パティスリーナオキ

長谷部 直生 氏

池ノ上「ピエール」にて修業後、フランス・アルザスの菓子店「グロス」で約一年間、フランス菓子を学ぶ。帰国後の91年、三十数年の歴史をもつハセベ洋菓子店を「NAOKI」にリニューアル。


追跡取材ということで、こんなお言葉を頂きました!
「前回の取材からもう2年ですか。前回取材に来た時は、パナデリアもまだ始めたばかりでしたよね? 最近では、僕の知り合いもたくさん登場しています。ずいぶん拡大しましたね!」

最近は、「コンクールでよく賞をとっていますね」なんて言われたりもしますが、店の知名度をあげるためにと応募したり、名前を売りたくて受賞を狙うという感覚は全くありません。単純に、新しいお菓子を考えて作るのが好きなんですよね。その延長上に、たまたま、コンクールがある。優勝とか、結果が目的ではないけれど、出すことだけに意義があるとも思いません。出すからには、最高のものを作ろうという意気込み、自分がOKを出す作品を作り上げるまでの過程が大事だと思います。そういうものしか出したくないですよ。これは、店の若いのにも言っています。出すだけで満足するなよ、って。

ここ数年、おかげさまで、少しずつではあるんですが、お店の売り上げは右上がりになっているんです。お客さんが増えてくれたことへの感謝で、単価も少し下げました。そうやって還元していきたいなって思ったんですよ。職人の世界として、世の中の「会社」とは異なる組織ではありますが、従業員に対しても、オーナーとしてもう少し考えていかれればな、とも最近思っています。

お客さんは、外国人の方も結構多いし、地元の方が多いとは思うけれど、いろいろですね。ちゃんと調査したこともないですから「こんな客層です」って言い切るのは店の一人よがりかなと思います。だから、基本は、客層に合わせたお菓子というより、自分の好きな素材を使った好きなお菓子を並べます。でも、シュークリームなんかはやっぱり一番よく出るから、一番たくさん作りますね。最初にそれを食べていただいて、そこから他のケーキにも目がいくのかもしれません。

雨なんかの日はね、やっぱり生産量を減らしたりするんですよ。でも、雨でもお客さんがたくさんいらっしゃる日もあるし、これが客商売の難しいところですよね。そんな日は、急いで厨房に追加オーダーを出します。厨房は、この店から遠くはないけれど、直結ではない。直結ならもっと「できたて感」のあるお菓子ができるのではという思いはかねてからありました。今のお店だと、注文が出てからクリームブリュレの表面をバーナーで焦がすのが精一杯。でも、ついに、実現するんですよ。もうすぐ、2軒目の店、厨房に直結した店がオープンします。デコレーションなど、その場で仕上られるかなと思うと、とても楽しみですね。激戦区になりそうな場所なんですが、「できたて感」を出してお客さんに喜んでもらえればと思っています。
取材日 2000年4月


長谷部さんの秘密