ベイクハウス ヒロヤ

佐々木 光総 氏


妻の実家が北海道でパン屋だったんです。結婚するまでは東京で子供服の仕事をしていました。今年でパンを作る仕事は19年目になりますね。僕が来たころは95%学校給食用のパンを作っていましたが、今は45%。ずいぶん変わりましたよね。

皆さんのパンに対する意識が変わったなと思うのはチェルノブイリの事件があった頃から。マスコミの効果もありますが、農作物の汚染に興味を持たれる方が増えました。安全な小麦として国内のものが見直されるようになった。アレルギーのお子さんを持つ方々にも国産小麦や天然酵母が注目されるようになりました。みなさんが、「安全なパンを作って」と要望を出してくるんですよ。それを僕なりに形にして色々なパンが生まれたんです。幼稚園でまわりのみんながパンを食べていても指をくわえて見ていなくてはならないお子さん達がいる。あるお母さんに「油も卵もイーストも使わないパンを作ってください」と言われ、はじめは「何言ってんねん」って思いましたが、やってやれないことはない。ガチガチのパンですが、それを手にしたアレルギーを持ったお子さん達の本当に嬉しそうな笑顔の写真、これを見るともうたまらないですよ。国産小麦と天然酵母の組あわせは13年前に始めました。僕自身、ここから本格的に食事パンを意識して作るようになりましたね。

焼きもの市の時に発明した<北のレンガぱん>もそうですが、様々なアイディアは人とのコミュニケーションから生まれてきます。普通のパン屋さんだと「そんなの無理だ」と思ってしまうところも「どうにかならないか」「面白そうだな」と耳を傾けることから形になっていきますね。最初からパン屋だったわけではない、アウトローな経歴が逆によかったのかもしれません。

道産小麦を使っているパン屋さんも、今ではずいぶん多くなっています。道産小麦の旨みはデンプン質にあるんだと僕はいつもとなえています。それに同意してくださるお客様が市外から時間をかけて車で来てくださったり、本州から注文をくださったりするんだと思っています。デンプン質の旨みはね、そしゃくするから出てくる美味しさです。だから噛んで美味しいパンを道産小麦に期待しています。代名詞で言えば<ハルユタカ>。でも量がとれない。需要と供給のバランスがこんなに崩れた小麦もないですよね。外麦も使います。なんでも道産のものを使えばいいというものではない。適材適所、パンにあった小麦を使うようにしてます。
取材日 2000年9月

ベイクハウス ヒロヤ
北海道江別市緑町東3-34
TEL:011-382-3034


佐々木さんの秘密