ベッカライ インマーマン

野村 博士 氏
松陰神社前のニコラス精養堂で3年(58年4月から61年4月まで)、上野の永藤などを経て、ドイツに2年(96.7〜98.8)。その後都内パン屋を経た後、2000年8月にオープン。

パンの焼き立ての香りにひかれてこの世界に入りました。いわゆる日本のパンを焼く店で働いていたのですが、ある時の講習会がドイツパンだったんです。しかもドイツ人のマイスターが来て。そこで、噛むほど旨みが広がるライ麦の風味と味に開眼。本場で学びたいと2年間ドイツに行ったんです。

挨拶の言葉も分からないままに降り立ったドイツで、まずは3ヵ月語学研修をしました。単語を覚えただけだったけれど、実際パン屋の厨房では、技術面は見て通じるでしょう、だからそれほど苦労しなかったです。でも、もっとコミュニケーションをとりたいと思うとなかなかうまくいかなくて、いつも手元に辞書を置いて、それと首っ引きでまわりの仲間と親睦を深めていきました。

ドイツに行って、日本のほうがパンは美味しいなと思いました。これが分かったのが一番の収穫といってもいいかもしれないです。むこうだと、どうしても、質より量という感じなんです。自分がいたのは職人が10人ほどの中堅の店だったんですが、一日なんと粉を2000キロも使うんです! ちなみに今のこの店では一日50キロ。いかにすごい量か分かるでしょう? でも、機械化されているからそれほど大変という訳ではないんですよ。

ドイツから戻って来て、店舗を見つけるまで少し時間がかかりました。ここ三軒茶屋は生まれ育った場所に近いんです。開業に当たっては、「ヨーロッパのパンだけでやろう」とハード系とデニッシュしか置かなかったんです。でも、お客さんから「あんぱんはないの?」「甘食はないの?」とか聞かれることが多く、今ではそういうパンもかなり増えました。最初は3,40種類だったパンが、6,70種類になりましたから。

もちろん、あんぱんとか置くのに最初は抵抗がありましたよ。でも、経営者としてスタッフやスタッフの家族のことも考え、ある程度売り上げを上げなくてはいけないこと、そして何よりお客さんに喜んでもらいたいという気持ちがあったから、種類を増やしました。選択の幅を広げ、その中にドイツパンとかフランスパンとかがあればいいんじゃないかと思うようになったのです。お客さんは年配の方が多いです。商品構成には、そういうところも無視できないですね。ただし、作るなら惣菜パンも菓子パンも美味しく作りたい。だから、手間がかかってもカスタードやあんこは手作りです。

ドイツパンは、油脂や砂糖を入れないから、ごまかしがきかないパン。粉の味がすべてだし、ミキシングを失敗したら、それだけで製品にならない。今、ライ麦粉はドイツのものを2種類使っています。
ドイツパンの売り上げも、着実に伸びています。食べ方の提案は、聞かれればしますが、基本的には買った方が楽しみをみつけてくれればと思っています。人それぞれ美味しい食べ方は違うと思うから。でも一つ言えるのが、ドイツパンは料理の味を引き立てるので、是非料理と一緒に味わう楽しみを知って欲しいですね。

いずれは貸店舗でなく、自分の土地をもって、そこで営業したいです。そして、フランス製の窯が欲しい。石窯に近い火のとおりで、遠赤外線効果で、今よりきっといいドイツパンが焼けると思うんです。

取材日 2001年11月














ベッカライ インマーマン
世田谷区三軒茶屋1-33-16
TEL:03-3411-3400

野村さんの秘密