ジャック 大塚 良成さん  

   



以前、パナデリアの方々に取材に来て頂いてから、もう3年が経ったのですね。僕自身の考えは少しも変わっていなくて、フランスを向いて一生懸命やるということだけなんです。店はオープンして7年になり、ヨーロッパに行っていたスタッフが戻ってくるなど、店全体の力もアップしたと思います。商品ひとつひとつの質を上げることと同時に大切なのは、生産能力を上げること。二つが揃って店の力ですよね。そのためにはひとりひとりの力がとても重要なのです。




このあたりはオフィス街なので、以前と変わらず若い女性が多いです。彼女たちは雑誌などで仕入れた知識もたくさんあり、自分のやりたいスタイル、行きたい店というのがはっきりしていて、意志を持っている。年々、ファッション性の高い生活を送っているように感じますね。ケーキもまずはファッションの一部なのかなと思います。ただそれだけで終わらず、そこから本当に店や味を気に入って頂き、ここを目指して来てくれる人が増えているというのはとても嬉しいことですね。

一年半前に、注文が入ってからクリームを絞るモンブランを始めたんです。出来立ての風味を楽しんでもらいたかったから。ですが、男性のお客様は、いくら「"今から作る"といってもすぐにできますよ」と言っても「待てない」って他のものを注文されるんです。その点女性はせっかちでない。結果、とても美味しいと言って頂き、広がり、今では男性もこれを目指して来てくれます。美味しいものに対する女性の力って凄いと思わされますよ。

それから、これは男女にかかわらず、案外重いお菓子を受入れてもらえるんです。僕が、「多分うけないだろうな、でも作りたいからやる」と思って出したものが思いのほか売れたりする。本物が食べたいとか、本物が分かってもらえる時代になったのかもしれません。いいことだと思います。



でもね、福岡の人って、残念ながらどこか東京に目が行ってしまうところがあるんです。僕は、さっきも申し上げたように、東京ではなくフランスを向いてやっている。パナデリアの方々もこちらで何軒か食べて分かったと思いますが、福岡のケーキは決して東京に劣っていないでしょう。それを福岡の人にも分かってもらうため、もっとがんばらないとと思うんです。地元の人に愛されるためにやっているのに、地元の人に分かってもらえないのは辛いこと。


洋菓子の世界は活性化しているから、やりがいもありますね。これからはコンフィズリーなどにも力を入れていきたい。今、イチゴジャムを出していますが、これはフランスで学んだお母さんの味です。しっかり煮詰めて保存もきくもの。今流行りの、甘みの少ないジャムとは対極ですが、これが僕の思うジャムのスタイル。あとはイチゴにもう一種類なにか混ぜるとか、そういう発展のさせ方をしてみたいですね。 リバレインの店は生産も間に合わなくなって締めてしまいました。今はここ一店。集中してがんばって行きたいと思います。

取材日2002.11.9

ジャック
福岡市中央区大名12-5赤坂田中ビル1F
092-712-7007

大塚さんの秘密