ラ・ヴィ・ドゥース

堀江 新 氏

高校の時に日本料理の店でアルバイトをして、そこで興味を持ったので、和食の道に行こうかなと思っていました。調理師学校に行ったのですが、ヨーロッパに行ってみたいな・・という目標もあって、ケーキの道に転向。葉山で4年修業をした後、一時期、お菓子作りから離れていた時期もあるんです。でも、せっかくある程度やったわけだし、そのまま終わるものもったいないと、やはり戻ってきました。

たまたま和光の『ルショワ』に入ることができ、念願のヨーロッパにも行くことができました。お菓子を学びたいというより、ヨーロッパに行くこと自体が目標だった感じなのですが、それでも刺激を受けたことはあります。一番勉強になったのは、ピットさんという人のもとで働いていた時のこと。彼は、パティシエとしての活躍ももちろん、道具やシステムを考えるプロだったんです。ケーキに模様を描く道具、ムースを仕込む型…。とにかく少ない時間で合理的にケーキ作りをするにはどうしたらいいかを常に考えている人でしたね。

それから、ルセットがあればケーキは作れるけれど、常に「なぜ」という問いかけをしていかないとせっかくの面白い素材も製法も、ただなんとなく理解しないままに終わってしまうと思うんです。言葉の壁はあったけれど、積極的に分からないことや珍しいものに対しては質問するようにしました。やっぱり、ヨーロッパでのお菓子の文化は凄い。何百年という歴史がある訳でしょう。だから日本で「これが俺の菓子だ」なんていうのは存在しないと僕は思うんですよ。

店でのケーキの配合は、ヨーロッパで学んだ時と何も変えてはいません。甘さを控えるために砂糖を減らしているとか、調整していると思われるかもしれませんが、そういうの、ないんです。喉越しがいいとか、キレがあるっていうケーキは実は甘さとは別のところで決まっているんです。それは、乳化のさせ方。水分と、油分の混ぜ方が上手かどうか。生菓子はこれで後味のいい、重さを感じさせないものになりますし、焼き菓子もきちんと乳化させているとスカッと焼けるんですよ。意外と見落とされている点ですが、これ、本当に大切なんです。フランスで『ヴァローナ』にいた時に乳化についてはしっかり学びました。さきほどのピットさんの考え方と並んで、ヨーロッパで勉強になったことの一つです。

日本でも大分お菓子がデイリーなものになってきましたが、もっともっと生活に密着するといいですよね。だから店名は、フランス語で「甘い生活」。地元の方を中心に、ケーキと生活を近くさせられるような店を作りたいですね。

取材日 2001年7月











ラ・ヴィ・ドゥース
東京都新宿区愛住町23-14べルックス新宿ビル1F
TEL: 03-5368-1160


堀江さんの秘密