「心を充たすパンづくり」 西山製パン工房 SaNREMO  西山 浩 氏

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神奈川県横浜市出身。
チェーンストア(外食産業)を退職後、パン作りを始める。葉山、鎌倉のパン屋さんで修業した後、独立。現在44才。



「どうぞ」と案内してくれた西山さんは、物腰がやわらか。私たちの質問にも気さくに答えてくれました。


パンを作り始めたのは「パンがまずかったから。」とさらり。チェーンストアで仕事をしていた西山さん。「マス的な商品展開になると味に個性がなくなって、おいしくなくなります。こういうものでは、食の欲の部分は満たされても、心は充たされないですよ。」となぜ仕事を方向転換されたのかを話してくれました。


そんな西山さんは、常に"自分の表現"というものにこだわっています。「パンは酵母だと思ってるんです。そこで味が左右されますから。だから酵母が発酵する部分がパン作りで一番おもしろい。パンは発酵食品、なのにイーストを使ってしまうと皆ベースが同じになってしまい、表現力が弱くなりますよね。本当に自分のパンて考えたら、やっぱり酵母菌から作らないと。」以前は、ホシノ天然酵母なども使っていましたが、酵母としてよく出来すぎていて、一番面白みのある酵母の部分を人に委ねてしまうのは惜しいと、自分の酵母作りに取り掛かりました。

今、一番力を入れているのは、玄米酵母。「日本人はお米で育っているので、玄米が一番相性がいいのでは。」と考え、ここに行き着いたそうです。まだ確立されていない部分もあるそうですが、玄米酵母のパンをいただくと砂糖が入っていないのに噛んでいるとほんのり酵母の甘さが感じられました。西山さん作るパンは飾り気のないシンプルなもの。「だから例えば家でお母さんが子供に何かサンドしてあげたりとか、一手間かけてほしいんです。」

しかし西山さんは、こうした美味しくて、安全なパンを提供するのは大したことではないと言います。「もっと次にあることを見ていかなければ。」と…自分がパン作りを通して、世の中とどうかかわっていくか。パンを売るだけでなく、豊かになるよう、心をつけていかなければと西山さんの思いは環境、未来の子供たちにまで及んでいます。


コンセプトは"自然にやさしく" 今は自分が求める状態の半分くらいなので、将来は自分で小麦を作って、炭も作って、水車小屋のようなところで小麦を挽いて、全ての工程を1人でやりたいそう。「最終的には自分の思いが、100%表現できるパンをつくりたい」と穏やかな口調のなかに強い意志が感じられる西山さんでした。秘密はこちら。


取材日 1998年