ル・ラピュタ

河田 昭夫 氏


 とにかく今までにない店にしようって、こういう内装にしたんですよね。参考にしたのは洋菓子店をはじめ、他業種のブティックやカフェ。"すっきりとシンプルでスタイリッシュ"というのをコンセプトに、普通お菓子屋さんというと木などの素材を使って店を作ることが多いところ、あえてそういうものは使いませんでした。

 独立するときから、都心部よりも住宅街に店を出したい、という思いがありましたね。地域に根づいた店を作りたかった。だからマンションの多い葛西はもともと出店候補地だったんですよ。週末は車で来られる方も多いですが、やはり平日はご近所の方が多い。お子さん連れも多いです。うちの店はショーケースの前が広いスペースになっているんです。これはごちゃごちゃ物を置くのが嫌だったことと、お客様にゆったりお菓子を選んでいただけたらという思いだったんですが、いざ店をはじめてみたらベビーカーをひいてこられる方が多かった。これは図らずもだったんですが、こうしたお客様もゆったり店内に入っていただけてよかったなあって思っています。

 味作りの点でも、最初はこうした"子供"を意識していました。でも今はお酒をあまり使わないようにするというくらいですね。だって最近のお子さん達って、とっても舌が肥えているんですよ。大人が美味しいと思う味を同じように美味しいと思うことが多いように感じます。例えば子供向けにって甘くすると「これ甘すぎるよ」って言われちゃうんですよ。

 ケーキはとにかく自分とスタッフが納得した味のものを出すようにしています。まず自分が試作してみるけど、できたものをすぐ「これでいくぞ」とショーケースに並べることはしません。自分の次は、「これどう思う?」ってスタッフ全員に食べてもらう。そこで意見を聞きながら、必要に応じてアレンジし、みんなが納得したところで初めて商品になります。

生ケーキだと、半分くらいは季節で商品が入れ替わるんですが、毎年できるだけ違うものを出したいなと思っています。でも、お客さんに「去年のあれはまだ出ないの?」なんて言われてしまうこともあって、商品の数は増える一方。楽しみに待っていただけるとつい作りたくなっちゃいますよね。今年も、プリンは6月からはじめる予定だったんですが、もう3月頃から「去年食べたプリンはいつから?え?6月まで待たなくちゃいけないの?」なんて何人もに言われてしまって。4月から出しましたよ。とても喜んでいただけています。プリンも、いい素材など入ると組合わせてみたくなって、オーソドックスなものから抹茶やアプリコットを使ったものまで10種類くらいになっちゃうんです。

もともとこの世界に入ったのは甘いものが好きだったから。はじめはレストランで料理が作りたくってレストランに入った、そしてレストランでお菓子を作りたかった。でも、デザート部門にはちゃんとパティシエがいて、料理担当の僕達は日々仕込みに追われて、ほとんどやらせてもらえなかった。それで、ちゃんとお菓子をやりたいと思ってお菓子屋さんにいきました。この店をやるまでに6、7軒まわりました。
今、とてもやりたいのはパンを作ること。機械は揃っているので、もう少し仕事に余裕ができたら絶対はじめたいですね。お客様の反応も今から楽しみなんです。
取材日 2001年5月

ル・ラピュタ
東京都江戸川区西葛西3−3−1
TEL:03-5674-5007


河田さんの秘密