マインベッカー

宮崎 章 氏

1961年 千葉県生まれ。都内のパン屋に15年勤めた後、桜新町の「ベッカライ・ブロートハイム」で、一年間本格的なパンについて学ぶ。1996年5月、南行徳に独立開店。


僕はそれまでクリームパンが一番美味しいと思っていたんですよ。「ベッカライ・ブロードハイム」のドイツパンを食べて、変わりました。本当に美味しいと思いましたし、感激し、食事パンを作っていきたいなと思いました。その味が忘れられず、「ベッカライ・ブロードハイム」にお願いして一年修業をさせてもらいました。その間ドイツに行く機会もあったのですが、ドイツでの製法など見たら、「ベッカライ・ブロードハイム」と全く一緒だった。わざわざドイツで学ばなくてもいい、と思いましたね。でも、ディスプレイの仕方や売り方など、やっぱり本場は違うなと思わされることもたくさんありましたね。

もともとパン屋になったきっかけは、昔、テレビ番組の「料理天国」が好きだったんですよ。それで、コックコート姿に憧れていたので何か食べものを作る仕事がしたかったんです。当時は何でもよかったんですね。でも、コックは大変そうだし、ケーキは日常に食べるものじゃあないから、ケーキよりはパンのほうがちょっとは儲かるかなあ、とパン屋の扉を叩いたんですけど、それは外れましたね。パンを食べるのももちろん好きですが、食べさせるほうが好きですね。美味しいと言ってもらうのも嬉しいし、お客さんとのコミュニケーションもはかれるので、お店はショーケースにパンを並べた対面式です。

素材は、いいと思ったものを使っていますが、そんなことはお客様に伝えることでもないし、前面に出してウリにすることでもないと思っています。自家製天然酵母も一つのアイテムとしか思っていません。わざわざうたうことはしません。そんなことより、基本的なこと。本当に、その基本的なことを、何年たってもキチンとやっていれば、美味しいパンって絶対作れると思うんですよ。そうすればお客様に喜んでもらえると思います。

ドイツパンにはまだまだ抵抗のある方も多いですね。固まりで買うのに抵抗があるのかもしれません。食べ方の紹介としてサンドイッチなんかにして売ると、とても良く売れます。実際は、酸味や堅さも思っているほどではないんです。そこばかりが強調されてしまうのって、食べたことのない人が多いんだと思います。もっと多くの人に食べて頂いて、少しずつ定着していくといいですよね。

食事パンはドイツパン中心で、フランスパンはやめようかとも思ったんですよ。でも、知っているフランス人から話を聞くと、僕の今までのフランスの食事のイメージが崩れて、結構質素だなと思ったんです。それなら、ちょっとしたペーストなんかも一緒に置いて売っていってもいいかなと思って、今、フランスパンにちょっと熱を入れています。フランスパンが一番難しい、って思いますよ。
デニッシュも人気です。「四季のあるパン」を作っていきたいと思っているので、上にのせるフルーツも季節を意識して変化させていきます。顧客数がそんなに多い訳でもなく、リピーターが多いので、そのほうがお客様も飽きないだろうと思って。ちょっとしたケーキを買うくらいならパンの方がいいね、なんて思って頂けると嬉しいですね。
お菓子は一口食べて「あ、おいしい」という感じだと思いますが、食事パンはそれでは飽きてしまうと思います。固まりで買ってきたものがいつのまにか「あれ?もうこれしかのこっていない」、それで3日食べないとなんだか恋しくなってしまう、そんなパンが作れたらなと思っています。
取材日 1999年


宮崎さんの秘密