ル・ププラン 岡本 匡生さん  

   


元々はどちらかといえば、料理の方に興味があったんです。でも、実は「内臓」が苦手なんです。食べる方ではなく、調理をすることが、という意味なんですが・・・。
その理由もありパティシエの道を選び「ユーハイム」へ入社、そして20歳で渡仏しました。


パリの「ペルティエ」で約1年半修業をしたのですが、当時の「ペルティエ」はオーナーのルシアン・ペルティエ氏を頂点にそうそうたるメンバーが働いていました。ジャン・ポール・エヴァン氏もよく出入りしていましたね。そのため、厨房内は今まで経験したことがないほど活気に溢れていました。個性が強く、仕事もできるという若いパティシエそれぞれが"自分の仕事をしたい"、"すばらしい作品を作りたい"そんな思いで1つでも多く仕事を取ろうとしているので、『活気』というよりも『殺気』と言ったほうがふさわしい状態だったかもしれません。あんな経験は後にも先にもないですね。

そんなパティシエ達のスタイル以外にも、大きい会社と違う作業形態や、ケーキの華やかな見た目にも影響をうけました。作り手はもちろんですが、お客さまのオーダーの仕方1つとってもこだわりがあり、特別な食べ物という感覚ではなく、生活に根ざした必要な食べ物だということを身を持って感じる貴重な経験になりました。


帰国し、日本の「ペルティエ」でシェフパティシエとして働いている間にもフランスには何度か訪れていました。ただ、2回目の渡仏は約6年間の滞在だったので、友人とヴァカンスを過ごしたり、結婚式に出席したりと、よりフランス人に近い経験ができたと思っています。

生活をして感じたのは、フランス人は普段の食事はわりと質素だけれど、今日は食べるぞという時には本当に贅沢に、これでもか!というほど食べる、ということ。友人の結婚式に出席したときには、お昼前の10時くらいからアペリティフが始まり、昼食、夕食をしっかり食べ、さらに夜中まで食べ続けるんですよ。これにはさすがにびっくりしました。

店を出すきっかけになったのは、フランスの友人から「一緒に店をやらないか?」と相談されたこと。それまでは漠然としたイメージでしかなかったものが、それを機にだんだんと現実のものになっていきました。フランスでも日本でも店を出す場所にあまりこだわりはなかったのですが、やはりお互いのそれぞれの思いがあり残念ながら実現しませんでした。その後、私の方は日本での出店の話がとんとん拍子に進み、自分の生まれ育った場所に出すことに決まりました。


今は自分と妻、スタッフの3人です。今までと比べて人数が少ないし、大変なこともたくさんあります。でも、お客様との直接のコミュニケーションが嬉しいし、「おいしかった」というお手紙やFAXをいただいたりすると、力が湧いてきます。個人店のメリットを活かして、ゼラチンの量を少なめにしたり、色々なチョコレートを使い分けたり、そして何よりもフレッシュさを大切にしたケーキを作りたいです。

去年の6月にオープンして、まだ半年ちょっと。今は生ケーキ、焼き菓子のほか、ヴィエノワズリーを作っていますが、様子を見てショコラやキッシュなどもやってみたいです。店にポワソンダブリルの型を飾っているんですけれど、そういったフランスのイベントのお菓子や、少し滞在したイタリアのお菓子にも挑戦したいと思います。



ル・ププラン
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岡本さんの秘密