパン細工の凝ったデコレーションケーキが載っていたそうです。「これなら自分のやりたいことが全部入ってるんじゃないかな」と感じ、それがきっかけになり小山さんのお菓子作りの世界がスタートしたのでした。

料理の専門学校を卒業後,現在のハイジに就職。今年で16年になるとか、小山さんの活躍ぶりから考えて意外にシンプルな経歴に驚いてしまいました。もちろんハイジから何度もヨーロッパへ研修に行ったそうです。その時の経験で得た感動がハイジでのお菓子作りにも反映されていて、出来るだけ本場の味に近づけるための素材選びにも小山さんのこだわりが感じられました。

現在、小山さんは播州地鶏の有精卵を使用されていますが,この卵との出会いは意外に身近でした。卵の産地は、子供の頃によく遊びに行ったお母様の実家がある田舎だそうです。3年前に新しい素材を探すことになった時、あの田舎に行ってみようと思い、「子供の頃のまま変わらず豊かな自然がまだ残っている、こんないい環境には何かいいものがあるはず」と思われたそうです。そしてこの卵に出会ったのです。「ただね、今いろんないい卵があるじゃないですか。それがどないちゃうねんて言われたら分からないですよね、はっきり言うて。でもそれはやっぱりストーリーやと思います。自分の中でのね。確かにある避けなければいけない問題(例えば、にぼしを餌にしている鶏の卵を使うと臭いが生地に残るとか)はあるけれどそれ以上のことは僕にはまだ正直わかりません。」と本音的な部分も話してくださり、小山さんの親しみやすい人柄を感じました。

これからも素材との新しい出会いを求め常に探し続け,そしてそれを楽しむことを忘れたくないと小山さん。次に気になっている素材はお砂糖で只今研究中だとか。小山さんの素材との出会いのストーリーはまだまだ続くようでいつの日かまた続きをお聞きしたいと思いました。「探すことに疲れたらケーキ屋やってる資格ないやろな。」と厳しい言葉もチラッと洩れていました。

神戸で活躍されている小山さんに東京を意識されていますかと少し突っ込んだ質問をしてみたところ「ありますよ。ものすごくあります。」と即答。「東京は一人一人の職人、その職人の技術を大切にし、受け入れてくれる土壌がある。それはヨーロッパのお菓子やさん的なところがあって自分にとっては羨ましくもあり、またそれが刺激になっている。だから一年のうち何回も仕事で行って刺激もらって元気もらって帰りたいな。」と小山さん。マスコミでも有名人のはずなのに謙虚な答えが返ってきました。また取材の間、どんな質問にも率直にそして誠実な態度で答えてくださいました。取材後にいただくケーキの味は小山さんの人柄が重なりまた格別なものでした。
取材日 1998年

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