ユイズィーヌ ラビラント  池田 宏志さん

   


そもそも、四の橋のフレンチレストラン『ラビラント』では、厨房でパンを焼いてお客様に出していました。が、手狭になり、パティスリーとパンの部門を完全にここに移行したのです。よって、レストランにも、丸ビルにも、パン、デザートともにここで作って運んでいます。

基本は食事の時のパン。香りを出すために時間をかけて作った、生地を食べさせるシンプルなハード系が中心です。素材もオーソドックス。というのも、全粒粉でクロワッサンを作ったりもしたのですが、結局クロワッサンは普通にシンプルなのがいいと思いました。

少し変わった工夫といえば、レストランが契約農家からいい野菜やフルーツを入れているので、それを使ったパンやキッシュは作っています。あと、オリーブなどここの店で売っている食材があるのですが、それをパンと合わせて試食してもらったりしています。こういう楽しみ方もあるんだ、と知っていただけると嬉しいなと思って。まだ店がオープンしてから半年もたっていないので、どれくらい効果が出ているかは分からないのですが。

この店は、できるかぎりお客様の声を聞くようにしています。お客様がいらしたとき、おそらく一番目をひかれるのが"プティシリーズ"でしょう。クロワッサンもエピも、バゲットはもちろん、ブリオッシュ、デニッシュ、パン・ド・ミまで手のひらにのるサイズを作っているんです。とっても可愛いと評判で、実はこれは「小さいパンがあったらいいな」というお客様の声からできたもの。型も自分たちで作ったんですよ。高温でさっと焼いています。生地は大きなものと一緒、だから、ブリオッシュ、パン・ド・ミとそれぞれの味はしっかり違います。楽しいですから、是非食べてみてください。プレゼントにも最適です。

僕が常に悩んでいるのは、料理に合うパンって難しいなということ。出過ぎてもいけないし、味気ないパンもだめでしょう。レストランでも出している以上、ただパンのことだけを考えて作ればいいわけじゃない。そのバランスってとても難しいですよね。リッチすぎるパンはだめだけど、じゃあどこまで素朴にするか…。ううぅ、悩みます。

あとは、ハード系中心という姿勢は変わらないけれど、オープンして数ヶ月したら案外年配のお客様が多いことが分かった。だからもう少し柔らかいパンを出してみようかなとも考えているんです。今、30種類ほどのパンがありますが、これはもっと増やしていきたいですね。新製品は(レストラン)シェフと一緒に考えます。ちょくちょく会ってアイディアを出し合っているんですよ。シェフの考え方は「大胆かつ繊細に」。僕もそれにしたがって、大胆に発想しつつ、繊細に作業したり。

そうそう、レストランは正真正銘年中無休なんです。1月1日もやっている。だから僕たちも、多分お正月もパンを焼いています。クリスマスだから、お正月だからと特別なことはしませんが、手間と時間を惜しまず、慌ただしいといわれる時期も、しっかりいいパンを作っていきたいですね。
取材日2002.11.15


ユイズィーヌ ラビラント
東京都港区三田5-11-10
03-6400-3190

池田さんの秘密