「naif」

谷上正幸 氏

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「メルカト・セブンクォーター」
「紀ノ国屋」を経て、96年2月、
目黒に「ナイーフ」を開店。



モスグリーンのドアを開けると、何だか「ふっ」と落ち着いてしまう感じ。取材の日は曇りの午後4時頃。お店の暖かみのある照明がそう感じさせたのだろうか。オーナーの谷上さんが奥様と一緒にパンへの思いを語ってくれた。

「絶対これでないといけないという、こだわりはないんです。のんびり時間をかけて、味わいのあるおいしいパンができれば。」そもそもナイーフとは、フランス語で「素朴な」とか「自然な」という意味だそう。谷上さんの作り出す素朴さとはどういうものなのだろうか。「なかには風味をだすため、国産小麦を使っているパンもありますが、無農薬・天然酵母イコール健康という方程式は僕の中にはないんです。今は4社の粉をブレンドして使っていて、組み合わせで風味を出しています。粉にはいいところもあれば、悪いところもあるので、一つ一つ合わせることによって悪いところを消し、いいところだけを出すという粉の使い方をしています。」また「粉は季節によっても違うので、いいものが入ったらそれを使います。」とのこと。4社もの粉をブレンドされているとはちょっと驚き。パン好きが通いつめる訳は、この見えない部分の特徴にあるようだ。

谷上さんの作り方は、的確な水の量、イーストの添加、塩を何%いれるとか、酵母の組み合わせなどを頭の中でシュミレートしていくのだそう。「レシピはたくさんあるんですが、そのとおり作ってるものはないんですよ。(笑い)頭の中にしか入ってないので、たまに忘れることもあるんですよ。(また笑い)」

お店には食材も置かれているがこれは奥様の担当。フランスの塩やミネラルウォーター、はちみつ、ビネガー、オリーブオイル、ピクルスまである。パンのオプションとして楽しめるよう、テーブルが豊かになるようにこれらを揃えている。奥様もしょっちゅうパンを食べているそうで、「食べないと覚えないですしね。お客様に伝えるにしても。」またお二人でかなり研究されている様子で「試作しておいしいと思ったものだけを出しています。」とも。そして、近々パンの教室も開かれるとか。

お二人の大きな、大きな夢は、フランスでパン屋さんをやることだそう。まだお若いので、国内だけにとらわれず、これからも夢に向かって頑張ってください。


取材日 1998年