もあ四季彩館 柳町幸孝さん |
1976年茨城県生まれ。 96年プリンスホテルに入社。 半年間洋菓子を学んだ後、 9月よりもあ四季彩館に。 チーフになって今年で3年目。 テレビチャンピオンパン選手権で 2連覇達成。 |
プリンスホテルは「いずれはパンを」という前提の上、「これからは洋菓子もできたほうがいい」というので、まず洋菓子部門に配属になりました。特別不満があったという訳ではないんだけど、あえて言うなら、地下3階で製造していたので、商品を買うお客様の顔がまったく見えなかった。それだけはいつも心のどこかに引っかかっていましたね。
ある日、テレビチャンピオンのパン選手権を見ながら、「こういう職人っていいなあ、こういう道もありだよなあ。よし、ホテルを辞めてパン屋で修業しよう」と思ったんです。もちろん、まさかのちに自分がこの番組に出ることになるなんて思ってなかったですよ。 ここの店を選んだのは、店と厨房が行ったり来たりでき、お客さんの顔を見ながら作れると思ったことが一番の理由。だからといって、最初から小さな個人店を選ぼうとは思いませんでした。ある程度間口の広いところで、多くのお客さんに触れたかったし、経営のことも覚えたいなと思っていたんです。 実際働きはじめて見ると、想像したことでもありますが、洋菓子の世界より泥臭いですね。クリームなど火を通さないで口に運ぶものを扱うことの多い洋菓子の厨房より、がさつな感じもあります。それでも安全上の問題はまったくないけれど、もっと綺麗にしていきたい気持ちが僕の中にはありますね。洋菓子のデコレーションを学んだことは、役に立っています。子供たちにも楽しんでもらえるものを作りたいので、パンといえど飾りで遊ぶことがあってもいいと思っているんです。
テレビチャンピオンには、パンフェスティバルというのに出店していたのがきっかけで、出場することになったんです。「勝負」だからと、特別な素材を使うことはしませんでした。新しいものを作ろうとは思ったけれど、あくまで普段の延長で考えた。あとで商品化しようとも思っていたから、突飛なものを作ろうという意識はなかったです。優勝できたのはとても嬉しいですよね、なんといっても僕がこの店に飛び込んだきっかけの番組ですから。 パン作りはチームワーク。なんといってもこの店では製造メンバーが10人いますから。みんなの技術が上がらなければ、常にいいものをお客さんに出し続けることはできません。だから、1人突っ走るのではなく、みんなのレベルを上げていくことが今は一番大事です。もちろん、いずれは独立して自分の店を持ちたい。だから自分の技術を上げることも大切なことだとは感じています。でも、あまり慌てず、後輩のことも、経営のことも、お客さんのことも、広く勉強していくことが長い目で見ればいいんじゃないか、そんな風に思っています。 取材日2002年6月6日 もあ四季彩館 |