「L'Epicurien」
金子 哲也 氏


金子さんをclick,click!!

埼玉県出身 「ルコント」に4年勤務。
フランスで短期修業ののち、
「シェ・シーマ」、「オーボンヴュータン」に。
再度渡仏、2つ星レストラン
「ジャック・カーニャ」のシェフパティシエとしての
2年間を含め、3年半を経て帰国。
‘96年5月開店。




吉祥寺の街を歩いていて「新しいお店だ。入ってみようか。」と何の知識もなく、初めてレピキュリアンに行ったのは昨年9月。その時の感想は「ふつうと違う」その後しばらく東京から離れ、今回1年ぶりにお店に行き、金子氏のお話を伺って何故ふつうと違うのかがわかった気がした。

 大きくて、がっしりとしている。それが金子氏の第一印象。「日本人向けに意識したもの、アレンジしたものは全くない」「日本では甘さ控え目とかあるが、フランスの伝統的なもの、例えば砂糖でフルーツを炊く場合にある程度の甘さがないと香りを閉じ込めることはできない。だからただ単に甘さを減らしてしまえばいいというわけではないんです。ちゃんと理由が存在するわけで、それを僕は絶対引かないです。」ときっぱり。


 フランスの伝統的な焼き菓子やヴィエノワズリ(バターや卵、砂糖を使ったリッチなパン)が窓辺にたくさん並べられている。焼き色は私達がふだん目にしているものより濃いめ。このおいしそうなてりは、多めの卵黄とコーヒーのエッセンスから...朝の1時間半ほどはパンにかかりっきりということからもこの店の方向性がうかがえる。
 生菓子で目を引くのは、チョコレートを使ったもの。金子氏自身チョコレートがお好きだそうで、アプソーリュ(中にクレームブリュレキャフェ、上下にヘーゼルナッツの生地、まわりはムースショコラプラリネ)やカラメル・ショコラ・バナーヌ(カラメルとチョコ味のクリームにソテーして香りづけをしたバナナ)のチョコレートの艶はなんとも美しく、食べるとそのコクが味わえる。

 店の半分は18席の広めのカフェとなっている。そこでは、販売している菓子はもちろんもう一つの金子氏のこだわりである季節に応じたデザートが楽しめる。フランスの二つ星レストランでシェフパティシエの経験もある金子氏の皿盛りデザートはデザイン、そして味もしっかりしていて独創的である。

 生菓子におけるネーミングもユニーク。前出、アプソーリュは絶対的、カプリス(気まぐれ)やパラディ(天国)なんてものもあり、金子氏の自信が感じられる。菓子のネームカードもすべてご自身手書きのカリグラフ。
また店の設計から店内の装飾にいたるまで自分で手がけたという。(カフェにある素敵なランプはフランスで、調理器具のミニュチュアはスイスで購入し持って帰ってきたものだそう。)

 「フランスの本当の物、フランスの菓子屋さんでやっていることは全てやっていきたい。そして自分の中にあるものをだしていく」と店全体で自分を表現されている金子氏であった。
取材日 1997年