ラ・プレシューズ

海老原 寛道 氏

栃木の那須の生まれです。群馬の専門学校に行った後、函館の『ペシェ・ミニョン』という店で5年働きました。相模原にも同名の店があって、みんな繋がりがあります。この『ラ・プレシューズ』は相模原店の2号店にあたります。ちょうど一年前に開店しました。オーナーシェフは山川隆弘と申します。シェフには大変お世話になり、たくさんのことを教えてもらいました。お菓子を作るということ以外に、いろいろなことが経験できるので大変勉強になります。実は私はこの建物の上に住んでいるのですが、店での仕事が終わってからも、どのように商品をディスプレイしようかなど、寝るまで仕事をしている感じかもしれません。

東京は、函館に比べて甘いものを食べないようです。気候のせいだと思いますが、函館では夏でもケーキがよく出ます。東京では夏はあまり出ないですね。僕自身は、東京でケーキを作るにあたって、特に甘さや味を変えることはしませんでした。でも函館では「甘さ抑え目の味」と言われていたので、向こうの人の方が強い甘さを欲するのかな? 北海道にいたときは、やはりすぐ近くからいい乳製品が手に入りました。輸入物に関しては東京のほうが揃っていますね。例えば今メインで使っているチョコレートはベイスなのですが、これは函館にはなかったものです。フルーツも東京の方が安定供給されます。このような土地の条件は色々ありますが、あるものを使って、上手にお菓子を組み立てたいと思っています。フランス菓子は素材のぶつかり合い。手元にある材料をどう組み立てていくかで美味しさが変わるから面白いし、いろいろ試してみたくもなります。

それから、こだわっているのは鮮度です。素材においてもそうですが、作ったものについてもです。だから、ひとつのものは少ししか作りません。一度に仕込む量は、他の店の半分だと思います。モンブランは、注文があってから上のマロンクリームを絞ります。下の生地がメレンゲなので、少しでもサックリ感を長続きさせたいから。焼き菓子にも脱酸素剤など入れていません。

広尾というと、通りすがりの人が買っていったり、カフェに寄っていく気がしますよね。でも、この店は広尾といえども奥まっているので、地元、遠くからの方を問わずリピーターが多いんです。ペットのお散歩がてらテラス席でケーキを食べていく方もいます。今後の店の方針としては、お菓子屋さんの範囲を超えない範囲でもう少しパンを増やしていく予定です。

もう少し遠いところの夢は、いつか故郷である那須でお店を開くことなんです。近くの牧場の牛からとれた美味しい牛乳、地鶏の卵、地元のフルーツ。今、那須に行くとビニールで真空パックされたようなお菓子が多いんです。けれど、そういうのではなく、新鮮でかつ地域性のあるお菓子を、地元で作りたいと思っているんです。
取材日 2001年1月


海老原さんの秘密